2025.7.17
前回の記事では、aeon などの <ae> の綴字で /iː/ と発音する語を取り上げた。しかし、英語における <ae> の綴字には別の発音もある。
「空気の」を意味する aerial (1604年初出)や、「空気、ガス、飛行機、飛行船など」を意味し、aerate「酸素と化合させる、空気にさらす」、aerobic「好気性の」、aerodrome、「空港」、aerodynamics「空気力学」、aeromancy「空気[大気]占い」、aeronaut「飛行船に乗る人」、aeroplane「飛行機、航空機」、aerosol「エーロゾル、エアゾル剤」、aerostat「軽航空機」などに見られるする連結形 aero-, aeri- の <ae> は /e(ə)/ と発音される。
aerial や aero- もギリシャ語が語源であるが、aerial や aero- における <ae> と aeon における <ae> に対応するギリシャ語の母音は異なっている。aeon はギリシャ語の aiṓn からラテン語の aeōn を経由して借用されたが、aerial はギリシャ語で「空気」を意味する āḗr から派生した āérios から、ラテン語の āerius を経由して英語に借用されたものに形容詞を造る接尾辞 -al を組み合わせた語である。aero- もギリシャ語の āéros, āḗr から派生した āero- またはフランス語の aéro- から借用された。Upward and Davidson によると、ギリシャ語の <ai> は1音を表す二重字であったのに対し、aerial などに見られる <a> と <e> はそれぞれ別の母音を表していた(p. 220)。
また、Upward and Davidson および OED によると、19世紀末まで aerial は /eɪˈɪərɪəl/, /eɪˈeərɪəl/ と <a> と <e> を分けて、4音節で発音されていた。OED によると、3音節の発音は Daniel Jones による1917年の English Pronouncing Dictionary では2番目に挙げられており、1924年以降の版では唯一の発音として挙げられているという。また、OED では3音節の発音が優勢になったのは air との連想による可能性があると述べられている。
参考文献
「Aerial, Adj. & N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Aero-, Combining Form.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Aerial, Adj.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/aerial_adj?tab=etymology#9686599. Accessed 17 July 2025.
Upward, Christopher, and George Davidson. The History of English Spelling. Wiley-Blackwell, 2011.
キーワード:[Greek] [Latin] [French] [spelling-pronunciation gap] [combining form]