淋病(淋菌感染症)
淋菌感染症(淋病)の特徴
淋菌感染症は、淋菌 (りんきん) の感染により起こる病気=感染症です。
40代、50代、60代の昭和世代には 淋病(りんびょう)と呼ぶほうが、馴染みが深いでしょう。
今は、性病も性感染症と呼ばれます。
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1回の性行為による淋菌感染症の感染伝達率は、30%程度と考えられています。
淋菌感染症にかかると、主に、
- 男性=尿道炎
- 女性=子宮頸管炎
を引き起こします。
近年では、性行動の多様化(オーラルセックス・同性愛:ホモセクシュアル等)を反映して、口腔内や咽頭や直腸感染などの性器外の感染例が増加しています。
淋菌とはどんな菌なの?
淋菌 (Neisseria gonorrhoeae)は
高温にも低温にも弱い細菌です。
炭酸ガス要求性であるため、通常の環境では生存することができません。
淋菌は、人の体以外では、存在できません。
したがって、性感染症として人から人へ感染するのが、主な感染経路となります。
淋病の『淋』の意味
淋病の『淋』は「淋しい」という意味ではなく、木々の葉からポタポタと雨がしたたり落ちる様子を表現したものです。
淋菌性尿道炎により、尿道から流れ出る膿を見て、精液が漏れ出す病気(精液漏)と呼ばれ、
gono=「精液」 、rhei=「流れる 」の意味の合成語gonorrhoeaeと命名されたそうです。
- 感染者との性行為(セックス)による、粘膜同士の接触や、精液、腟分泌液を介して感染します。
- オーラルセックス(フェラチオ・クンニリングス・リミング=肛門部への口舌愛撫)により、咽頭(のど)感染も増えています。
- 淋菌感染によりHIV 感染(エイズ)の確率が高まると報告されています。
- 気軽に風俗営業に携わったり、性病に対する認識不足の影響で20代の感染者数が最も多い性病です。
- 淋菌は弱い菌で、患者の粘膜から離れると数時間で感染性を失います。
- 日光による乾燥や温度の変化、消毒剤で簡単に死滅します。
- いわゆる、”エッチ”以外での感染はあまりありません。
- 感染率は約30%で、性器クラミジア感染症と同時感染している人が20%~30%いると言われています。
- 出産時に母子感染を起こす事もあります。
- 淋菌感染症は何度も再感染することがあります。
淋菌感染症の症状~男性
男性の場合、淋菌が主に感染するところは尿道です。
つまり、淋菌感染症では、尿道炎になることがほとんどです。
淋菌性尿道炎には、はっきりとした、自覚症状があります。
淋菌性の尿道炎の典型的な症状は、排尿痛と尿道からの分泌物(ぶんぴつぶつ)、亀頭部(きとうぶ)の発赤です。
排尿痛は強 く、分泌物は膿性(のうせい)です。
重症になると、精巣上体炎を発症します。
また、頻度は低いものの、淋菌の菌血症から全身性に拡散する、播種性淋菌感染症を引き起こす場合があります。
尿道を尿が通る間と、その直後だけ、尿道にヒリヒリした疼痛(とうつう)を感 じます。
激しい時には、飛び上がるか、目から星がでます。(苦笑)
感染しても症状が出ない人もいますが、治療せずに放っておくと、前立腺炎や血精液症になることもあります。
淋菌感染症の潜伏期間
淋菌が尿道に入り込み増殖して、尿道に炎症がおこるまでの期間を、潜伏期(せ んぷくき)と呼びます。
つまり、淋菌が体の中に入り込み、症状が発生するまでの期間のことが、潜伏期ですね。
淋菌の潜伏期間は、3~7日と短く、発症は急激です。
膿の状態
淋菌感染症の場合の膿は、多量で、尿道口(にょうどうこう)に付着しても、白色か黄色に見えます。
おしっこをして、一度は流れて無くなっても、1時間以内に外尿道口に再び出てきます。
男性の自覚症状・臨床症状
主な自覚症状
- 尿道からの(膿=うみ)の量は多く、
- 精子に似た白色や薄黄色で、粘り気があります。
- 排尿時や勃起時に激しい痛みがあり、
- どM(どえむ)の人でない限り、耐えられません。
- 尿道の痒み(かゆみ)や不快感
- 精巣上体(副睾丸)の腫れ=精巣上体炎
- 軽い発熱や痛み
女性の自覚症状・臨床症状
女性の場合は、子宮頸管 (子宮入口の管)から感染し、子宮頸管炎を起した後に腹腔内に進入し、骨盤内で様々な症状が出ます。
感染したまま放っておくと、卵管炎、骨盤腹膜炎、卵管不妊症、子宮外妊娠、慢性骨盤痛、不妊症の原因にもなります。
クラミジア感染症との重複感染も多く見られます。
女性の半数以上が自覚症状が無いと言われていて、腟分泌物が多少増加するという程度の場合も多く、単なる膀胱炎や膣炎と診断されることもあります。
女性の性器に潰瘍性病変またはびらんを呈する疾患としての淋菌感染症
感染後2~7日で、多くのものは、症状は軽いが、帯下が増加する。帯下は薄い、または膿性で、少し匂いを帯びる。
帯下のために外陰部に掻痒やびらんを生じ、疼痛を伴う。
稀に、排尿困難、下腹部痛がみられる
主な自覚症状
- おりものの増加
- 不正出血
- 下腹部の痛み
- 性交時の痛み
咽頭(のど)への感染(男女共)
オーラルセックス(フェラチオ・クンニリングス・リミング=肛門部への口舌愛撫)などによる、咽頭(のど)への淋菌感染が増えています。
咽頭炎、頸部リンパ節腫脹、慢性の扁桃腺炎になることもありますが、症状が出ない場合が多いようです。
主な症状
- 咽頭(のど)の腫れや痛み
- 発熱
目への感染(男女共)~淋菌性結膜炎
淋菌が直接目に入るか、または、感染している性器からの自家接種によって発症します。
通常は片眼性で、感染後12~ 48時間で発症するとされています。
症状としては、重篤な眼瞼浮腫に続く結膜浮腫と、大量の膿性浸出物などがみられます。
稀な合併症として、角膜の潰瘍や膿瘍、穿孔などのほか、全眼球炎や失明などがみられることがあります。
淋菌による眼感染症は、新生児に最も頻繁に起こりますが、予防として、1%硝酸銀、エリスロマイシン、テトラサイクリンの眼科用軟膏または点眼薬などが用いられます。
成人では、割合は少ないですが、重症の化膿性結膜炎を引き起こすことがあります。
直腸への感染~淋菌直腸感染
MSMや女性の肛門性交(アナルセックス)により淋菌が直腸粘膜に感染します。
多くの場合は無症状ですが、時に、肛門の掻痒感・不快感、肛門性交痛・下痢・血便・膿粘血便などが認められます。
MSM(Men who have Sex with Men)=男性間性交渉者(だんせいかんせいこうしょうしゃ)
検査の時期・タイミング~潜伏期間
淋菌感染症(淋病)の潜伏期間は、人によりますが3~10日位と比較的短く、
通常は、大体1 週間以内とされます。
潜伏期間(せんぷくきかん)とは、病原体に感染してから、体に症状が出るまでの期間のことです。
病原菌そのものを調べる検査=【抗原検査】なので、『思い当たる日』から、2~3日たっていれば検査できます。
知らない相手とのセックス等で不安になったら、迷わず検査しましょう。
検査の方法と医療機関の科目
男性=泌尿器科・性病科
初尿(出始めのおしっこ)で調べます。
女性=婦人科・性病科・(産婦人科)
膣分泌液(子宮頸管からの分泌物)で調べます。
咽頭感染=耳鼻咽喉科・性病科
咽頭周辺のぬぐい液で調べます。
検査費用
健康保険が使えない場合のおおよその金額は
診察料 3,000~5,000円
検査代 4,000円
保険が使えるなら、3割負担になりますね。
ところで性病検査に健康保険は使えるの?
治療の仕方と治療期間
近年は抗生物質の乱用から、高い耐性を持つ「淋菌」が増えていて、治療薬が限られています。
耐性菌に感染した場合は、治療が長期にわたる可能性があります。
- セフトリアキソン(ロセフィン)の静脈注射
- セフォジジム(ケニセフ、ノイセフ)の静脈注射
- スペクチノマイシン(トロビシン)の筋肉注射
- アジスロマイシン、ミノマイシン、ビブラマイシンの服薬(経口摂取)
淋病(淋菌感染症)のおすすめ治療薬~最適な効果の抗生物質は?
耐性菌
完全に治る前に、途中で薬を中止すると、病原菌が勢いを盛り返し、
完治どころか、耐性菌=(薬が効かない)菌を作ってしまうことがあります。