2025.6.9
「(真実[事実]であると)認める」「感謝する」の意味の動詞 acknowledge は中英語期の1481年が初出とされている。『英語語源辞典』によると、中英語での語形は aknowleche(n) で、aknoue(n) と knowleche(n) が混成してできたものである。「認める、承認する」を意味する aknoue(n) は古英語期から1639年まで用いられていた動詞で、古英語での語形 oncnāwen から見て取れるように、on と現代英語では know となっている cnāwen から成る。動詞の knowleche(n) は現代では廃語となっているが、名詞としては knowledge が残っている。
acknowledge の初めの部分は古英語の oncnāwen に由来し、on- は a- に弱化したのだが、現代の acknowledge には語源としては存在しないはずの <c> が含まれている。OED の語形一覧を見てみると、acknow では16世紀から、acknowledge では後期中英語から <ack-> の綴字が見られるようになったようだ。OED は <ack-> の綴字について、ラテン語接頭辞 ac- を持つ語(「34. <c>か<cc>か、それが問題だ!」を参照)からの類推で、/k/ の音が第1音節の最後の音であると再分析、異分析(metanalysis)された可能性を挙げている。類推と異分析の結果 acknowledge は語源的には余剰な <c> の綴りを持つことになったのだが、know や knowledge の語頭の /k/ が元は発音されていたものの、17世紀末までに発音されなくなったのに対し(Upward and Davidson p. 180)、acknowledge は /k/ の音が接頭辞に属すると解釈された結果、/k/ の音が消失せずに現代まで残ることになったとも言える。
参考文献
「†A(c)know, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Acknowledge, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“†Acknow, V.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/acknow_v?tab=etymology#26407661. Accessed 9 June 2025.
“Acknowledge, V.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/acknowledge_v?tab=forms&tl=true#26463607. Accessed 9 June 2025.
Upward, Christopher, and George Davidson. The History of English Spelling. Wiley-Blackwell, 2011.
キーワード:[analogy] [blend] [metanalysis]