幾何光学的な光(光線)を完全に再現するには,空間3変数 (x, y, z),方向2変数 (θ, φ),波長1変数 (λ),時間1変数 (t) が必要です.波長と時間を固定して考えると,(x, y, z, θ, φ) の5変数が必要ですが,ホログラフィではこのうち,面内の情報 (x, y) と伝搬方向 (θ, φ) の4変数が記録可能です.しかし z 方向,すなわち光軸方向の情報は記録できないため,ホログラフィでは CT のように物体内部を可視化することはできません.
光回折トモグラフィ (ODT) は逆散乱法の一種で,物体に対して様々な方向から光を照射してその散乱光を測定し,散乱光から物体の3次元構造を再構成する技術です.ディジタルホログラフィと同様に生物試料のラベルフリーな計測が可能であり,また試料の内部構造も可視化できることから,バイオイメージングなどへの応用が期待されています.
ODT では様々な角度から物体に平面波を照射し,その散乱波を測定します.散乱波には物体のスペクトル情報の一部が含まれます.フーリエ回折定理に基づき,周波数空間上で散乱波のスペクトルを適切な位置にマッピングして物体のスペクトル情報を充填し,逆フーリエ変換を行うことで,3次元の散乱ポテンシャルを再構成することが出来ます.
ODT が基礎とするフーリエ回折定理は弱散乱近似に基づいているため,厚みのある物体や屈折率の大きな物体では精度が低下します.また,光学系の制約により物体のスペクトル情報に欠落部分が生じ,再構成精度が低下することもあります.これらの課題を改善するために,多重散乱の効果を取り入れた再構成アルゴリズムの開発や,測定手法の検討に取り組んでいます.
バイオイメージングへの応用
多重散乱モデルに基づいた高精度再構成アルゴリズムの開発
圧縮センシングの応用による再構成精度向上
複屈折媒質に適用可能なベクトル ODT の開発