0. コンバージョンとは
[コンバージョン]とは用途変更(用途転用)を伴う改修のことをいい、古くなった建物の美装や修繕を目的とする[リフォーム]や性能を高め、新たな価値づけを目的として行う[リノベーション]に比して、社会資源の有効的利用、対象物件の広がり(より多くの物件を改修案件として射程化すること)という点において今後ますます注目されている。
[リフォーム]
事例;Y/h+
用途、間取りは同じで、仕上げなどを一新させる改修
※ただし、2階建戸建て住宅を3階増築とした本改修において、当初、光や風の取り入れを目的として導入したコート(外部空間)の一角に3階アクセス用のエレベータの設置などリノベーション要素(新たな価値の付与)を含む
[リノベーション]
事例;産科・婦人科ミナミクリニック相談室等
用途は同一で、新たな価値づけを目的とした改修
※当初、託児室として利用していたがその役割を終えたことから、産婦人科クリニックの新たな取組みとなる「産前ケア相談室」の新設を目的とした改修
※写真は相談室前待合コーナー
[コンバージョン]
事例;塩倉税理士事務所
住居から事務所への用途変更を伴う改修
※プライベート空間から不特定多数の利用への変更となることから、美装に留まらず、機能的見直しが必要となり、かつ事業者のブランディングの表徴性が期待される
1. 時代背景
新築の建設費は、この10年間で約1.4倍近くに高騰した。(※)資材価格の上昇に加え、深刻な人手不足が拍車をかけ、新築に依る事業化がイニシャルコストの増大を招き、事業採算性に重い影を落としている。「スクラップアンドビルド(古くなったら建て替える)」ことが当たり前だった時代から、既存の建物を活かす選択肢によって、コストと時間の両面で現実的な解となる時代へと移り変わっている。
同時に、人口減少と業態の変化により、使われなくなった建物—空き店舗、廃業した施設、空き家—が全国に数多く存在している。これらを取り壊すのではなく、新しい用途として活かすことは、経済合理性だけでなく、持続可能な社会の実現に向けた「社会資源の利用、解体・廃棄に伴う二酸化炭素排出量の削減」という観点からも要請されている。
こうした流れを後押ししているのが、法整備の改定である。2019年の建築基準法改正により、用途変更にともなう建築確認申請が不要となる規模が、床面積100㎡以下から200㎡以下へと引き上げられたことでコンバージョンへの取り組みが推し進められている。国土交通省の調査によれば、現存する建物の9割以上が200㎡未満とされており、これにより多くの既存建物が用途変更の対象範囲が広がることとなった。
一方、確認申請が不要になったことは法不適合建築の許容を意味しない。むしろ検査済証のない建築の適合性評価を行い適切な修繕を行うことで、安全・安心な建築への再整備こそが防災面および人の健康に配慮した建築へ生まれ変わらせることをもう一つの命題としている。
※建設物価調査会・建築費指数、2015年=100→2025年時点で約140〜143
2. 実例[紳士服量販店(その後スーパーとして改装)から歯科診療所へのコンバージョン]
子ども歯科クリニックワハハ
Before→Process→After
Before
Process
After
3. コンバージョンの応用
まずはコンバージョンの資源となる既存建築を適切に評価することからはじめる。
既存建築の立地状況、周辺環境といった外的要因評価にはじまり、広さ、容積、築年数などの建物個別評価、用途変更改修に関する法的検証および安全に利用するための構造検証など多岐にわたる。既存建築が検査済証の未取得であるケースも多く、事前調査によって「既存不適合建物(その建物が建った時の法令に遵守した状態の建物)」とすることがすべてのスタートとなる。
そして最も大きな検討のひとつが「既存建築が用途変更改修によって新たにうまれる建築へのイメージおよび利用像」となる。コンバージョンをはじめる時点では元の用途の姿をしてそこにある。先の事例でいうと、スーパーの残像を残して現前にあり、その状態をみて「子どもたちで賑わう子ども歯科クリニック」の様子をイメージしていくことになる。
コンバージョンを制限と捉えてはならない。新築であっても敷地や法規などの要件を読み解き進めていくように、コンバージョンにあっても既存建築を要件として捉え、むしろ要件を新たな建築へ向かう補助線として利用しながら計画を進めていく必要がある。既存建築が生んできた物語りを受け継ぐように、まさに(短歌でいうところの)連歌、付け合いのように計画を進めていくこと自体が社会や時代への望ましい応答であり、結果、近隣に温かく受け入れられるための手法となる。
そうした既存建築の再利用というコンバージョンの取り組みは、事業者の持続可能な社会実現に向けた取り組みとして社会に発信されることで強力で良質なブランディングとなるだろう。そして何より、(新築ではなく)コンバージョンによる最大の魅力はイニシャルコストの低減に他ならず、事例として挙げたスーパーから子ども歯科クリニックへのコンバージョンにおいて、新築で建てた場合のイニシャルコストに比して6割程度に収まったという事実こそが新築建築に対する大きなアドヴァンテージとなることの何よりの証左である。
事業者のみなさま
新築ではなくコンバージョンによって事業を進めていく方向性を上記で示しました。
進めたい事業に適した既存建築を見つけ、あるいは不動産業者に呈示してもらいその中から選定していく。それらがコンバージョンを進めていく端緒となります。
このコンバージョンに依る事業化は特に医療および社会福祉の領域においてより親和性が高いと考えています。医療も社会福祉もそこで営まれるアクティビティは「施設」ではなく「家」を初源とした場所が相応しいと考えることが理由です。
もはや空き家率は14%に迫る勢いであり、社宅、寮、空き店舗なども社会情勢の変化を依拠とし増加傾向にある。すなわちコンバージョンの資源となる既存建築が次の活躍を待っている状況にあるということでもあります。
一方、事例として挙げたスーパーから歯科クリニックへのコンバージョンのように、想像を膨らませることにより思いがけないコンバージョンに依る変身が達成される可能性があり、もっとも理想的なコンバージョンの取り組みとは、「すでに自身の所有する建物を事業内容の更新や社会情勢や時代的要請への応答、継承に係る機会」を目的としてコンバージョンを行い刷新させるという取組みにあります。
いまの施設がどのように変わるのか。既存建築のコンバージョンによって求める事業を進められるか、など様々な疑問や不安などがあると思いますが、その時にはぜひお声がけください。事業化に向けた調査、提案を行うとともに、まずは現状のお悩みや進むべき方向性を丁寧にお聞きしながらあり得べき姿の提示いたします。
2026年7月
株式会社和田吉貴建築事務所
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