6日間という短期間のプログラムで、受講生がどのようなステップで学び、何を得ることができるのか。
実際に行った授業の解説と授業を受けた受講生の声から、その答えを紐解いていきます。
Step1: よく使われる英語表現と活用法を学び「引き出し」を増やす
長年英語を学んでいても、知らない単語や表現が次から次へと出てきます。即時性が求められる通訳業務では、どの単語を使うべきか迷っている暇はありません。「表現の引き出し」を増やすことで、通訳の精度を高めていきます。授業では日本語にも精通した英語ネイティブの講師が、相手に合わせた丁寧な言い回しや、内容に適した英語表現、英語ネイティブがよく使うイディオム表現を解説しました。そして講師が自らの仕事でも注力していたというのが声のトーン。相手に与える通訳者としての印象や信頼度にも影響を与えるため、客観的に自分の声に向き合う大切さも講師自らの経験を交えて指導しました。
<受講生コメント>
授業で前に立って訳した際に、すぐに適切な表現が出てきませんでしたが、講師から役立つ言い回しを教わったり、他の人の訳を聞くことで言葉の選択肢が増えた気がします。
Step2: アウトプットするための準備「ノートテーキング」のコツを知る
通訳では必要な情報を正確にインプットすることが重要です。学習経験者や実務経験者の中でも知られていないのが適切な「ノートテーキング」。単に聞いた内容を書き留めるのではなく、重要なポイントをピックアップして、時には記号などを駆使し、書き留めます。授業ではプロの通訳者がよく使うノートが支給され、それを活用してメモ取りを実践します。受講生からは「ノートを取ることに集中しすぎると、聞き取れない部分が出てきて情報不足に繋がる」という質問があがりました。そこで講師が薦めたのは、聞いた内容を記憶に留めるリテンションの活用。様々なテクニックの使い分けについても詳しく解説しました。
<受講生コメント>
これまで会社で通訳を頼まれた際に、メモを取るなどしていましたが、自分のやり方が正しいのかが分かりませんでした。今回、プロが実践しているメモの取り方を具体的に学べたことで、その答え合わせをすることができました。今もそのやり方を実践しています。
日本で英語教育を受けた人たちが陥りやすいのが、直訳すること。新・通訳には直訳から脱却し、「生きた言葉」に変換するスキルが必要です。授業では、言葉を追うのではなく、ストーリーの核を理解した上でアウトプットできるかに意識を向けます。数分の音声を少しずつ区切って順番に訳し、どれだけ内容を理解できているか日本語でも確認しました。どうしても直訳になってしまうと講師がすぐさま指摘。自らの弱点を細部で認識しながら、矯正していきます。
また、通訳訓練を始めたばかりの頃はどうしても言葉が出てこないこともありますが、その際の対処法も、自らの経験を交えて講師が指導しました。
<受講生コメント>
正確に訳すことを意識しすぎて、直訳調になっていましたが、講師から「話者が何を言いたいのか、全体像を理解した上で訳することが大切」と教わりました。まだ上手くできませんが、意識できるようにはなったと思います。
通訳は人前に立って行うのが基本。授業でも、2人1組でペアになり、クラスメイトの前で通訳をします。より実践に近い環境で即時に訳すだけではなく、その緊張感も体験します。2025年9月の授業では、映画の記者会見を想定し、ノートとマイクを持ちながら通訳を行いました。マルチタスクが求められる中、1つのことに集中すると訳す作業が疎かになったり、メモがうまく取れずに必要な情報が落ちてしまうことも。その状況で何を優先させるべきなのか、という受講生からの質問に対し、その対処法を講師が指南しました。
<受講生コメント>
人の前に立って訳すのは緊張しました。でも、「本番で間違うことは許されないけど、教室ではたくさん間違えて、たくさん恥をかいていい」という講師の言葉で気持ちが軽くなった気がします。
通訳ブートキャンプは、6日間という短い期間の中でスキルや知識を習得するだけではなく、トレーニングの成果を腕試ししていただけるOn the job training(OJT)が含まれます。2025年9月は、ロサンゼルスで行われる映画祭での通訳サポートを行いました。まさに授業での訓練と同じ状況に置かれる中、学んだことを1つでも多く活用して、壇上で通訳します。メモとリテンションをどう使い分けるののかが難しいところ。また自分の訳した内容や人前に立った時の動きなどを確認するためにクラスメイトに動画撮影を依頼。客観的に見ることで改善点の発見に繋げます。今後のブートキャンプでも、学んだスキルを使って力試しができるよう、通訳にチャレンジできる機会を設ける予定です。
<受講生コメント>
これまで大勢の人の前で通訳した経験がないので、とても緊張しましたが、6日間という短い期間で、できるだけ多くのことを体験したいと思い挑戦しました。情報収集の大切さは講師から教わっていたので事前に登壇者に声をかけることを心掛けました。
教室に籠って通訳トレーニングに明け暮れるだけが通訳ブートキャンプではありません。受講生たちは授業以外の時間も満喫します。
実際に受講生がどのように過ごしたのか紹介します。
通訳ブートキャンプには様々なバックグラウンドの参加者が集まります。クラスメイトと食事しながら情報交換するチャンスも。この機会を有効活用してください。
LAといえば、野球観戦は欠かせません。授業が終わると、隣町のガーデナから専用シャトルバスで球場へ。活躍する日本人選手からエネルギーをもらいます。
ロサンゼルス校のすぐ近くに映画館があり、授業後に映画を見に行くブートキャンプ参加者もいました。滞在中に公開している映画をチェックしてみては?