例えば、皆さんに配ったレジュメの図、よくある感じの図なのですが、何が不満かと言うと・・・
組換えが起こっていることをわかりやすく見せたいという意図もわかるのですが、実際の結合状態を反映しない図になってしまっているんですよねー。本当は、姉妹染色分体間(赤と赤、青と青)は常にコヒーシンと呼ばれるタンパク質複合体で結合している、んです。そして、ザイゴテン期からパキテン期にかけて相同染色体間(赤と青)を結合するシナプトネマ複合体は、ディプロテン期に解消されます。なので、ディプロテン期には、交叉がある状態で、赤と青の間の結合が解消されて、赤は赤同士、青は青同士で結合している、というのが正しいのです。で、下の図では、そういう風に書いてあるのがわかると思います。わかりにくいかも知れないけど、コヒーシン(リング状:黄色)とシナプトネマ複合体(棒状:緑色)を書き入れると、こういう感じ。
更に、下の模式図では、中期と後期の間で何が起こるのか、ということが実際には説明できません。ちょっと長い説明になってしまうかもしれませんが・・・・
前置きとして、体細胞分裂でも減数分裂でも、染色体を正しく娘細胞に分配するためには、分配される染色体の2つのキネトコア(動原体)に、両側の紡錘体極から伸びてきた微小管がそれぞれ結合して、両極から引っ張ることができる、ということを確認する必要があり(紡錘体チェックポイント)、このチェックポイントをクリアすると後期(Anaphase)に進行することができます。
そして、後期に入って、今までペアになっていた染色体の間に、何が起こって両極に分かれることができるようになるのか、というと、それは、コヒーシンが分解して姉妹染色分体間が分離する、ことがそのメカニズムなのです。この現象は、体細胞分裂でも減数分裂でも、です(何を言ってるか、わかるかな?一番下の図を見てわかるといいのですが。)。
ちょっと別の角度からも説明すると、減数分裂の際の組換えの意義は、遺伝情報のシャッフル、みたいなことがよく書かれていますが、減数分裂の仕組みを理解すると、それよりも大事なはたらきがあるように見えます。私の感覚では、第一減数分裂では、相同染色体間で組換えが起こることで、相同染色体間がコヒーシンで結合された状態になる、という感じです。ちょっと(かなり)わかりにくい表現だとは思うのですが。興味を持った方は、是非自分で勉強するなり、私のところに質問に来るなりして頂けるとありがたいです(説明を書くのが面倒になった、わけではないですよ・・・)。
で、こちらの図では、実際にはコヒーシンは書かれていませんが、常に青は青、赤は赤で結合している様にちゃんと書かれていて、後期になると、その青と青の間、赤と赤の間が離れる(コヒーシンが分解される)ように書かれています。その辺にこだわって書かれた模式図ということだと思います。で、ここでなぜ第一減数分裂の時の2つのセントロメア間は離れないのか、ということを疑問に思いましたか?そう思った人がいたら、素晴らしい。この第一減数分裂時のセントロメアのコヒーシンがなぜ分解されないのか、という問いから、コヒーシンを分解から守る役目をする、"シュゴシン"という分子が発見されました(ちょっといい加減すぎかな?)。