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これまでの研究

これまでに自分が中心的に携わってきた主な研究の成果を簡単に紹介します。そのほかの発表論文など、研究業績の一覧は Publications へ。

5. 生きた細胞の内部で多変量の数値計算を実行する mRNA の設計

分析技術の目覚ましい発展により、たった1つの細胞内部で発現している遺伝子の量を網羅的に解析することができるようになってきた。このような解析で細胞ごとに得られた数千、数万の遺伝子発現パターンを統計的に解析すれば、1つ1つの細胞を詳細に分類できる。ところが、細胞抽出液を必要とするこのような解析過程を経ると、細胞集団にある個々の細胞を分類することはできても、分類された細胞はもう存在しない。そのため、分類した細胞をその後の実験や医療には用いることができない。そこで、細胞内の多数の遺伝子発現情報に基づいた細胞の同定方法と、生細胞の分画方法とを融合させる手法を開発した。

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Reference

10. Endo, K.*, et al. (*co-correspondence): Science Advances, 5 (8): eaxx0835 (2019). Article (Open Access) | PUBMED | DOI

4. 合成 mRNA を用いた細胞内情報に基づく生細胞分画法の開発

再生医療をはじめ、人工的につくりだした細胞を生きたまま応用しようとする試みが発展してきている。ところが、培養している細胞全てを意図通りの細胞にすることは難しいため、培養中の細胞集団から望みの細胞を生きたまま精製して分離する必要がある。これまでは抗体をつかって細胞表面の特異的な抗原を検出して分類するのが一般的だった。しかし、細胞表面の情報だけで十分に細胞を識別できるだろうか?生きた細胞の精製・分離に細胞内部の情報を活用することはできないだろうか?そこで、遺伝子スイッチとして働く mRNA を設計し、試験管内で合成して細胞に導入することによって、mRNA が検出した細胞内部の情報に基づいて細胞を識別する手法を開発した。

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References

8. Endo, K.*, et al. (*co-correspondence): Scientific Reports, 6: 21991 (2016). Article (Open Access) | PUBMED | DOI

6. Miki, K.‡, Endo, K.‡, et al. (‡equal contribution): Cell Stem Cell, 16 (6): 699–711 (2015). Article (Free Featured Article) | PUBMED | DOI

3. 翻訳段階の制御に基づいて真核細胞で機能する人工遺伝子ネットワークの構築

いきもののゲノム DNA には、たとえば発生・分化など、様々な生命現象をひきおこすためのプログラムが書き込まれている。このようなプログラムは、その生命現象に必要な機能を担う遺伝子とそれらの発現を制御する遺伝子のネットワークで構成されている。このようなネットワークは、細胞内外の状態やネットワーク自体の状態をモニターしながら、その状態に応じて遺伝子の発現を制御している。このような遺伝子ネットワークを書き換えることで細胞に新しい機能を生み出したり、遺伝子ネットワークの特徴を探求する研究が精力的にすすめられている。DNAと転写制御で構成される遺伝子ネットワークをRNAと翻訳制御で構成できれば、遺伝子組み換えのない遺伝子操作技術を生み出せそうだ。そこでまず、遺伝子ネットワークのいくつかの基本形を遺伝子スイッチとして働く mRNA と翻訳制御で構築した。

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References

7. Wroblewska, L., et al.: Nature Biotechnology, 33 (8): 839–841 (2015). Article | PUBMED | DOI

3. Stapleton, J.A., et al.: ACS Synthetic Biology, 1 (3): 83–88 (2012). [Top 10 Most Read Articles of 2012] Article (Open Access) | PUBMED | DOI

2. mRNA のエンジニアリングによる遺伝子スイッチ設計技術の拡張

mRNA にはどんな活性をもったタンパク質でもそのアミノ酸配列情報をもたせることができる。また、RNA 分子自体にも他の分子と結合する活性(アプタマー, 下記 #1 参照)や、化学反応を仲介する酵素活性(このような機能を持つ RNA 分子はリボザイム [ribozyme] とよばれる。)をもたせることができる。このような RNA 分子の二面性をうまく連結させると1つの mRNA 分子で遺伝子スイッチを実現することができる。様々な機能を持ったRNA分子は、おおむね二重鎖領域(ステム)を単位とした部品として簡単に組み合わせることができるが、結合親和性や活性を調節するためには部品ごと作り直す必要があった。そこで、二種類の RNA 配列を連結させるときの工夫によって同じ部品から様々なスイッチを生み出す設計技術を開発した。

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References

5. Endo, K., et al.: Nature Communications, 4: 2393 (2013). Article (Open Access) | PUBMED | DOI

4. Endo, K., et al.: Nucleic Acids Research, 41 (13): e135 (2013). Article (Open Access) | PUBMED | DOI

1. 機能性 RNA 分子(= RNA アプタマー)の創出

RNA 分子もタンパク質と同様に特異的な立体構造をつくって機能を発揮することができる。とくに、特定の分子に特異的に結合する RNA 断片は RNA アプタマー [aptamer] とよばれ、SELEX という進化工学的手法で人工的に選別される。RNA アプタマーは、タンパク質ではなくて RNA でできたモノクローナル抗体のような分子だといえるだろう。RNA 研究を促進するツールの開発を意図して、相同性の高いタンパク質を識別するアプタマーを選別したり、低分子に結合するアプタマーの機能を解析してその応用を目指したりした。

Reference

1. Endo, K., and Nakamura, Y.: Analytical Biochemistry, 400 (1): 103–109 (2010). Article | PUBMED | DOI

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