2025.5.27
accelerator は accelerate の派生語である。「加速する」を意味する accelerate は16世紀初出で、ラテン語の accelerāre の過去分詞 accelerātus に由来し、接頭辞 ad- の d が後続する c に同化した ac- と「…を速める」を意味する celerāre から成る。celerāre は「すばやい」を意味する celer に遡り、同根語として「敏捷」を表す celerity が挙げられる。
accelerator は accelerate と「…する人[物]」の意味の名詞を作る行為者接尾辞(agent suffix) -ator が組み合わさったもので、「加速する人[物]」などを意味するが、『英語語源辞典』には「初出例は accelerater だが、-ate 型の動詞の動作主名詞は -or の方がふつう」との注が付いている。行為者接尾辞でよく見られるものとして、player などに見られる -er と、elevator などに見られる -or がある。-er は古英語から -ere、-eri として用いられ、ゲルマン祖語の*-ārjaz、*-ǣrjaz に遡る。一方の -or はラテン語起源の動詞(とくに -ate の語尾をもつもの)から動作主を表す名詞を造り、中英語期から用いられている。大まかに言えば -er は英語本来語式、-or はラテン語式と言って良いだろう。
OEDで accelerator を引いてみると、①英語において accelerate と -er が組み合わされたもの、あるいはフランス語の accélérateur を基にして英語の中で語形成されたもの、②ラテン語の accelerator から借用されたものと、語の成り立ちについて複数の説明が示されている。初出例が accelerater であることから、初めは英語本来語式の -er を付けていたが、ラテン語起源の語であることからラテン語式の -or に変わったのかもしれないし、改めてラテン語から -or の付いた accelerator を借用したのかもしれない。行為者接尾辞 -er と -or の交替、使い分けに今後も注目していきたい。
参考文献
「Accelerate, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Accelerator, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「-Er (1), Suf.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「-Or (2), Suf.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Accelerator, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/accelerator_n?tab=etymology#267945. Accessed 27 May 2025.
キーワード:[agent suffix] [suffix] [Latin] [assimilation] [ad-]