任意のことば(3種類)について、辞書(国語辞典)をひいて調査しなさい。その際、以下にしたがう
こと。
・4種類以上の辞書を使用し、それぞれに書いてあることを読み解き、また、それぞれの辞書に書いてあることを比較する。
そのうえで、考えたことを書く。
・調査する辞書は、新しい版のものが望ましいが、学校や公共の図書館にあるものでよい。
・無料で使えるオンライン辞書の類も使用してよいが、1種類に限る。
・「そのことばを取り上げたきっかけ」を必ず書くこと。
・辞書に書いてある「説明(語釈)」と、「そのことばの使用例」は、すべて書くこと。
・「語釈」「使用例」を読む・比較する際は、「辞書によって、説明や使用例は(どのように)違うか?」「この説明や、説明に
際して挙げられた使用例は本当に適切か?」「現実の使用例で、見落としているものはないか?」などといったことに注意
する。
・必ずしも書く必要はないが、それぞれの辞書の「凡例」を必ず読み、辞書の編集方針を把握すること。
はじめまして。日本語学分野の伊藤と申します。
「日本語学」といっても研究対象はいろいろですが、私の専門は「古辞書」です。日本では古くから様々な辞書が作られており、そのうち、だいたい近世に入るころまでに作られたものが、「古辞書」と呼ばれています。それらがどうやって作られ、どうやって使われ、どう歴史的に展開していったのか…そんなことを主に研究しています。
では、このコーナーの趣旨にしたがって、課題の意図について説明いたします。
もちろん、私が辞書を専門にしているから…と言ってしまえばそれまでですが、それだけではありません。
「文学部における学び」の特徴のひとつは、「ことばとの格闘」だと思います。
ある物語や詩文、思想や哲学の主張、その中のある文脈、さらにその中のある一言、その中のある(たった)一文字……。「そこにあることば」が学びの始まりであり、そしてまた、学びの行き着くところでもあります(「どうしてこの人は、ここでこんなことを言っているんだろうか?」)。
この学びの過程では、「むずかしげな、よく意味の分からない、というかそもそも知らない」ことばとも頻繁に遭遇することでしょう。そしてこのとき、辞書は頼もしい協力者になってくれます。
「辞書を使う」ことそのものが、学びに欠かせない能力だ、と言ってもよい…かもしれません。
課題の趣旨の一つは、まさにこの点にあります。「辞書を使う能力の確認」であり、かつ、「目の前のことばとの格闘」体験、ということですね。
もうひとつ。
我々は辞書を「分からないことばを調べるもの」、つまり「ことばの権威」だと思っています。それは必ずしも間違いではありません。
一方で、辞書は人が作るものです。それゆえ辞書は、「あることばについて、その意味や用い方を明らかにしようと格闘した痕跡」で(も)ある(はず)でしょう。
場合によっては、個々のことばの説明(語釈)が現実の用法を反映しきれていない、というような、「力及ばす」な痕跡も見つかることさえあります。
つまり、辞書もまた、読み解かれるべきテクストとしての一面を持つということです。一般には、「辞書には個性がある」という表現がされるところでもありますね。
もうすこし、大学生活上の実益にも触れてみましょう。
大学での学びには、「辞書を引いて調べました」では済ま(され)ないことが(よく)あります。
辞書じたいが「個性をもつ」、「読み解かれるべき」ものであるという認識を持つことは、そんな事態へのささやかな心構えになる……んじゃないでしょうか。
以上のようなわけで、課題の趣旨のいま一つは、「辞書を読む」体験、ということになります。
この課題は、文学部での学び全般への助走であり、いずれ日本語学の分野で研究をしてみたい人のための、日本語学研究への助走でもある…つもりです。
日本語学分野に身を置くものとして、「同志」が現れることを楽しみにしております。
※さらに聞いてみたいことがあればメールで受け付けます。i.tomohiro@fujijoshi.ac.jp