主要研究成果

プラットフォームエコシステムの持続的発展シミュレーション

宅配クライシス解決のためのエコシステム戦略の効果検証

宅配クライシスといった社会問題が語られている日本のECプラットフォーム市場に対して、近年経営学分野で研究されはじめているエコシステム戦略を適用すると、市場の持続可能性がどの程度保たれるかをシミュレーションした研究です。結果として、(シミュレーション設定範囲において)提案したエコシステム戦略の導入は宅配クライシスの発生を遅らせるだけでなく、約1.1倍のプラットフォームユーザーの増加を可能とし、最大で1.2倍の物流企業の収益増加が見込まれることが示されました。

本成果は、国際的学術誌Sustainabilityに掲載されています。《論文詳細リンク

宿泊予約プラットフォームのエコシステムが持続可能となる市場条件の検証

宿泊予約プラットフォームは宿泊市場にとってもはや欠かせないものになっていますが、その仲介手数料は宿泊事業者に負担をかけているとされています。本研究はこのような現状に着目し、プラットフォーム手数料によるマイナスがプラットフォームの仲介機能によるプラスによって十分打ち消され、市場全体が発展しつつも持続可能になる市場条件を検証しました。結果として、サービスの購買が任意である(出張者のように必須ではない)消費者をターゲットにし、それらをポイント等のインセンティブで勧誘する手段が、プラットフォーム市場の発展と持続可能性を両立させることを可能にすることが示されました。

本成果は、国際的学術誌Sustainabilityに掲載されています。《論文詳細リンク

プラットフォームエコシステムのモデリング・データ解析

プラットフォームエコシステムの共進化メカニズムの理論化と分析

ビデオゲーム市場を例としたプラットフォームエコシステムでは、これまでプラットフォーム間(エコシステム間)での競争的観点が主に着目されてきておりました。本研究は逆に共生的(共進化的)観点に着目し、その存在や発生メカニズムを明らかにすることを目指しました。結果として、使用した日本のビデオゲーム市場においては、競争的状況と同等以上に共進化的状況が抽出されました。またその状況を誘発する、いくつかの指標を示しました。

本成果は、国際的学術誌Sustainabilityに掲載されています。《論文詳細リンク

ゲームプラットフォームWiiの早期衰退要因の分析

ゲームプラットフォームWiiは非常に多くの販売台数を達成し、世界的に成功したプラットフォームとされています。販売台数だけを見るとそうですが、エコシステムの持続性の点では、プレイステーションやXboxといった競合するプラットフォームと比較して、早期に衰退してしまったことが分かります。本研究はデータ分析を通して、ソフトウェア提供会社にとってのハードウェア販売台数からの魅力度の低下、サードパーティによる新規ハードウェア技術適応の失敗、消費者セグメントの偏りから、この早期衰退メカニズムを説明しました。

本成果は、国際的学術誌Technological Forecasting and Social Changeに掲載されています。《論文詳細リンク

ゲームプラットフォームNintendo DSの早期衰退要因の分析

ゲームプラットフォームWiiと同様に、Nintendo DSは世界的に大きな成功をもたらしたことは疑いようがありません。しかしこのプラットフォームのエコシステムもまた、競合であったPlayStation Portable (PSP)等と比べても、早期に衰退してしまった点に、本研究は着目しました。DSとPSPの比較データ分析の結果、DSの衰退要因は急速な市場の成長が過剰な成長を呼び、消費者の購買キャパシティ以上のソフトウェア企業を誘引してしまったことが示唆されました。また競争激化によるソフトウェア企業の撤退が幅広いジャンルで生じてしまったため、エコシステムの中期・後期に発展するはずのジャンルの発展が阻害されてしまい、早期に衰退してしまったことが示唆されました。

本成果は、国際的学術誌International Journal of Innovation Managementに掲載されています。《論文詳細リンク