仏文学専攻では、学部生がフランス語圏へ留学することは珍しくありません。近年は、全塾の交換留学制度を用いて毎年数名が留学しているほか、個人的に留学先を探したり、長期休暇を利用して短期留学をする学生もいます。
留学に当たっては語学能力を証明する資格(主にDELF DALF)が必要な場合があり、その取得にあたっては教員がバックアップしています。
これまでの留学先の例は、次のとおりです(大学の名称は当時のもの)。
フランス ENS(高等師範学校、パリ) パリシテ大学 パリ第3大学 パリ第7大学
INALCO(国立東洋言語文化学院、パリ)
リヨン第3大学 ストラスブール大学 トゥールーズ第1大学
イタリア ヴェネツィア大学
カナダ コルディア大学 モントリオール大学
スイス ジュネーヴ大学
慶應義塾国際センターはこちらのリンクをご覧ください。
Y.U.さん(2020年度卒業)
留学期間:2019年8月〜2020年3月
留学先:ストラスブール大学(ストラスブール、フランス)
大聖堂を中心に栄え、ドイツとフランスの文化が混じり合っているストラスブールは、ジブリ作品『ハウルの動く城』の舞台となったアルザス地方にある街です。
パリと並んでフランス菓子の発祥地とされるこの街には、その通り洋菓子店が至る所に居を構えています。街のあちこちに川が通っていて、そこにかかる橋には花々が通年飾られており、その周りにはアルザス地方ならではのカラフルな木枠の家々が軒を連ねています。天気の良い昼下がりには、人々が川辺に寝転んだり、鳥に餌をあげたりしている姿が多く見られました。また、ストラスブールに地下鉄はなく、トラムかバスで移動します。こういった環境のせいか、街の人たちはどこかのんびりしていて、穏やかな雰囲気を醸し出していると感じました。治安が良いと言われる所以かもしれません。大きすぎず、かといって不便でもないちょうど良い街の大きさだと思います。冬には街全体がイルミネーションやクリスマスの飾りで彩られ、クリスマスマーケットが街の数カ所で大規模に行われます。黄色や白の灯りを灯した木造りの屋台が所狭しと並び、ホットワインを片手にキャンドルやクリスマスのオーナメントなど、多岐にわたる種類の屋台を見て周ることができます。
このような街にあるストラスブール大学で、7ヶ月間文学や美術を中心に勉強しました。私は童話や絵本に関心があったので、文学のみならず美術についても学べるこの大学は、理想的な環境でした。また、日本語学科もあるので、日本語を学びたいフランス人の学生と毎週金曜日に、ただ好きなことを話したり、あるいは課題を教え合ったりして、語学力の向上を促す機会もありました。また、学生向けのイベントも多数開催されており、一人で申し込んだとしてもそこで新しく出会う人たちと話しているうちに友達になることもできます。
そのような中で、私が一番印象的だったことがあります。それは文学の授業で、(自分でも理由は分からないのですが)どうしても仲良くなりたいと思う人がいました。勇気を持って話しかけると、趣味や、好きなことにおいてその人との共通点が数多くありました。最終的には、一緒にクリスマスマーケットに行ったり、夜が明ける前からバスに乗って8時間かけてスイスに行ったり、アルザス地方の街を散策したりと、色々な思い出ができました。その人が祖国のポーランドに帰ってから半年以上経った今でも、連絡を取り合っています。一生のうちで得られる掛け替えのない友人と留学先で出会えたことは、本当に嬉しく思います。
生活面では、私は滞在先としてシェアハウスを選びました。初めてのことで少し不安もありましたが、結果的には非常に良い選択であったと思います。フランスの人や、各国からフランスに学びに来る学生と一つ屋根の下で暮らすことは、フランス語を積極的に使う機会にもなりましたし、何より自分の知らないことや、思ってもみなかった価値観と出会えたことで自分の世界が広がりました。時には近所のオランジュリー公園に出かけたり、ドイツまでトラムに乗って買い物にいくこともありました。このような環境に身を置いたこともあってか、大げさではなく、不安や寂しさを感じる時は一時たりともありませんでした。むしろ、日本で暮らしていた時のような現実味のない浮遊している感覚がなくなり、「実際に自分がいる」感覚を取り戻すことにつながりました。それは、シェアハウスだけではなく、一歩家の外に出れば目に入るストラスブールに暮らす人たちの、今目の前にあるものを見て、それを心から享受する姿勢のおかげであったと思います。
私がフランス・ストラスブールにおける素晴らしい経験の数々をお伝えしたいだけこの体験談にまとめることは不可能です。是非、少しでも留学に興味をお持ちでしたら、迷わず行ってみるのが良いと思います。留学前の不安を忘れ去ってしまうような、自分の知らない世界を覗きに行くことができます。
私自身、高校時代からフランスへの留学を切望していたのですが、仏文学専攻の先生方は最後まで見放さずに協力してくださり、本当に感謝の言葉もありません。不安になことがあってもサポートしてくださる環境がありますので、フランス留学を考えている方も、フランス語に興味がある方も、あるいはやりたいことが決まっていない方も、仏文学専攻で学ぶことを視野に入れてみてはいかがでしょうか。必ず得るものがあると思います。
(2020年11月)