症状で判るのか?~HIV感染とエイズの発症

結論です。

HIVに感染したかどうかを、症状から判断することは出来ません。

HIV感染特有の症状と言うのは有りません。

感染の有無を知る方法は、ただひとつだけ~血液検査です。

インターネットでいくら相談しても、無駄です。

ただし、思い当たる行為の後に、以下のような症状が出たなら、勇気を出して検査することをお薦めします。

☆ 早い発見と、現在の医療技術・治療方法があれば、発病期に至らずに、生涯を終えることも、十分可能になっていますよ。

HIV感染には、4つの時期があります。

    1. 感染初期(急性感染期)
    2. 無症状期(無症候性感染期 )
    3. エイズ関連症候群(ARC期)
    4. 発症期(AIDS期)

エイズの発症とHIVの感染は違います。

感染初期+無症状期=HIVに感染しているが、エイズではない時期です。

エイズ関連症候群=エイズになる直前の時期です。

発症期=エイズになってしまった時です。

1.感染初期

急性感染期とも呼ばれます。

HIVに感染すると2~8週間の内に程度で、50~90%の人に何らかの症状が出現するとされています。

これは、ウイルスが体内で急激に増えるための一時的な反応です。

たいていの場合、症状は1~2週間の間に、収まります。

典型的な症状としては、インフルエンザ・風邪と同じような症状が出ます。

くどいようですが、他の病気の時にも多く出る症状のため、これらの症状からHIV感染を判断することはできません。

身体に現れる症状

    • 発熱(90%)=39度を超えることも稀ではないとされています。
    • リンパ節の腫脹(74%)=左右対称に発現します。
    • 咽頭炎・発疹(共に70%)=発疹は紅斑性丘疹が多く顔面・躯幹・手掌・足底などに出現します。
    • 筋肉痛・関節痛(54%)
    • 下痢・頭痛(32%)
    • 悪心・嘔吐(27%)
    • 肝脾腫(14%)
    • 口腔カンジダ症・神経症状(12%)

などが見られます。

☆ ( %)の数値は、HIV感染者の中で、その症状が現れた割合です。

ほとんどの症状は1~2週間で自然消失しますが、リンパ節の腫れと頭痛は持続することも少なくありません。

リンパ節の腫脹が起きた人の約1/3は、そのまま次の病期へと持ち越されます。

頭痛も断続的に、または、慢性化して持続することが少なくありません。

これは、HIVが脳膜へ感染した事が原因とされています。

また、HIV感染がある人の多くは他のSTD感染も合併していることが多いので、 その後に、クラミジア・淋病・梅毒・コンジローマなどが見つかった時は

もう一度、HIVの検査を受けたほうが良いでしょう。

神経に現れる症状

無菌性髄膜脳炎、末梢神経障害、顔面神経麻痺、上腕神経炎、認知障害などが見られます。

感染初期の検査の問題点

実は、検査をすることが、一番大切ですなのですが、検査時期の問題があります。

例えば、最短の組み合わせですと、感染から2週間で症状が出て、1週間で治まると、感染後の経過日数は3週間です。

この段階での検査をしても、まだ、HIV抗体が出来ておらず、検査結果が陰性になってしまいます。

その為、通常の風邪やインフルエンザ等と診断され、感染を発見できないままに症状が消失してしまうことが有ります。

そして、次に症状が出現するときは感染末期になってしまい治療が遅れる原因となります。

HIV検査に関しての詳細

2.無症状期(無症候性感染期 )

感染初期(急性感染期)の次の段階です。

ウイルスは徐々に増殖し身体の免疫機能を低下させていきます。

この時期ではまだ免疫機能も働いており、症状は何も出ていない状態です。

無症状の期間なので、HIVに感染しているか否かを、症状から予測するのは極めて困難で、周りの人も自分自身も感染に気付きません。

人によっては、先に述べた、リンパ節の腫脹や頭痛が続くこともあります。

この期間の長さは個人の持っている免疫力や、体質的な問題が関係しているとされています。

人により5~10年位ですが、はっきりとしたことは判明していません。

3.エイズ関連症候群(ARC期)

(ARC期=AIDS-Related Complex)はHIV感染の後期のことです。

HIVに感染し、症状のない時期を過ぎて、様々な軽い症状が出始めていますが、まだエイズと診断する疾患に至っていない時期のことを言ます。

発熱、体重減少、リンパ節の腫脹、下痢、倦怠感、寝汗、頭痛等が、1か月以上続きます。

AIDS期に近づくにつれ日和見感染として、カリニ肺炎・クリプトコッカス髄膜炎・ カンジダ症・単純ヘルペスウイルス・帯状ヘルペス・サイトメガロウイルス感染症・ 結核菌・トキソプラズマ症等が出現します。

発熱

38度以上の発熱が間欠的、持続的に認められます。

感染初期(急性期)の発熱と同様に、再度血液の中のHIV量が急上昇してくるためです。

また、日和見感染症や悪性腫瘍による発熱で起こることも多々あります。

細菌性の発熱の場合は抗生剤で軽快しますが、 ウイルス性の発熱の場合は、抗生剤が効かず、対症療法しか出来ないことが多くなります。

体重減少

高頻度に出現します。

通常時の体重の10%以上、または7kg以上の体重減少がこの時期の特徴になります。

リンパ節腫脹

ソケイ部以外の2つ以上の場所、主に頸部・腋下リンパ節に、直径1cmを超す腫脹が3ヶ月以上続いて検出できます。

特に腫脹が著しい場合は、カポジ肉腫や悪性リンパ腫を疑う必要があります。

下痢

HIVが腸管上皮細胞に感染したことに起因したものが多く、大腸菌等の病原菌が検出されないことが多くなります。

下痢が続くと、脱水・衰弱・悪液質へと進行し、予後不良に陥る可能性も高くなります。

全身倦怠感

最初は、午後から夕方にかけての倦怠感だったのが、 徐々に朝から夕方まで通しての倦怠感へと移っていきます。

寝汗

頻発する症状です。

大量の汗が出ることが多く、一度始まると二週間くらいは持続して起こり、 何度も繰り返すようになります。

寝汗は多くの場合、 発熱を併発していますので、解熱剤の使用による対処療法も可能です。

頭痛

初期の頃から慢性的に頭痛が続く場合と、日和見感染や悪性腫瘍が原因となって生じる場合があります。

4.エイズ発症

AIDS期と呼ばれます。

エイズ関連症候群(ARC期)の後、さらに免疫力が低下し、『CD4リンパ球』が200/ul以下になると、

健康な時には抑え込まれていた体内の細菌やカビ、寄生虫、ウイルスなどが病気を起こしたり、悪性腫瘍、神経症状等が見られるようになります。

厚生労働省はエイズ発症の特徴的症状として、23の疾患を挙げており、複数の合併症が重なることも多く治療が複雑になります。

日和見感染症と呼びます。

身体を病原体から守るしくみを、『免疫』と呼びます。

免疫とは「病気(疫)を免れる」という意味です。

血液中の白血球の一つであるリンパ球は、免疫に関して大きな役割を担っています。

中でも『CD4リンパ球』と呼ばれるものは、免疫の指令塔の役割を果たしています。

『CD4リンパ球』の正常値は700~1300/mm³です。

500/mm³以上あれば免疫能力の低下はほとんど無いとされています。

日和見感染が出現してからの治療では、手遅れの場合が多くなります。、

このため『CD4リンパ球』数が200/ulに至る前に、治療を開始することが推奨されています。

現在の日本のHIV感染者の30%が、感染確認時には、すでにエイズを発症してしまっています。

もう少し早く見つけていれば・・・

後悔しない為にも、ためらわずに検査を受けましょう。