第6回山口代数セミナー
日付: 2025年7月5日(土), 6日(日)
場所: 山口大学理学部1号館 第14講義室
キャンパスマップ(理学部は18です。)
https://www.yamaguchi-u.ac.jp/info/campus_map/yoshida_campus/index.html
教室一覧(第14講義室は図内の左上の教室です。外から直接入ることができます。)
https://www.yamaguchi-u.ac.jp/sci/wp-content/uploads/2024/07/20240401_rigaku1_1F.pdf
プログラム
7月5日(土)
10:30--11:30 中島 健(島根大学)
連結パーシステンス図の数学的基礎 1
(昼食)
13:00--14:00 中島 健(島根大学)
連結パーシステンス図の数学的基礎 2
14:30--15:30 齋藤 峻也(東京大学)
Classifying KE-closed subcategories over a commutative noetherian ring 1
15:50--16:50 齋藤 峻也(東京大学)
Classifying KE-closed subcategories over a commutative noetherian ring 2
(懇親会)
7月6日(日)
9:30--10:30 藤野 秀司(東京理科大学)
Generalized Brauer tree多元環上の両側傾複体について 1
10:50--11:50 藤野 秀司(東京理科大学)
Generalized Brauer tree多元環上の両側傾複体について 2
(昼食)
13:30--14:30 水野 有哉(大阪公立大学)
g-fans and Newton polytopes 1
14:50--15:50 水野 有哉(大阪公立大学)
g-fans and Newton polytopes 2
アブストラクト(講演順)
中島 健(島根大学)
・連結パーシステンス図の数学的基礎
位相的データ解析の分野で使われるパーシステンス図(persistence diagram, PD)の計算は、多元環の表現論の立場ではAₙ型クイバーの表現の直既約分解の計算と解釈できます。自然な一般化として、Aₙ型に限らない形状、とくに時系列データの解析への応用を念頭に、可換グリッド(Aₘ⊗Aₙ型クイバー)の表現に対する同様の理論の構築(いわゆる、パーシステントホモロジーのマルチパラメータ化)が精力的に試みられています。本講演では、このような流れから生まれた新しい手法「連結パーシステンス図(connected PD, 連結PD)」について、まず前半でその概要および材料科学分野における活用事例などを俯瞰的に紹介したのち、後半はその数学的基礎の部分に関して、必要となる概念の導入から主要定理の証明のスケッチに至るまで、数学のセミナーらしく丁寧に解説していきます。
齋藤 峻也(東京大学)
・Classifying KE-closed subcategories over a commutative noetherian ring
加群圏の部分圏は盛んに研究されており、これまで様々な環に対して様々な種類の部分圏が分類されてきた。とくに可換ネーター環の場合にはプライム・スペクトラム(素イデアルの集合)を用いて様々なクラスの部分圏が分類されている。たとえばGabrielはSerre部分圏(商加群・部分加群・拡大で閉じる部分圏)をプライム・スペクトラムの特殊化閉部分集合を用いて分類した。
本講演では、まず可換ネーター環の場合の部分圏のこれまでの分類を概観したあと、KE閉部分圏(核と拡大で閉じる部分圏)の分類について述べる。KE閉部分圏はSerre部分圏やトーションフリー類(部分加群と拡大で閉じる部分圏)といった部分圏を含むより広いクラスの部分圏である。たとえば二次元可換ネーター環上の極大Cohen-Macaulay加群の圏はKE閉部分圏の例を与える。これらのKE閉部分圏がプライム・スペクトラム上のある関数により分類することができることを紹介する。
本研究は小林稔周氏(明治大学)との共同研究である。
藤野 秀司(東京理科大学)
・Generalized Brauer tree多元環上の両側傾複体について
[Rickard, 1989] は、任意のBrauer tree多元環に対して、自己準同型環が星型のBrauer treeに付随するBrauer tree多元環(対称中山多元環)となる片側傾複体を構成した。この結果により、2つのBrauer tree多元環が導来同値であるための必要十分条件が与えられた。[Membrillo-Hernandez, 1997] は、RickardによるBrauer tree多元環上の片側傾複体を一般化し、generalized Brauer tree多元環上の片側傾複体を構成した。一方、[Kozakai–Kunugi, 2018] は、Brauer tree多元環上のRickardの片側傾複体に対応する両側傾複体を、両側加群と準同型写像を具体的に与えることによって明示的に構成した。そこで、Brauer tree多元環を一般化したgeneralized Brauer tree多元環において、Rickardの片側傾複体を一般化した Membrillo-Hernandez の片側傾複体に対応する、Kozakai–Kunugiの両側傾複体を一般化した両側傾複体が明示的に構成できるかどうか、という自然な疑問が生じる。 本講演では、この両側傾複体の構成法について、小境雄太氏および髙村航平氏との共同研究(arXiv:2405.09188)に基づいて述べる。
水野 有哉(大阪公立大学)
・g-fans and Newton polytopes
有限次元加群Mに対して、その部分加群達の次元ベクトルのなすconvex hullを考えることで、多面体を考えることができます。これをMのニュートン多面体と定めます。この講演ではこの多面体の頂点を作る部分加群とねじれ類の関係を説明し、特に多面体の面と広大部分圏との関係を話したいと思います。またニュートン多面体の正規扇(normal fan)と2項準傾複体から定まるg扇の関係を述べて、正規扇がg扇を粗くすることで得られることを説明したいと思います。この講演は共同研究 arXiv:2203.15213 に基づくものです。
世話人(アルファベット順)
足立崇英(山口大学国際総合科学部) E-mail: tadachi"あっと"yamaguchi-u.ac.jp
塚本真由(山口大学理学部) E-mail: tsukamot"あっと"yamaguchi-u.ac.jp
"あっと"は@に変えてください.