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趣旨
第30回全国大会までの間、アジア企業の対外直接投資行動と産業集積の関連性を追求した報告は自由論題でも少なく、ましてや統一論題でも見かけない。
日本国内はもとよりアジア諸国においても産業政策を含む経済政策の舵取りに、産業の活性化は不可避であり、そのためには国内の企業に限らず、有力な外資企業にも研究開発投資や生産設備投資などを通じて経済成長に繋げていきたいという思惑は共通に働くに違いないからである。こうした点で、統一論題報告を通じてアジア経営学会から研究成果を世に知らしめるよう成果を発信していきたい。
理論的枠組みに沿った実証研究の面から具体的に注目すべきは、対外直接投資が及ぼす外資受入れ先国の産業連関への影響、および受入国の輸出競争力強化策ならびに外資優遇政策を絡めた産業競争力への波及効果ならびに雇用効果に他ならない。
以上の動因に鑑みて、「アジア企業の対外直接投資行動と産業集積」をアジア経営学会第31回全国大会の統一論題テーマとして提起する。
かかる統一論題セッションでは、理論的研究アプローチを異にする3名の正会員が登壇される。
第1に、J.H.Dunningが唱えた「国際生産の折衷論」をはじめとした「多国籍企業論」の応用が欠かせない。自社ならではの企業特殊的優位と受入国における立地特殊的優位の結合に内部化インセンティブがどう働くかは、在外子会社への出資比率のみならず、現地への技術移転度ひいては受入国における産業集積度にも影響をもたらすゆえ、要注目となる。企業内国際分業の実態解明にとどまらず、企業間国際分業の在り方への再検討にもつながるに違いない。
第2に、“Agglomeration” (集積)といった「経済活動の空間的集中」に関する空間経済学を包含する経済地理学からの理論的かつ実証的な研究手法が有用視される。実証研究という面では、最も効果的な成果が期待できるかもしれない。30年にわたるアジア経営学会全国大会の中で、経済地理学を問題解決アプローチに適用した報告は類例を見ないだけに、第2報告にも関心が集まるであろう。
第3に、Porter, M. らによる“Value Chain”アプローチを適用して、各国で示現される付加価値割合に応じた国際垂直分業の在り方を示唆する研究も有効視される。なぜなら、かかる概念フレーム枠を適用した研究は枚挙にいとまがない中、“Value Chain”アプローチの有効性についてケーススタディを通じて実証し得れば、研究の差異化が果たせるからである。
最後に、統一論題セッションでの報告順を決めるに際して、本大会に参加された方々に統一論題報告内容への理解をより深めて頂けるよう、分析単位が「マクロ」から「メゾ」を経て「ミクロ」へと推移するよう意図した次第である。