あれこれ
更新日時:2025年9月16日
※ すべて個人の感想です
更新日時:2025年9月16日
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高校数学と大学数学の違いの一考察
高校数学と大学数学は別世界,多くの大学数学を学んだ方は一度は思うことかもしれない.別世界である理由の1つに「厳密性・抽象性の追究」があるように思える.極限を例にしてみれば,高校では「限りなく近づく」という言葉をうまく用いて「lim」を持ち出し,その計算に習熟することに注力する.しかし,大学に入学すると「限りなく近づく」とは非常に曖昧でその定義では充分に証明できない事実や現実にぶつかり,厳密な「lim」の定義としてイプシロンデルタ論法に出会うことになる.高校まで計算できていることを改めて再構築するわけだから,なんとなくわかっていることを厳密に記述するために抽象化するがゆえに,別世界のような思いになるのかもしれない.しかも定義を厳密にした後で行う計算は高校と変わらないわけだから余計に厳密化への抵抗が生まれてしまう.幸いなことに,自分の場合は付属校出身でエスカレーターで大学に進学したため,数学科に進学する前から大学の数学について調べていたこともあり,覚悟があったように思える.難しいことを難しいと受け入れ,なんとか理解しようと試行錯誤した時代があったからこそ大学の数学を楽しめる自分がいるし,大学数学を教える上でも意識していることなのかもしれない.大学数学に出会ってその深淵さを絶望と捉えるか,はたまた学びの無限さに希望と魅力を見出せるか?
数学を学ぶとは覚悟を持つこと!?:大学に入学して味わった最初の衝撃
大学の数学科に入学して最初に受けた衝撃は今でも忘れることはないし,きっといつまでも語り継ぎたいと思っている.大学入学式のあと,当時の数学科の新入生は別室に集められて新入生歓迎のイベントがあった.そこである教授の先生から「全員卒業できるなんて思うなよ」というニュアンス(私だけの受け止めかもしれないが)で「この部屋にいる新入生全員が4年後の卒業式に揃うことはない.卒業率は6割くらいだろう」という衝撃の事実を知った.大学は入学すれば卒業できると思っていた自分は自然と背筋が伸びたし,入学して浮かれていた新入生のいる部屋は静まり返っていたのは鮮明に覚えている.そしてその教授は「留年や落第する人の特徴は1年次の前期にバイトやサークルを楽しみ学習する習慣が身につかなかった」と説明があり,大学数学と真剣に向き合わないと理解できないし,最初で理解できないと次の科目も理解できないという負のスパイラルにおちいるから留年するのだろうと自分なりに事実を飲み込むことにした.確かに卒業してみれば,その教授のおっしゃる通りの事実に近かったと思う.なんとなく大学1年生のときからちゃんと学習している人と単位が取れればいいやという人では4年生のときの実力は雲泥の差のようにも思える.大学に入学してすぐに味わった衝撃は自分の中で「ちゃんとやらないとヤバイ」と思わせてくれたことだったし,今の自分がいるのはあの衝撃をきちんと受け止めたからかもしれない.自分が1年次の講義を担当するときにはこの衝撃の話を(かなりオブラートに包んで)するようにしている.
数学を学ぶとは自分の中に数学世界を再構築すること
大学の数学の勉強法はどうしたらいいのか?よく聞かれる.とても答え方に難しい質問である.私は大学の数学とは純粋な真理という絶対的な正しさを自分に刻み込むことだと思う.もう少し詳しく言えば「数学世界を自分の力で再構築すること」だろう.ではそのためにどのような学習が必要なのか?私の場合,予習はあまりしなかったように思える.講義の前にノートを振り返り前回の内容を思い出す程度にしていた.そして講義のときには黒板に書かれたことだけをノートにとるのではなく黒板に書かれていないこともメモを取るようにしていた.もちろんノートを綺麗に書くことと100%の理解は諦めていた.講義を受けているときは理論のストーリーの断片を理解すれば充分と考え,ストーリーを把握することに注力していたように思える.自分の中では復習を重要視しており,授業のメモや教科書・参考書をもとにして改めてノートにまとめ直し,1行1行の式変形を追い,理論展開を追い,自分に対して「なぜ」と問いかけ,それに答えながらノートを作っていた.おそらく,これが自分の中に数学世界を再構築することのような気がする.教員になってしまった今でも新しいことを学ぶときは「なぜ」と問いかけながら,複数のテキストや参考書を広げながら,自分だけのノートを再構成し新しいことを吸収しようとしている.
参考文献:後藤四郎「大学で数学を学ぶ上で知っておいて欲しいこと」,数学セミナー編集部「数学ガイダンス2017」,日本評論社,
数学の講義をするようになって
博士学位を取得してから教壇に立つ経験をさせていただいている.自分としてはもともと中学高校の教員志望だったこともあり,講義は好きである.数学の講義を担当していて数学系のクラスではないクラスを担当するときに常に思っていることがある.それは「これ以上数学を嫌いにならないで欲しい」である.数学は嫌いな科目のトップに君臨することはいうまでもない.なぜ嫌いになるのであろうか?それはテストの点数が大きな要因だろう.数学は解けない,わからないが顕著に現れる科目であるから.逆に言えば,解ければ嫌いにはならない.解けるようになるまでには繰り返しの反復練習と計算練習が必要である.色々なジレンマや葛藤を抱えているが,今のところ私はこれ以上数学を嫌いにならないで欲しいということを軸にして講義をしている.具体的にどうしているかはここには受講してみてのお楽しみということにしておこう.この軸を持っている最大の理由は数学系ではないクラスの履修者にとって私の講義が人生最後の数学になるかもしれないからだ.学生に媚を売ったり人気をとろうとは決して思っていないが,人生最後の数学,少なくとも悪い思い出では終わって欲しくない.そう思って講義をしている.どこまで実現できているかは問わないで欲しい.
大学1年次の講義での...
大学1年次の講義(数理系ではない学科の基礎数学科目)では,初回に次のような話をする.
大学生活 = 自由 → 責任が伴う
学習 = 「受け身な学習から,自発的な学習」になっていかないといけない
勉強(そして研究へ),アルバイト,サークル,趣味,遊び,時間の管理や両立が難しい.
タイムマネジメントを意識して,有意義な大学生活を送ってほしい.
以下では,大学数学について簡単に私なりの考え方を説明します.
大学の数学とは
・大学の数学 = 数学の真理を自身で追体験し,自身で数学世界を構築すること
高校数学(受験数学)で学んだことを軸としつつも,真の数学論理を追究
・大学の微積分の2つの基本姿勢
(1)公理体系から出発して,論理を積み重ね,微積分学の理論体系を俯瞰する
(2)自然科学における理学・工学での応用に耐えられる微積分学の理論体系を概観する
本講義では,(2)をベースにして,今後の理学・工学を学ぶ上での必要な微積分学を講義.
・本講義での基本姿勢
「微積分学の厳密な証明は概観しつつも,応用面に特化」
「微積分学の展開をストーリーとして定理の積み重ねであることを知り,使えるように」
・勉強の仕方
受験数学の時は多くの問題を解き,多くの解法を知ることが重要だったかもしれません.
しかし,本講義ではそのような勉強法から脱却し,
「理論展開やストーリー展開を追体験して,その理解を支える演習を解けるように」
「演習問題はあくまでも理論体系やストーリー展開を確認するためのもの」
「量を解くのではなく本質的な問題を繰り返し解き,何も見ずにスラスラ解けるように」
・本講義での勉強の仕方の理想形(市田の大学数学の勉強法)
(実際,科目数も多いし,アルバイトやサークルがあるとなかなか難しい…)
Step1:(余裕があれば)講義の前に講義ノートをさらっと目を通しておく
→ 「こんなこと学ぶのか」と思っておくだけで良い.
(実際,科目数が1年次は多いので本科目では復習重視)
Step2:講義に出席して,ノートを取る.きれいなノートを作ろうと思わず,メモもとる
Step3:講義後,講義ノートや教科書を参考に,清書のノートを作りつつ,演習も解く
Step4:次の講義までに講義ノートや教科書の該当箇所の演習問題を繰り返し解く
Step5:(もっと頑張れるときは)図書館で本を探し,自身のノートにないところを加筆
このStepを繰り返していくと,自分だけの完全なる教科書が出来上がります.
日々の大学生活の中で,自分なりの勉強法を工夫して編み出してください.
大学の先生って?
「私は大学で数学を教え,数学の研究をしています」というと多くの人にどんな仕事なのか想像できないと言われる.確かに.数学の研究をしている人は大学の先生に限ったわけではもちろんないが,ここでは大学の先生の職業についてフォーカスしてみたい.私が大学生のとき大学の先生は講義の時間以外何をしているのだろうかと疑問に思っていた.高校の先生はクラス担任や部活の顧問,毎日多くの授業をこなしており,高校生の視点でもその仕事を垣間見ることができた.しかし,大学に入学した途端,教授という自分にとってはパワーワードの存在に出会い,何をしているのか,どのような仕事なのか疑問に持った.大学の時間割をみても週に3コマくらいしか講義がなく,高校の先生のような授業,授業,授業,授業,部活という雰囲気はない.特に数学系は実験がないので謎だった.ひょっとして,講義がない時はゆっくり珈琲嗜んだり読書したり1日中計算しているのだろうか?さて,何を計算することがあるのかさえ思っていた.
しかし,自分が大学3年生のときにゼミに配属され,大学院生として数学の研究の入り口のようなところに連れて行ってもらったとき,ちょっとずつ大学の先生の仕事が実に多様で多忙なことに気がついた.講義は目に見えてわかる仕事だが,大学運営に関する仕事や委員会などの学内業務に加え,研究室運営や予算管理,そして研究.研究といっても学会の仕事や論文に関する仕事,先生によっては商業雑誌の連載や取材対応,色々な人に出会いふれあい,仕事を進めることを知った.数学者というと多くのドラマではたいてい根暗で人付き合いが悪く,変人で,そして犯人という印象を持っていた私には衝撃だった.
いざ自分が大学の教員になり,大学の先生の仕事がちょっとずつわかってきたのでメモしておく.まず講義だが講義の準備と講義の実施と後片付けである.レポートを課したり小テストを実施すればその採点や返却も必要となる.次に学内の業務である.これは大学によって異なるしその詳細は秘密ということにするが,予算を管理したり研究費に応募する書類を作成したり,出張の申請や領収証の整理などの事務作業もある.何よりも重要なのは研究だが,1日集中して研究できるというのが理想だが,これは難しい場合が多いのではないだろうか.自分はスキマ時間で研究している.大学の教員には研究する能力だけではなく事務作業を円滑にこなしたり事務さんとのコミュニケーションや学生さんとのコミュニケーションも重要でコミュニケーション能力やマネジメント能力も必要なのかもしれない.
私の場合,紙とペンとパソコンとwifiがあれば研究できるので,講義や学内業務がなければ大学に行かなくても極論問題ない.従って,出勤時間は一般的な会社員とは異なり,お昼に大学に行って夕方に帰宅できる.平日に役所や銀行,病院など行きやすいのはメリットだ.時間を比較的自由に使える反面,仕事とプライベートの線引きは難しくなる.私も自宅に仕事を持ち帰り夜な夜な研究に励むことも少なくない.ある本で読んだことだが,数学者は人との待ち合わせの時,デートであっても集合場所で論文読んでいたり,計算して待っていることもあるのだとか.私は残念ながらまだその域には達することができていない.
数学の研究とは?現象の数理解析を例にして
「数学の研究って何をしているんですか?」と興味を抱いて質問していただくことがある.この質問へ回答することは時に難しく回答に悩むことがある.どこまで話すかである.もちろん周りの制止を振り切って突き進んで全てを話すことはできる.もしかしたら相手の気づきで研究が進み,共同研究に,なんてことがあればいいが,それは現実的ではないだろう.数学の研究内容を一言で説明することは難しい.なぜなら自分の研究結果が明日の社会を良くするわけではないからである.もちろん多くの技術などのブレークスルーの背後には数学があることは確かであるが,それを身をもって実感することが少ないということである.数学の強みは普遍性であると個人的には考えており,何か知りたい現象について理解しようと思った時に数式化してその数式を操作することにより新たな現象の一端を予測したり制御することができるだろう.「ある現象を背景にして数学の問題として派生したものや厳密な数学的取り扱いに関する研究」というのが冒頭の問いへの私なりの回答である.また,「目に見えないことを数学の言葉で創造し,見えるようにして,なぜ見えるようになったのか?どうしたらより見えるようになるのか?考え続けること」だろうか.最後の言い方としては私のホームページの研究内容についてチェックしてもらうことが一番かもしれない.
世にも美しき数学者たちの日常,二宮敦人,幻冬舎,2019
数学者の思案,河東泰之,岩波書店,2024
天才なのに変態で愛しい数学者たちについて,郷和貴,KADOKAWA,2024
公式は覚えないといけないの?,矢崎成俊,ちくまプリマー新書,2024
数学がわかるということ,山口昌哉,ちくま学芸文庫,2010
博士の愛した数式,小川洋子,新潮文庫,2003.
モリー先生との火曜日,ミッチ・アルボム,NHK出版,2004.
バッタを倒しにアフリカへ,前野ウルド浩太郎,光文社新書,2017.
私のカレーを食べてください,幸村しゅう,小学館文庫,2024
最初の,ひとくち,益田ミリ,幻冬舎文庫,2007
47都道府県女ひとりで行ってみよう,益田ミリ,幻冬舎文庫,2011
今日のおやつは何にしよう,益田ミリ,幻冬舎文庫,2023
どこでもいいからどこかへ行きたい,pha,2020
北海道
北海道大学(2022.9 日本数学会)
北見工業大学(2023.9 北見工業大学における微分方程式セミナー)
宮城県
東北大学(2022.11 東北大OS特別セミナー,2023.9 日本数学会)
栃木県
那須オオシマフォーラム(2019.2 数学と現象 in 那須)
群馬県
ホテルニュー伊香保(2024.8 数学と現象 in 伊香保)
埼玉県
秩父小鹿野温泉旅館 梁山泊(2018.8 数学と現象 in 長瀞,2023.3 数学と現象 in 長瀞)
東京都
東京大学(2022.8 発展方程式における形状解析と漸近解析,2023.4 研究打ち合わせ)
東京工業大学大岡山キャンパス(2019.3 日本数学会聴講)
早稲田大学早稲田キャンパス(2023.8 ICIAM2023,2025.3 日本数学会聴講)
明治大学中野キャンパス(2023.10 MIMS防災研究集会,2023.12 MIMS防災非公開研究集会,2024.8 MIMS-MEMS研究集会,2024.10 MIMS防災研究集会,2025.1 MIMS防災非公開研究集会)
中央大学後楽園キャンパス(2023.3 日本数学会聴講)
成蹊大学(2021.12 研究打ち合わせ)
渋谷ontime meeting room (2023.8 One-day CJS)
東京理科大学神楽坂キャンパス(2022.10 研究打ち合わせ,2025.9 日本応用数理学会)
関西学院大学東京丸の内キャンパス(2025.9 研究会「微分方程式論の拡がり」)
神奈川県
明治大学生田キャンパス(2015--2019大学生,2019--2023大学院生,2023 ポスドク時在籍,2024.11 明治大学生命科学若手の会,2025.2研究打ち合わせ)
山梨県
富士山中湖畔荘 ホテル清渓(2019.9 数学と現象 in 山中湖)
明治大学清里セミナーハウス(2020.2 数学と現象 in 清里,2022.11 融合共創プロジェクト合宿参加)
明治大学山中セミナーハウス(2024.2 数学と現象 in 山中湖)
長野県
日本大学軽井沢研修所(2023.10 軽井沢グラフと解析研究集会,2025.6 軽井沢グラフと解析研究集会)
静岡県
味の宿 喜久多 / 会議室 海うさぎ(2023.8 数学と現象 in 伊豆)
石川県
石川県政記念しいのき迎賓館(2022.3 北陸応用数理研究会)
金沢大学サテライト・プラザ(2023.12 若手応用数学研究会)
福井県
福井大学(2023.10 研究打ち合わせ)
愛知県
名古屋大学(2018.9 日本応用数理学会聴講,2025.9 日本数学会秋季総合分科会)
名古屋工業大学(2023.12 生体関連セラミックス討論会)
滋賀県
龍谷大学瀬田キャンパス(2019.12 応用数学合同研究集会,2022.12 応用数学合同研究集会,2023 応用数学合同研究集会,2024 応用数学合同研究集会)
立命館大学びわこ・くさつキャンパス(2024.8 研究打ち合わせ)
京都府
京都大学(2019.6 RIMS力学系,2019.11 応用数学フレッシュマンセミナー,2021.12 生体関連セラミックス討論会,2022.6 RIMS力学系,2023.3 RIMS精密解析,2023.3 RIMS力学系,2023.11 RIMSパターン形成,2024.10 RIMS数値解析)
キャンパスプラザ京都(2022.6 京都駅前セミナー)
大阪府
関西学院大学大阪梅田キャンパス(2025.1 研究打ち合わせ,2025.3 研究会「微分方程式論の拡がり」)
大阪公立大学杉本キャンパス(2024.3 日本数学会聴講)
大阪大学豊中キャンパス(2024.9 日本数学会)
兵庫県
関西学院大学神戸三田キャンパス(2024 -- 助教時在籍)
関西学院大学西宮上ヶ原キャンパス(2024.6 形の科学会)
岡山県
岡山理科大学(2023.1 研究打ち合わせ)
岡山大学(2023.1 岡山応用数学セミナー)
広島県
広島大学(2022.5 広島数理解析セミナー)
島根県
島根大学(2022.10 島根大学談話会,2023.3 松江数理生物学・現象数理学ミニ研究会)
福岡県
北九州国際会議場(2022.11 非線型偏微分方程式と走化性 聴講)
宮崎県
宮崎大学(2024.11 数学と現象 in 宮崎)
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