sealing a sample cell

用意するもの

サンプルセルを密閉してしまうと当然ながら中を見ることはできない。試料の軸に関する情報は、セルの土台の側面や底の部分など、密閉してからでも見えるところに油性マジック等で書いておく。

残留窒素について

下記の方法によって、ヘリウムガスが何割かセルの中に入って密閉されれば、熱伝導の観点では十分であり試料温度計の表示と実際の試料温度はよく一致する。しかし、簡易的なグローブバッグを用いた封入では窒素が残ってしまうことが多く、これが(弱いながらも)バックグラウンドに寄与する。

室温で封入された窒素は50-60Kで液化するが、この時にバックグランドが低下する。この温度領域をまたいで弱いピークやdiffuse scatteringを測定する際は注意すること。

よりバックグラウンドを下げた測定を行いたい場合は、グローブボックスなどを用いて排気したのちHeガスを入れてインジウムシールをするのが良い。

(1) サンプルセルにインジウム線を巻く

下の写真のようにインジウム線を巻いておく。これが潰れることでセルが密閉されるので、きっちり巻いておくとよい。

TAIKAN用セルの場合は蓋の側に、物性研標準セルの場合は土台側に巻いておく。(注:TAIKAN用のセルについて、土台側に溝が切られているが、この溝はインジウム線を入れるためのものではないので注意すること。インジウム線は下の写真のようにキャップ側の出っ張りの外側に巻く。)

インジウム線の始点と終点は重なり合うようにして密着させておき、潰れた時に内部が完全に密閉されるようにする。線の長さが足りていなくて「C」字のようになっているとその隙間から漏れてしまう。

また、グローブバッグ内での作業中にこのインジウム線がずれたり落ちてしまう場合には、インジウム線にごく少量の真空グリスをつけておき、セルの土台と密着させておくと良い。(特にTAIKANセルの場合)

(2) サンプルセルをグローブバッグの中に入れてガス置換する

グローブバッグを広げ、右図で赤い矢印の部分にチューブコネクタをつけておく。そこにHeガスのホースを取り付ける。

バッグの中には、サンプルセル(この時点でインジウム線を変な形に潰してしまわないように、そっと蓋を被せたもの)、ネジ、ネジしめ工具を入れておき、Heガスを袋の中に充満させる。

ある程度膨らんだら、その状態でグローブバッグに手を入れ、サンプルセルの蓋を取って、中の空気を軽く追い出す。その後、また軽く蓋をのせる。

その後、グローブバッグの一端を開き、グローブバッグを上から押さえ込むようにして、中のガスを放出する。

厳密には排気しきれないが、ある程度ガスが出ていったところで再びグローブバッグを封止して、Heガスを入れ、膨らんだらサンプルセルを軽く開く。このプロセスを3回くらい繰り返す。

(3) ネジを締める

何度かガス置換をした状態で、サンプルセルの蓋を閉めたら、グローブバッグの中でサンプルセルのネジを締めて密閉する。

一箇所のネジを強く締めるとインジウム線がいびつに変形して正しく封止されないので、全てのネジをセットしてから均等に締め込んでいき、セルの蓋が土台と平行な状態で締まっていくようにする。