受け入れ国へのガイダンス(抜粋翻訳)
受け入れ国へのガイダンス(抜粋翻訳)
(参照:受入国へのガイダンス(原本:英語))
以下の内容は、この危機の影響を受けた子どもたちやその家族と活動する際に、国際基準をどのように適用するかを示唆するものとして、外部(諸外国)向けにISSネットワークが発行したガイダンスです。どのような決定、行動、プロセスであっても、一貫して問われるのは、"何が子どもの最善の利益となるのか "ということです。これは、複雑で簡単には答えが出せない現地の状況にも当てはまります。
【国際的な養子縁組】
武力紛争の状況下では、国際養子縁組を開始すべきではありません。迅速な養子縁組は、次のようなものでなければなりせん。
国際的な基準に従って慎重に実施されること。
明確に特定された子どもに対し、すでに養子縁組の決定がなされている特別な場合にのみ、行われること。
危機というものは、監視がほとんどないこともあり、不正行為の温床となります。不正な行為が行われる危険性は、極めて高いです。
ウクライナは国際養子縁組の主要な送り出し国の一つです。ISS/IRCの2020年の世界年間統計においては2位にランクし、年間277件の国際養子縁組を成立させています。現状では、孤児や親の養育権を完全に失ったようにみえる子どもたちが、本当に養子縁組の対象であるかを判断することは、非常に困難です。
【入所施設にいる、あるいは入所施設から来た子どもたち】
入所施設で生活する子どもたちは、保護されなければなりません。すべての子どもたちは、差別されることなく、生命、生存、発達の権利を有しています。国際基準を無視して、スピードを重視した養子縁組がなされた場合、この配慮が損なわれる可能性があるのです。むしろ、子どもたちを産みの親や他の家族の一員と再会させるための努力が必要です。ウクライナでは、2020年に718の施設があり、合計10万人以上の子どもが入所していました。半数近くが特別なニーズを持つ子どもたちです。
ウクライナの入所施設の子どもたちが、その職員とともに他国に辿り着いた場合、子どもの親権者や世話人の役割は、これらの施設の管理者に任されることになっています。とはいえ、子どものための永久的な意思決定のプロセスに不可欠な承認の手続き(両親、管轄当局の同意)などを省いて行えるということにはなりません。
【代理出産】
緊急事態下において、代理出産の手続きを行うことは適当ではありません。ウクライナは、代理出産サービスを希望する外国人カップルの間で2番目に人気のある国です。近年、ウクライナでは、年間2,000~2,500人の子供が代理出産で生まれていると推定されています。米国、英国、アイルランド、オーストラリアなどに住む少なくとも1,500組のカップルが、ウクライナの代理母との契約を結び、ウクライナのクリニックに胚(受精卵)を保管しています。
【移動する子どもたち】
すべての子どもたちにとって、家族と一緒にいること、あるいは家族と再会することが、最善の利益です。子どもたちを、家族または主な養育者と一緒にし、(さらなる)別離を防ぐためにあらゆる手段を講じる必要があります。可能な限り、子どもは大人の家族や養育者と一緒に避難・移動させ、兄弟姉妹は一緒にいるようにしなければなりません。
親や養育者から引き離された子どもたちを含め、子どもとその家族のための家族単位で滞在できる宿泊施設の提供を最優先してください。子どもが親と一緒でない場合、子どもと親とがいつでも連絡を取れるようにし、お互いに居場所がわかるようにしておいてください。これは、精神面での健康や、のちの家族の再統合のためにも重要です。
*参考となる国際基準およびISSの内部文書(リンク先は全て英語サイト)
Convention on the Rights of the Child (児童の権利に関する条約)
UN Guidelines for the Alternative Care of Children (国連子どもの代替的養護のためのガイドライン)
UNICEF Best Interests of the child in ICA (ユニセフ 国際養子縁組における子どもの最善の利益)
Moving Forward Handbook (ムービング·フォワード·ハンドブック)
Moving Forward Handbook (代替ケアと養子縁組に関するISSテーマ別ファクトシート)
ISS Manual on Children on the Move (ISSマニュアル「移動する子どもたち」)
The 1993 Hague Convention (1993年ハーグ条約)
The 1996 Hague Convention (1996年ハーグ条約)
HCCH Note on Children deprived of their family environment due to the armed conflict in Ukraine
(ウクライナの武力紛争により家庭環境を奪われた子どもたちに関するハーグ国際私法会議ノート)
(2010年ハーグ国際私法会議特別委員会による結論と提言)
(代理出産で生まれた子どもの権利保護のためのヴェローナ原則)
ご質問や詳細な情報、法律やその他の分析が必要な場合は、ISS本部(irc-cir@iss-ssi.org) までお問い合わせください。