したがって、医療介護業務にフルタイムで従事する人材市場の需給バランスは切迫ことになりサービス単価は高騰する(図2Ⓑ’)。よって、利用者は、現在と同等のサービス量を、現在と同等の利用負担水準では調達できないことが予見される。この予見をもとに、2020年と2040年との生活・介護支援サービス需要供給のバランスの差異をPQダイアグラムで概念的に比較し、介護保険制度の持続可能性の論点を図2に示した。縦軸はサービスの平均利用価格(P)、横軸は必要生活・介護支援サービス量(Q)である。Ⓐは利用者のサービス需要曲線とサービス供給曲線との均衡点である。Ⓑは、2040年の利用者負担水準を2020年と同等とし、サービス量(Ⓠ)は高齢者人口の伸びに比例させた場合の需給均衡点である。しかし、2040年には、自己負担率上昇と人手不足を反映したサービス単価高騰によりサービス供給曲線(2040-S)の価格弾性が強まるので均衡点はⒷ’となる。しかし、少なからずの世帯が高い利用者負担水準でのサービス調達を回避することによる需要減が予見されるので、2040年の均衡点はⒷ’ではなくⒸに帰着する。正味需要は増加するが家計事由でサービス需要が抑制され地域福祉便益の棄損(図2中央の△(ⒸcⒷ)領域が示す必要であるが調達できないサービス便益相当)が発現する。