いい研究をするために先人の知恵(特に論文)から学ぶことは不可欠です。研究活動ではまずは論文を数多く読んで,自身の知識を広げていくことになります。井上研ではアイデア出しを重視して自身のオリジナルのテーマを作ることを目指してはいます。これは他人の論文を読まないということではありません。相当の数をインプットしないとアイデアを出すことがそもそも難しいでしょうし,アイデアが出てもそれをしっかり問題設定して解ける形にもっていくことはできません。
また,知識を広げるというのは理論や技術を自分のものにするだけではありません。ある程度自身の研究成果が出たあとでも,その位置づけや価値を明らかにするためには周辺の研究や流行を知っておくことも必要です。国際会議論文では10-20程度,雑誌論文では20-40など数多くの論文を引用して,自身の研究の位置づけや価値を示す必要があります。
論文の読み方は2種類あります。
探索フェーズ:研究の周辺調査のために流し読みをする。2でしっかり読み込むべき論文を選んだり,普段のニュース代わりにしたり,学会発表や論文をまとめる段階になって自身の研究の周辺研究を探したりするときには,まずは論文を数分で流し読みするのがいいです。タイトルや概要(Abstract)を中心にどんな問題に取り組んでいるのかだけでもチェックしましょう。
探求フェーズ:自身の研究に使える理論・技術を求めてしっかり読み込む。英語を全訳する必要はありませんが,研究の目的,問題設定と定式化(具体的にどんな問題を解きたいのか?そしてどのような数学の問題に落とし込んだか?),アプローチ,結果まで一通り読むことになります。特に理論系の論文では定理の証明までしっかり追って,自分でも新しい理論を作れるように数多くインプットを増やしておきます。すべての論文に対して読み込むのは不可能です。まずは1で流し読みをして,しっかり読み込むべき論文を選択することが重要になります。
井上研では2種類の論文の読み方を意識して,2つの勉強会を用意しています。
論文調査会:膨大な数の論文から(自身にとって)価値のあるものを探すのは用意ではありません。 たとえば,ICML, NeurIPS, ICLRの3大会(AIトップカンファレンス)は,近年の採択論文数が数千本規模に達しており,一人で追うのは物理的に不可能です。研究室内でも「AI論文調査会」を立ち上げて,参加者で協力しながら調査することにします。参加者は「自身の研究に近い領域」と「個人的に興味がある領域」を織り交ぜて,テーマが重複しないように分担することにします。論文の読み方として「詳細まで読み込まない」ことを意識します。
論文紹介:毎年4月の最初の研究ゼミでは論文紹介をおこなっています。何か一般論文を深く読み込んで,理論を学びつつプログラミングで手を動かして再現実験までおこない,それをプレゼンしてもらうイベントです。この論文紹介は探求フェーズの読み方を想定しています。