第4章 6.下水道事業特別会計
○平成21年度決算の概要
下水道事業では、下水道の管理に約12億円、建設費に約12億円、借金の利子の支払に11億円、元本の返済に18億円が使われています。
借金の返済が全体の半分以上を占めています。
日野市の借金についてはこちら。
歳入は使用料22億円、一般会計からの繰入が20億円、借金も7億円あります。
○下水道とは
図1 下水道特別会計 平成21年度決算
日野市で下水道を担当しているのは環境共生部の下水道課になります。でも下水道会計への一般会計からの繰出金は土木費(衛生費ではない。)。
下水道というと家庭から出た排水を処理することが目的というイメージがありますが、もうひとつ大事な役割として街に降った雨水を排水することがあります。
日野市の場合は、家庭や事務所や工場から出る汚れた水(汚水)を流す管と、雨水を排水する管が別に整備されています。このような方式を分流式といいます。
ちなみに東京都区部のように早くから整備されているところは汚水も雨水も一緒に流す合流式になっています。そのため、雨が降ると汚れたものが一気に川や海に流れ出すという問題があります。(ただし整備コストは安い。)
(わかりやすい説明はこちらのページ(和歌山市))
雨水はそのまま川に流すのですが、汚水はそのままでは川に流せないので水処理場で処理します。日野市内にも下水処理場(浅川水再生センター)がありますが、これは東京都が建設・運営しています。
図2のように日野市の下水道のうち下水処理場とそれにつながる幹線は東京都が整備、管理(日野市は負担金を支払う)、それ以外の部分を日野市が整備、管理しています。
汚水の処理に関する経費は原則として汚水を排出した人が負担(下水道料金)、雨水の処理に関する経費は公費(つまり利用するかどうかにかかわらず市民全体)で負担することとなっています。
図2 下水道の仕組み
ポイントのまとめ
○下水道には汚水と雨水がある。
○一部は東京都の管轄である(日野市は負担金を支払う)
○汚水は排出者負担、雨水はみんなで負担。
○下水道と財政
下水道事業は特別会計となっていることが多いですが、これらは総務省では「地方公営企業」として扱われています。
ここからは総務省の地方公営企業年鑑(平成20年度版)のデータにより、全国の状況を見ていきます。
平成20年度現在で下水道事業者は3687、なんと市町村の数の2倍ぐらいある。公営企業のうち40%を占め、最も数が多くなっています。これらの事業者で日本の下水道の処理の90%以上を行っています。
財政規模は合計で約6.8兆円、うち料金収入は1.46兆円。
下水道関係の企業債の残高は31.9兆円と地方公営企業全体の56%、国民一人当たりに直しても約25万円になります。また一般会計からの繰入も1.9兆円(うち赤字の補てんに1.3兆円、投資に5700億円)となっており、地方の財政に大きな影響を与える要素となっています。
○日野市の下水道事業
下水道事業の特別会計の各年度の収支については、決算書を参照ください。
債務の残高は、予算書(日野市は債務のページはHPにはありません。)又は財政状況等一覧表(総務省のこちらのページからリンクされています。)に記載されています。財政状況等一覧表はデータがまとまるのに時間がかかりますが、他の市との比較などもできるので便利。また普通会計からの繰入金額も記載されています。
まずは財政規模を見てみます。歳入には繰越金が入っていたりするので、歳出で見るのがよいでしょう。
平成16年度:56.1億円
平成17年度:53.2億円
平成18年度:56.1億円
平成19年度:54.8億円
平成20年度:61.6億円
平成21年度:52.9億円
おおよそ53~60億円程度で推移しています。
平成20年度が多いのは、金利の高い借入金を借り替えたため。
これまでは、繰り上げて返済するときは将来の金利分を含めて補償しなければなりませんでしたが、2~3年前から財政健全化計画の提出を条件に借り換えができることになっています。
ちなみに平成19年度末時点では金利が4%以上のものの残高が80億円、7%以上のものも1.8億円残っていました。
(残念ながら公開されていない情報に基づくものです。)
借入金の残高は平成20年度末現在約329億円。市民一人当たりにすると18.9万円。一般会計を含む借金約926億円の35%を占めています。
また一般会計からの繰入額は平成20年度で20.5億円。これも市民一人当たりにすると1.1万円となります。
昭和の年代にほぼ下水道整備が終わっている市がある一方、日野市は下水道整備が遅れていました。
図3をみると、現在は90%ぐらいの普及率となっていますが、普及率の上昇に合わせて下水道債が急増した様子がわかります。
○平成21年度の下水道事業特別会計の決算詳細
○下水道とは? の項で汚水は利用者負担、雨水はみんなで負担~つまり一般会計からの負担ということを説明しました。とはいえ、特別会計の決算書では汚水と雨水は分かれていません。
国(総務省?)は、維持管理費は70%が汚水、30%雨水。建設費は70%が雨水、30%が汚水という想定で地方財政計画を作ったり、地方交付税の交付基準を決めているようです。
実際はかなり違うようなので、総務省で見直しが行われているよう。
さて日野市の下水道には何にお金がかかっているのか。
どこからお金を調達しているのか見てみましょう。 まずは歳入から。
使用料:21.82億円
国から3.99億円 都から0.20億円
~国や都からのお金はあまり入っていない。
一般会計からの繰入金 19.85億円
市債(借金)6.90億円
歳出
人件費 一般職12名分 11.25億円
(昨年比2名減)
消費税 0.61億円
~ 使用料に消費税が含まれているようです。
21.82億円の5%は約1億円ですが、支払っている消費税が0.4億円あるのでその差額の0.6億円がこの消費税ということと思われます。
下水料金の収集(汚水分) 2.19億円
維持費
うち市が持っている管の管理(汚水雨水とも)0.81億円
都の部分の管理に6.89億円(全て汚水関係)
~ 要は下水処理場に多額のお金がかかっているということ。
建設費(雨水・汚水とも) 市の部分10.48億円
都の部分1.67億円
公債費 元本の返済17.93億円
利子の支払11.07億円
(借金の残高が330億円ぐらいなので平均の利率は3.3%ぐらい)
これを見ると維持費のほとんどが汚水関係に使われていることがわかります。都への負担金が高いと思いますが、38円/立米と決まっているそうです。
一般会計からの19.85億円は(維持費の30%+建設費の70%)になっているかどうかは、人件費の配分が不明なのと、建設費がどの部分をさすか(その年の建設費か、公債費(過去の建設費の負担分)か)が不明なので決算書からは確認ができませんでした。
ところで、なぜ確認しようとしたのか?ということですが、
「汚水は利用者負担」となっているがその原則どおりになっているか、ということ。そうでないと、下水道を利用していない人が実は負担しているということになるからです。
汚水の処理をすることで、河川がきれいになり、利用していない人にも利益が生じますが、それは市民の納得の上に行われるべきもの。現状ではその検証もできないということになります。少なくとも決算書上では。
○他の市との比較(平成20年度決算に基づく)
平成20年度決算に基づき周辺の市町村と比較をしてみました。
①財政状況等一覧表等
下水道債の残高(カッコ内は一人当たり)平成19年度末現在
日野市 348.65億円(20.2万円)
八王子市1133.83億円(20.8万円)
立川市 266.75億円(15.4万円)
府中市 76.44億円(3.2万円)
昭島市 94.91億円(8.6万円)
多摩市 37.57億円(2.6万円)
国立市 165.86億円(22.8万円)
大きく分けて日野市・八王子市・国立市といった残高が多いグループと府中や多摩のような残高が低いグループ(立川はどちらか微妙)に分かれそうです。
その理由としては、平成4年と平成19年の普及率を比較すると
多いグループ
日野市52% →92%
八王子市50% → 99%
国立市92% → 100%
と国立以外は最近下水道の普及(建設)が進んだことがわかる。
少ないグループ
立川市98% →100%
府中市100%→100%
昭島市94% →100%
多摩市98% →100%
と早期に下水道の普及が進んでいたことがわかる。
と傾向が見えてきます。
国立市だけが普及が早かったのに債務の残高が多い理由は不明です。
ちなみに全国平均は25万円となっており、いかに東京以外の下水道事業の財政が苦しいかわかります。
②下水道経営指標のファイルから。
使用料単価(立米あたり)
日野市 130.48円
八王子市 122.08円
立川市 141.18円
府中市 77.25円
昭島市 125円
多摩市 144.24円
国立市 121.88円
汚水処理原価(立米あたり)カッコ内そのうち維持管理
日野市 154.05円(63.24)
八王子市 109.15円(60.60)
立川市 142.90円(57.37)
府中市 69.69円(53.15)
昭島市 124.99円(54.5)
多摩市 113.20円(79.02)
国立市 142.08円(63.49)
日野市は汚水処理原価が高いのがわかります。その主な原因は維持管理費以外(つまり整備費?)の費用がかかっているからと思われます。
使用料の単価が安いところは、原価も安い傾向にあります。(汚水は使用者負担の原則からすると当然)逆に日野市、立川市、国立市では汚水の処理料により係る費用がまかなえていないことになります。立川市はほぼ同じですが、日野と国立がその差が多いのが気になります。