正式には「研究会」という名称のゼミは、3年生、4年生の必修として、毎年、7~8程度が開講されています。2年生の終わりに学生は興味のある分野・主題を提出し、それによってゼミが決定します。関心が変わった場合は、学期の変わり目でゼミを変更することができます。
このゼミは、主に受講生諸君による発表によって成り立っています。テーマはフランス語を中心とした「言語」や「言葉」に関するものなら何でも構いません。たとえば語彙や文法などの言語学的問題、言語教育や言語政策、翻訳を通じた対照研究や文化比較、フランス語の多様性などです。発表の後は参加者全員でディスカッションし、問題を明確にしたり情報を交換したりします。発表をする側も聞く側も、学生も教師も、お互いに高め合うことが信条です。発表を繰り返すことでその内容は徐々に磨きがかけられ、最終的に卒論に結実します。
毎年度、初回の授業で必ず話すことが二つあります。まず「学問の分類」について。「学問」と呼ばれる知の体系は、物理学、生物学、化学、経済学、社会学、哲学、歴史学、言語学... など、実に多彩です。これらをいくつかのグループに分ける場合があります。ただしそのような分類は時代によって異なり、たとえば18世紀の『百科全書』の頃と現代では大きく異なります。現代に限っても、国や地域によって異なることもしばしばです。しかしごく大雑把に言えば、「自然科学」「社会科学」「人文学」が大きな三本柱であるとするのが一般的です。それぞれの研究対象や方法・手段、目的の特徴を知ることで、自分の興味関心を俯瞰的に眺めることができるようになり、卒論のテーマを選んだり研究を進める際に大いに役に立ちます。
もう一つは「巨人の肩の上」のエピソードです。卒論は素朴で控えめなものではありますが、あくまでも学術論文です。学術論文は学問的な研究の成果を文章にしたものです。では学問的な研究とは何でしょうか?それは、一つのテーマについて、先人の力によって蓄積された「知」を土台として、新しい「知」を付け加える作業です。ヨーロッパの伝統では、このような状況を「我々は巨人の肩の上に乗っている小人だ」という言い回しで表現します。遠くが見えると思っても、実は大きな存在の助けを借りているに過ぎない、ということの比喩です。人類の先輩たちが苦労して積み上げてきた知の体系があってこそ、現在の我々は様々なことを知り得るのです。そのような人々に最大限の敬意を払いつつ、謙虚な態度で自分のできることをほんの少しだけ付け加える —— これが「研究」の本質です。
学生が自分で選んだテーマで発表をする以外に、ロラン・バルト『明るい部屋』を、原文を適宜参照しながら、和訳で読んでいます(2024年度)。各自が疑問点や興味深い点を挙げて、それについて議論しています。
日仏文化交流と舞台芸術(演劇、オペラ、バレエ、映画を含めたスペクタクル全般)をメインテーマにしていますが、メンバーの関心にあわせて幅広く対応しています。最近はジャポニスムそしてネオ・ジャポニスムへの関心も高まっています。フランスの演劇やコメディ・ミュジカルの映像をみんなで鑑賞したこと、ゲストスピーカー(卒業生)を招いて、能の翻訳についてお話しして頂いたこともあります。
卒論のテーマは多様ですが、今まで指導した一例をあげると、ベケットやイヨネスコの演劇、フレンチ・ミュージカルについての考察、バレエ(原作と翻案の比較)、ジャポニスムと万博の関係、落語におけるフランス文学の影響、文学者ピエール・ロチと日本学者ロニーの比較、ル・コルビジェの日本受容、フランスにおけるマンガ・アニメの受容、アイドルや推し活を通じた日仏文化比較、日仏の文化外交比較、ペットやバカンスを通じた日仏文化比較もありました。和やかな雰囲気で、好きなことを自由に研究できるゼミです。