2025.8.2
ago は形容詞・副詞で「以前に、(今より)…前に」を表し、この用法では1333年以前から用いられている。しかし、元は「行く、過ぎ去る」を意味する動詞 ago(n) の過去分詞 ago(n) であった。ago(n) は古英語の āgān から発達したもので、分離を表す接頭辞 ā- と go の古英語形 gān から成る。
ago の用法と語形の発達について、『英語語源辞典』(p. 25)および『英語語源ハンドブック』(pp. 8–9)に基づいて執筆する。
ago は元々過去分詞が時を表す名詞とともに用いられたもので、1200年以前頃の Layamon に初出した。Layamon での文は “Moni ȝer was agan.” で、 “was agan” で完了を表す(中英語の完了形は他動詞では「have + 過去分詞」、自動詞では「be動詞 + 過去分詞」で使い分けられていた。agon は自動詞であるため、完了形を表すときにはbe動詞とともに用いられた)。また、中英語には It was ago fif yer. のような例も見られた。現代英語の five years ago のように名詞(句)の後ろに ago が置かれる用法は、完了形のbe動詞 + agon から助動詞であるbe動詞が省略された、「5年が過ぎ去り」のような意味を表す独立分詞構文に由来する。
一方、副詞用法では主に long ago「ずっと以前に」という決まり文句で用いられている。これは long time ago の名詞 time が省略されたものに由来し、1330年頃に現れた。また、Chaucer の時代には long ago に相当する表現として fern ago, longe agoon, (of) yore agon なども見られた。
agon から -n が消失した語形は1300年頃には見られ、Caxton 以降は -n の消失した ago が散文における通常の語形となった。なお、古い用法あるいは詩では agone の形で用いられ、欽定訳聖書には1例(The First Book of Samuel. 30. 13)のみ見られるという。
I started reading the KDEE about three months ago. なのだが、現在まだ25ページ目である。気になる単語が多いので今後もペースはゆっくりになりそうだが、地道に読み進めていこうと思う。
参考文献
「Ago, Adj. & Adv.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一『英語語源ハンドブック』研究社、2025年。
キーワード:[loss of final n] [Caxton]