ことばと算数 その間違いにはワケがある


「かける数とかけられる数、どっちがどっち?」「マイナスのマイナスは…とってもマイナス?」──混乱するのは子どもだけとは限らない。ことばのしくみに原因があることも。『ちいさい言語学者の冒険』で子どもの言語習得の旅を案内した言語学者が、小学生の宿題やテストの間違いを通して、意外に深いことばと算数の関係にせまる。

算数つまずき界の女王と貴公子が恥を忍んで、じゃなくて、満を持してお送りするっ!家庭内検閲においての心証をよくするため、まえがき冒頭はあえてワタクシ自身のトホホエピソードです。

第1章 カッコつけるのやめたら

カッコつけてくれ/迷子になったサッカー選手?/迷子はどっちか、私たちはどうやって決めているのか/数式と言語の似ているところ/数式と言語の階層構造は頭のなかで共通している?/かけ算より引き算を先にやる人たち?/計算順序は絶対か/分配法則と、嵐・結婚/言葉と算数の微妙な関係


第2章 どっちから見る?

そのくまどのくま?/記号としてのくま、実体としてのくま/正しい答えで悪いか/はくちょうは、とんで行くのか来るのか/「正しい答え」のダイクシス/で、くまはどのくま?


第3章  正三角形は二等辺三角形に

入るんですか問題正三角形は二等辺三角形にあらず/聞いたこともないのに共有しているルール/someと言ったらallではない/推論する子供たち/正三角形も二等辺三角形だってどうして最初から教えないの?/ニャンコだったらワンワンじゃないの


第4章 1+1 って言ってみて!

声に出して読む数式──かけるぞ! 4と2/カッコつけなくていいんだよ/日本語で読める数式/2つの目的語に交換法則は成り立つか/カッコ不要の代償/始まりがわからないのか終わりがわからないのか/分数の読み方


第5章 かける数とかけられる数は同じだった?

算数でもなく、日本語理解力でもなく、日本語自体の問題/かけ算の順序問題はおいといて/かける数であり、かけられる数でもある……そんなのアリ?/片方を尋ねる疑問文を作ってみるとあら大変/かけるシロップ、かけられるシロップ/略しても、好きな人/回避する工夫?/むしろ言葉に鋭い子ほどドツボにはまる?


第6章  マイナスを引くと……とってもマイナス?

マイナスの数を引いたら足し算になるっておかしいじゃん!/二重否定──肯定を強調? 否定を強調?/マイナスのマイナスはもっとマイナス、が自然だった?/再帰性──反対の反対なのだ/人間の証明としての再帰性と、その獲得


第7章 ジブンデ。ミツケル。

その間違いに理由はあるのか/少ない例からいかに学ぶか/過剰に一般化──ネコも車もワンワンみたいな/過剰に特殊化──ワンワンは隣のポチ限定/そして旅はつづく