サイエンスアゴラ2012出展報告「世界を支える光合成 ~植物のチカラを感じてみよう~」

2012年11月10-11日にかけて開催されたサイエンスアゴラ2012に「世界を支える光合成 〜植物のチカラを感じてみよう〜」を出展しました。常時出展ということもあり、お客さんが常にきてくださり、大変賑わったブースとなりました。また、私達の企画が、サイエンスアゴラ賞を受賞しました(http://www.scienceagora.org/scienceagora/agora2012/program/award.html

開催報告:ポスター、光合成生物の展示、観察、動画、実験を通じて、来場者の皆様と対話的交流を行いました。

ポスター:小冊子「光合成ってなんだろう? 〜光と植物の不思議〜」の各ページをA0サイズのポスターで掲示し、訪れた参加者に光合成の基礎や応用研究への展開を解説した。参加者のなかには普段から光合成に興味を持ち、自分なりの意見や疑問をもっている方も多かった。そのような方々、ひとりひとりの質問や要望にリアルタイムで応えていくことで、お互いの理解や今後の光合成研究の在り方を考える良い機会が得られた。

光合成生物の展示・観察:高等植物であるシロイヌナズナをはじめ、ほぼ全ての分類群を網羅した20種の藻類、様々な色の光合成細菌を展示した。微細藻については光学顕微鏡を用意し、スピルリナの螺旋やユーグレナのすじりもじり運動、珪藻の殻などを観察してもらった。なかでも様々な珪藻の殻を並べて作ったミクロのクリスマスツリーに感動する参加者が多かった。緑色だけではない光合成生物のカラフルさや多様な形態を実感してもらうことで、色素の多様化や多段階の細胞内共生という複雑な光合成生物の進化の面白さを参加者に伝えることができた。

動画:光化学系I、II、シトクロムb6f複合体、FoF1-ATP合成酵素の結晶構造を解説した動画を作成し、大型のスクリーンに映し出すことで、訪れた参加者に光合成装置の精巧さや複雑さを解説した。また、最新のトピックである光化学系IIの結晶構造解析の成果をアピールし、光合成研究の面白さや難しさを伝えた。多くの参加者が構造の美しさとその解明までの長い道程に感動してくださった。また、応用研究に期待される方も多かった。

実験:光合成と色の密接な関係について、直感的に感じることができるデモ実験を行った。カラフルな色素や光源が目に止まり、多くの参加者が実験に参加してくださった。実験自体の面白さと詳しい解説で、多くの年代の参加者に光合成に自然に興味をもってもらうことができたと感じる。

1. 薄層クロマトグラフィーによる光合成色素の分離

ホウレンソウの葉緑体やスピルリナ、クロレラなどを用意し、シリカゲルの薄層をつかったクロマトグラフィーを体験してもらった。わずか数分の間に様々な色素が分離していく様に、小さな子供だけでなく、年配の方もじっと見入るのが印象的だった。

2. 水草の二酸化炭素吸収による作用スペクトルの可視化

オオカナダモに単色LEDで光照射し、二酸化炭素の発生をpH指示薬によって可視化した。多色のLED光源を使い、赤色の光でもっとも光合成活性が高くなり、緑色のクロロフィル色素が光合成を駆動していることを感じてもらった。

3. 色素タンパク質の光照射実験

同じフィコビリン色素を結合しているフィコシアニンとシアノバクテリオクロムに赤色光を照射し、蛍光や光変換を見てもらうことで両者の構造や機能の違いを感じてもらった。シアノバクテリオクロムの色が一瞬の光照射で変わることに多くの参加者が驚き、集光装置の多様性や光受容の重要性を伝える良いきっかけになった。

日時:2012年11月10日〜11日 10時〜17時

場所:日本科学未来館 1階

小間番号:Aa-010

出展タイトル:世界を支える光合成 〜植物のチカラを感じてみよう〜

企画紹介:

緑の植物は、“光合成”によって太陽の光を私たちが生きていくためのエネルギーに変えてくれる、言わば縁の下の力持ちです。次世代エネルギーとしても期待される光合成を、映像や実験を通じて紹介します。

企画内容:

光合成と聞くと、皆さんはどんなものを思い浮かべますか?きっと、太陽の光を浴びた緑の葉っぱが、二酸化炭素を吸収して酸素を放出する姿を思い浮かべるでしょう。でも実は、世の中には、緑色ではなかったり、二酸化炭素を吸収しなかったり、酸素を放出しない光合成生物も存在します。このような多様な光合成生物たちは地球上の至る所に住んでいて、太陽の光を利用して私たちが生きていくための環境を作り、必要なエネルギーのほぼ全てを供給してくれています。最近では、光合成は再生可能な次世代のエネルギー源としても注目され、光合成は近い将来、私たちの生活を支える「大黒柱」としても活躍してくれるかもしれません。

それだけ大事な光合成ですが、たくさんの化学反応が複雑に組み合わさっていて、その実体を理解するのはなかなか困難です。光合成のしくみを解明し、また将来へとつなげていくために、日々研究が進められています。本企画では、最先端の光合成研究をしている研究者が、パネル、映像、実験、観察を通じて、光合成を分かりやすく説明します。是非、「植物のチカラ」とそれに携わる「研究者のチカラ」を直に感じてください!

[パネル]

光合成の仕組み、光合成と地球環境との関わり、光合成の応用利用などについて、パネル展示し、研究者が分かりやすく解説します。

[映像]

光合成を行う装置は、その働きによって様々な「かたち(構造)」をしています。タンパク質の構造からたくさんの情報が得られ、光合成の理解や応用研究にも役立ちます。その「かたち」をキレイな映像で魅せます。

[実験]

光合成に関わる色素や光合成による酸素発生、二酸化炭素吸収について、直感的に理解できるデモ実験を行います。

[観察]

多様な光合成生物を顕微鏡により、直接観察してもらい、また、それらの生物がどんか環境に生育しているのか解説することで、光合成を身近に感じてもらいます。