『満洲国』建国大学に於ける武道教育の研究(Oct 13, 2009記)

投稿日: Apr 06, 2011 5:1:49 AM

私は2003年7月に『満洲国』建国大学に於ける武道教育の研究をその開始15年目にして終えました。建国大学 (1938-1945) は中国東北部にあった「満洲国」の最高学府であり、そこで は日本・中国・蒙古・台湾・朝鮮・白系ロシアの各民族に対して7つの日本武道(剣道・柔道・ 合気武道・弓道・角力・銃剣道、騎道)が教育されました。私はそれらの教育実態を詳細に調べ、日本武道の教育力について考察するなかで指導者や日本人の他 者感覚の欠如について言及 しました。これは一つの文化がその文化をになう人々によって、異文化の民族に意図的に伝達 されるときに配慮すべき、重要な教訓であったと私は考えたのですが、国際化時代の今日その必要性は益々大きくなっていると思います。

この研究をまとめた本が、『武道の教育力:満洲国・建国大学における武道教育』と題され て、2005年3月に日本図書センターから刊行されました(2009.5月現在品切れです)。ちょっと長いのですが図書館などでご一読いただければ幸いです。

もうだいぶ前になりますが、元の論文完成後の2003年8月から翌年5月までの春・秋のセメスターを、 ニューヨークのヴァッサー・カレッジで過ごし、 三ヶ月間イタリア、スイス、スペインを訪問する機会に恵まれました。興味深いことにそこで 出会った異民族武道家は日本人以上に日本人的な礼法を行う一方で、日本人としての社会的常 識が理解できない側面をもち、礼法の指導一つをめぐっても武道のあり方は相対的であり、答の出しにくい難問と感じながら帰国しました。この問題について考察するのも、現在の問題関心の一つです。