2025.6.18
今回は言われてみればこれも接尾辞なのか!と思った -ad と -ade をご紹介。
『英語語源辞典』には3種類の接尾辞 -ad が見出しとして掲載されている。1つ目の -ad は① 集合数詞の語尾(monad 「(哲学用語で)単子」、triad「三つ組」、myriad 「1万」など)、② 女性の妖精の名(Dryad など)、③ 叙事詩の題名(Illiad、Dunciad など)、④ 同類植物の単数形(liliad など)の4つの用法・意味がある。ラテン語またはギリシャ語の -ad-、-as から借用された。
2つ目の -ad はフランス語から借用された接尾辞 -ade の <e> が脱落した形で、ballad や salad などに見られる。ballad や salad は -ade の語形もかつては用いられていたが、-ad の語形が標準となった。まさかこれらの語における -ad が接尾辞であったとは驚きである(ちなみにballad は後期ラテン語で「踊る」を意味する ballāre、salad は ラテン語で「塩」を意味する sāl に遡る語に -ad を付けたものである)。 -ade は① 動作(cannonade 「連続砲撃」など)、② 行動中の集団(crusade 「十字軍」など)、③ 動作の結果[過程]または材料から作られたもの(marmalade、lemonade など)の3つの意味を表す名詞を造る接尾辞であり、(古)フランス語の -ade はスペイン語またはポルトガル語の -ada から借用したもので、さらにラテン語の -ātus の女性形 -ātam に遡る。
3つ目の -ad は動物学や解剖学に関する語に用いられ、「…の方へ」の意味の副詞を造る接尾辞で、caudad 「尾の方へ」(ラテン語で cauda は「尾」を表す)などに見られる。これは「46. ad- ―語形変化を起こす接頭辞―」で取り上げた接頭辞 ad- と同じくラテン語の前置詞 ad が語源である。1803年にスコットランドの解剖学者 John Barclay (1758–1826) が造語したものであるそうだ。
参考文献
「-Ad (1), Suf.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「-Ad (2), Suf.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「-Ad (3), Suf.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「-Ade, Suf.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Ballad, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Salad, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。