2025.7.27
after は古英語期から副詞、前置詞、接続詞、形容詞としての使用が見られる。古英語の語形は æfter で、ゲルマン祖語の *afteraz、印欧祖語で「…から離れて」を意味する *apo- の比較級 *apotero- に遡る。『英語語源辞典』によると本来は比較級の副詞で前置詞はそこから転用したものであり、さらに副詞から形容詞が、前置詞から接続詞が派生した。また、印欧祖語における /p/ からゲルマン祖語における /f/ への音変化はグリムの法則によるものである。
さて、上述の通り、古英語では <a> ではなく <æ>(この文字は “ash” と呼ばれる)を使った æfter が用いられていた。Upward and Davidson によると、この短母音を表す <æ> は綴字上は中英語期に <a> に徐々に同化していったが(p. 35)、発音上は長期に渡り揺れを見せ続けている。Minkova によると、(西)ゲルマン祖語では [a] と発音されたと考えられているが、古英語期になると舌が上寄りの [æ] となった。しかし、中英語期になると [æ] の発音は残りつつも [a] の発音に戻る動きがあり、初期近代英語期には [a] の発音も見られながらも再び [æ] の発音が優勢になった(pp. 198–200)。Minkova によれば現代英語では [æ] の発音に落ち着いているということだが、OED によれば after の第1母音はアメリカ英語では [æ] で発音されるのに対し、イギリス英語では舌が後ろ寄り・下寄りの [ɑː] や [a] で発音されているという。かつて <æ> と綴られた <a> を表す発音は現代英語でも揺れが続いていきそうだ。
参考文献
「After, Adv., Prep., Conj., & Adj.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“After, Adv., Prep., & Conj.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/after_adv?tab=pronunciation#8932282. Accessed 27 July 2025.
Minkova, Donka. A Historical Phonology of English. Edinburgh University Press, 2014.
Upward, Christopher, and George Davidson. The History of English Spelling. Wiley-Blackwell, 2011.
キーワード:[Grimm's Law] [Germanic] [Indo-European] [ash]