1) Fukatani M., Oyama D., Aizawa M. (2026)
Historical museum specimens reveal the identity of “Kuchiguromasu” in Lake Tazawa, Japan, as immature Kunimasu Oncorhynchus kawamurae. Ichthyol Res (2026)
サケ科魚類のクニマスOncorhynchus kawamuraeは秋田県田沢湖の固有種でしたが、1940年代の強酸性水の導水により絶滅し、その後2011年、山梨県西湖において移入個体群が生存していることが報告されました。このような経緯から、田沢湖産のクニマスの標本は国内外で20弱しか残されていない状況でしたが、昨年、東大総合研究博物館動物部門から新たに3標本が発見されました。本研究ではこの3標本について形態的な情報を詳しく記載しました。加えて、田沢湖にはもう1種「口黒マス」とよばれるサケ科魚類が生息することが知られていましたが、すでに田沢湖も鮭鱒類が絶滅して久しく、その正体は謎に包まれていました。ところが今回、東大博から発見された3標本のうち1標本に「口黒マス」というタグが付けられており、形態観察からこの魚もクニマス(ただし未成熟個体)と同定されたことから、口黒マスの正体はクニマス未成熟魚であることが明らかになりました。戦前の田沢湖では、深い湖底に産卵のため蝟集したクニマスを漁獲していたため、「クニマス」が産卵期の成熟魚として印象づけられており、湖の中層を遊泳する未成熟魚が別の魚と認識されていたと考えられます。
2) Oyama D., Saito H., Fukatani M., Arao K., Suzuki T., Senou H. (2026)
Rhinogobius brunneus collected from Hachijo-jima island: first specimen-based records of the genus Rhinogobius (Teleostei: Gobiidae) in the Izu Islands, Tokyo Metropolis, Japan. Aquatic Animals AA2026-11:1-8
伊豆諸島八丈島からクロヨシノボリRhinogobius brunneusを記録しました。本報告は本属魚類の同諸島からの標本に基づく初記録となります。火山性のため陸水環境に乏しい伊豆諸島ですが、八丈島には比較的安定した河川が複数存在し、ユゴイ(尾山・深谷,2025において報告)などとともに本種が多数個体採集されました。
3) Isolated island endemic crabs: Fine-scale genetic population structure of an endangered freshwater crab, Geothelphusa miyakoensis. Conserv Genet 27, 54 (2026). https://doi.org/10.1007/s10592-026-01785-8
Takefumi Yorisue, Akira Iguchi, Miyuki Nishijima, Kodai Gibu, Saki Higa, Nina Yasuda, Kenji Takata, Kohei Hamamoto & Yoshihisa Fujita
孤立した島にのみ生息する絶滅危惧種の淡水カニ であるミヤコサワガニGeothelphusa miyakoensis を対象に、集団ゲノム解析により個体群のつながり調べた結果、島内でも地域ごとに遺伝的な違いが細かく分かれており、個体の移動が極めて限られていることを明らかにした。こうした強い遺伝的な分断を持つ種は環境変化や開発の影響を受けやすく、保全には地域ごとの特性を踏まえた対策が重要であることを示している。
4) Environmental Exosomes/Small Extracellular Vesicles: Evidence of Extracellular RNA Release by Aquatic Organisms
Ryo Yonezawa, Lingxin Meng, Naoki Hashimoto, Ibuki Igarashi, Satoshi Kimura, Nina Yasuda, Susumu Mitsuyama, Takanori Kobayashi, Kazutoshi Yoshitake, Shigeharu Kinoshita, Nahoko Bailey-Kobayashi, Kaoru Maeyama, Kiyohito Nagai, Shugo Watabe, Tetsuhiko Yoshida, Shuichi Asakawa
Marine Biotechnology 28:72
本研究では、真珠貝が「エクソソーム」と呼ばれる微小な粒子を海中に放出し、その中にRNAを含んでいることを初めて明らかにしました。これらは分解されにくく、他の生物との情報伝達に関わる可能性があります。さらに、環境DNA・RNA解析の新たな手法として、生物の状態や多様性をより正確に調べる手がかりになることが期待されます。
プレスリリース記事:https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20260513-2.html
Kenji Takata, Takeshi Hayashibara, Masanori Nonaka, Bertalan Lendvay, Tzu-Hsuan Tu, Federica Costantini, Holly Bolick, Hiroshi Namikawa, Naoko Ishikawa, Yoshihisa Suyama,Taisei Kikuchi, Akira Iguchi, Nina Yasuda
Global Ecology and Conservation 67 e04125-e04125
日本の宝石サンゴ漁業を対象に、見た目では区別できない“隠れた種”(クリプティック種)の存在を遺伝子解析で明らかにしました。これまでシロサンゴと1種として扱われてきたサンゴの中に複数の異なる種が含まれることを示し、資源評価の見直しの必要性を指摘しました。種ごとに生態や回復力が異なる可能性があるため、持続的な利用と保全には、より精密な種識別に基づく管理が重要であることを指摘しています。
6) lluminating Deep Reef Refugia: Horizontal and Vertical Genomic Connectivity of Seriatopora hystrix in the Ryukyu Islands, Japan
Kenji Takata, Yuji Narita, Nanami Noguchi, Satoshi Nagai, Taisei Kikuchi, Yoshihisa Suyama, Frederic Sinniger, Saki Harii, Nina Yasuda
Molecular Ecology accepted
気候変動や人間活動により浅いサンゴ礁は危機にあります。本研究では、より深く環境変化の影響が少ない中深層サンゴ礁が“避難所”として機能するかを、琉球列島のサンゴを対象に遺伝子解析で検証しました。その結果、見た目では区別できない複数の系統が存在し、遺伝的なつながりは距離や水深差が大きいほど弱まることが分かりました。保全には、こうした隠れた多様性と水深をまたぐ生息地の連続性を考慮することが重要です。
7) Reproductive Phase and Seawater Temperature Modulate Locomotion and Chemosensory-Guided Orientation in Crown-of-Thorns Starfish
Masumi Kamata, Takaya Kitamura, Tatsuki Koido, Takuma Mezaki, Nina Yasuda
PJA-B accepted
オニヒトデの大量発生は、サンゴ礁生態系の管理における重大な課題です。ヒトデ類は一般的に、化学受容(Chemo reception)によって餌のケミカルキュー(Chemical cue、匂い)を受容し、探索行動をすることが知られています。そこで、サンゴの捕食が問題視されているオニヒトデの採餌行動の要因を、化学受容に着目した室内実験を行うことで解明しました。3年間にわたる300回以上にわたるY字水槽(Y-maze)を使った実験により、まず海水温の上昇は、温度による代謝率の上昇に起因して、オニヒトデの実験時の動きの有無(運動量)の増加と関連していることが示唆されました。さらに、オニヒトデが餌のサンゴの匂いに向かう行動は、オニヒトデの繁殖期の後よりも繁殖期の前により生じやすいことが推定されました。これは、オニヒトデの繁殖前には栄養の需要が高まることが背景にあると考えられます。これらの研究結果は、オニヒトデの化学感覚に基づく採食行動が、生殖段階と海水温によって調節されることを初めて示しています。
coming soon...
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1) オニヒトデはサンゴの匂いを嗅覚で受容するのか? -化学アッセイ・行動実験から探る-
鎌田真壽, 伊原さよ子, 東原和成, 安田仁奈.日本生態学会第73回全国大会, 2026年3月11日-15日
2) Genome-wide SNPs data reveals genetic population structure of masu salmon Oncorhynchus masou species complex in Japanese archipelago
Mahiro Fukatani, Naomasa Kawashima, Yukio Iwatsuki, Nina Yasuda. Species On The Move 2026, Apr 19-24 Taiwan, Sun Moon Lake
1) 日本列島におけるサクラマス種群の地理的遺伝構造
深谷真央.第46回関東地区生態学関係修士論文発表会, 2026年2月15日
2) サンゴ捕食者のオニヒトデはいつサンゴを捕食するのか? -室内実験と野外観察で迫る-
鎌田真壽.BiP Up 研究成果報告・計画発表会, 2026年3月21日
3) Not All Corals Move North:Genetic Barriers, Temperate Lineages, and the Limits of Climate-Driven Range Shifts
Nina Yasuda 招待講演 Species On The Move 2026 Apr 19-24 Taiwan, Sun Moon Lake