2025.5.31
accomplice は「共犯者」を表す名詞で、『英語語源辞典』では1485年、OED では1550年に初出したとされている。『英語語源辞典』によると a complice が変形したもので、古英語期から存在する接頭辞 a- (2)とラテン語の complicāre から派生した後期ラテン語の complic-、complex から古フランス語を経由して中英語期に借用された complice から成る。そして、acc- の語形は accompany や accomplishとの連想による変形であると述べられている。
accompany は古フランス語の acompa(i)gnier から中英語期に accomapanie(n) の語形で借用され、ラテン語接頭辞 ad- を語源に持つ a- と company の語源である compa(i)gnier から成る(OED によると中フランス語の語形として accompagner、accompaigner などが載っており、acc- の語形はフランス語からの借用の可能性も考えられる)。
accomplish は古フランス語の acompliss- から中英語期に accomplisshe(n) の語形で借用され、acompliss- は acomplir に遡る(-ish については「6. abash、そして-ish」を参照)。『英語語源辞典』によると acomplir は後期ラテン語の accomplēre から発達したもので、接頭辞 ac- と complete の語源であるラテン語の complēre から成る。(ただし、OED ではラテン語の accomplēre が存在した証拠はないとしており、フランス語において接頭辞 a- と complir が組み合わさったものであると説明している。)
これらの記述によると、フランス語で接頭辞 a- と <c> から始まる語が組み合わされ、その後 acc- の語形になったのが accompany と accomplish 、英語において acc- を持つ他の語からの類推によって acc- の語形となったのが accomplice ということになる。
OED でも accomplice の語源を調べてみると、おそらく accomplish からの連想で、ac- と complice が組み合わされたものであると説明されていた。語形の類似という点で、『英語語源辞典』でも言及されているが、Thomas Nashe による An Almond for a Parrat; or, Cutbert Curry-Knaues Almes (1589) では 'accomplice'の意味での accomplishes の語形が確認されている。また accomplish についても、OED では後期中英語期に accomplice 、acomplice の語形があったことが記録されている。accomplice と accomplish は歴史を通して語形が似通っており、結果として accomplice は acc- の語形で定着したようだ。
参考文献
「Accompany, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Accomplice, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Accomplish, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Accompany, V.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/accompany_v?tab=etymology#37670278. Accessed 31 May 2025.
“Accomplice, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/accomplice_n?tab=etymology#37880549. Accessed 31 May 2025.
“Accomplish, V.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/accomplish_v?tab=etymology. Accessed 31 May 2025.
キーワード:[French] [Latin] [analogy] [ad-] [palatalisation] [-ish]