私たち人類の生活は農作物によって支えられています.中でもイネやダイズなどの穀物は,主食や加工品としてなじみが深いだけでなく,飼料,エネルギー源など様々な用途で活用されます.過去数十年を振り返ると,増加する食糧需要は「単位土地面積あたりの作物生産効率」を高めることで賄われてきました.今後,気候変動や需要のさらなる増加などが予想される中,土地面積あたりの生産性をさらに高めていくことは喫緊の課題です.
近年の植物生理学や分子生物学の進展により,作物の生産性を制御する分子メカニズム,生産性を向上させるための方策は少しずつ明らかとなりつつあります.一方でフィールドにおける生産には無数の要因が関与するため,最先端の生物学的な知見を農業生産性向上に直結することは,必ずしも容易ではありません.
私たちの研究室では現在,イネやダイズの品種間に存在するバリエーションに着目しながら,先端的な光合成生理とその遺伝的制御,深層学習を活用した画像解析による生育診断技術の開発,気候変動を見据えた新たな品種と栽培法の探索など,作物の生産性と潜在力を多角的に解き明かそうとしています.これら具体的テーマの統合と実証の場として,自ら手を動かし,フィールドにおいて作物の栽培試験を行うことを最も大切にします.栽培を通して作物の生態,作物栽培の実際を深く理解することこそが,作物の真の姿に迫る最良の方法だと信じるからです.
作物生産性の向上に取り組む当分野に,多くの方が興味を持って頂ければ幸いです.
作物生産技術学 研究教授 田中佑
2011年 京都大学 博士(農学)
2011年 京都大学理学部 博士研究員
2012年 京都大学農学部 作物学研究室 助教
2013年~2014年 University of Illinois, USA(兼任)
2016年10月 JSTさきがけ研究者(兼任)
2019年 日本作物学会研究奨励賞
2022年 日本農学進歩賞
2023年 岡山大学 作物生産技術学分野 准教授
2024年 同 研究教授
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