臨床研究関連教材

論文・学会要旨の作り方

論文の作り方

1.論文とは

論文とは、原著論文、レビュー論文、学位論文、レターなど種類があるが、定義などは組織に異なるので、自分の研究の目的にあったものを選び投稿する。

論文は、自分の研究が、過去に発表された研究に対して、追試等を含む新知見(新規性)や、オリジナリティーがあるもので、読者に有用であるものでなければならない。また新規性に乏しい場合には、新規性のある部分やオリジナリティーが、どこにあるのかを明確にして、論文を作成する。

2.論文の構成

構成例として、1.題名、2.要旨・要約、3.緒言、4.方法、5.結果、6.考察、7.謝辞、8.参考文献 、9.表、10.図の説明、11.図、を順に考える。最終的には、投稿(提出)する論文の規定に合わせ、形式・書式や文字数などを確認する。

① 題名

 研究(論文)内容を表す標語であり、内容がイメージ出来るものである必要がある。その論文のポイントを示す言葉は、必ずタイトルに入れるようにする。

②要旨・要約

 研究の意義、目的、問題とした点や背景、方法、結果、結論をまとめる。論文の中で最も重要な部分で、全体の概要である。また読者がその論文を読むかどうかの判断材料になるため、論点などがわかりやすく読みやすい文章になるように工夫する(略語は避け、専門的用語には注意する)。基本的には、これをもとに論文を書いていくことになるが、論文全体を完成させた後に、まとめ直しをする。

③緒言

 論文の本題への導入部分で、研究に着手するに至った背景と研究の目的についてまとめる。この緒言は論理的に説得力が必要となる。

 緒言では、目的あるいは仮説、動機・問題の背景・問題設定の理由、関係する領域の先行研究(既報)の紹介と問題点や本研究との関連を、「どのような立場から、誰(何)を対象に、何を、どこまで、どのような方法で明らかにするのか」をまとめる。

④方法

 記載された方法を読んで、全く同じ研究を読者が再現できる情報を書く。ただし、一般的な手順については省いても良い。

⑤結果

 結果は、事実やデータについて客観的に説明し、考察や感想は書かない。内容はパラグラフに分けて書き、パラグラフの先頭にその要約文を簡潔に書く。図表には通し番号を必ずつける。図のタイトルは図の下に書き、図の中に書き込まない。 表はタイトルは表の上に書く。

⑥考察

 考察は、結果を解釈し、知見を引き出すことである。データから導き出されること、既報との比較・問題点、仮説などを結果と同様に項目ごとに分けて書く。

 ただし、結果を必要以上に繰り返し述べることは避ける。また、自分の研究結果を補強するために、論文を引用するが、 反対の結果が述べられている論文を引用する場合は、なぜ相反する結果になったかを考察する。

⑦謝辞

 論文に何らかの形で貢献した人にお礼を述べる。資金の提供先があれば、謝辞に記載する(例えば、科学研究費とか受託研究費など)。

⑧参考文献

 既にわかっている事実を述べる時には、その事実が明記されている文献を必ず引用する。引用文献リストを論文の最後に作成する。

 引用文献の表記については、投稿先の規定に従う。

3.投稿前の確認

 投稿先の投稿規定は必ず確認する。責任著者(薬剤部長、研究指導者)のほか複数の人に、書式や引用文献のスタイルなども含めて、論文の内容はもとより、誤字・脱字がないかをチェックしてもらい意見を求める。

4.論文作成時の注意について(約束事と禁止事項)

 1.生データ(実験・調査ノート)の保存義務

 2.不正投稿や二重投稿の禁止

 3.論文引用の義務(引用論文の出典を明記)

 4.著者の責任(共著者の責任義務)

 5.博士申請論文としての権利

 6.別刷り提供の義務(著者の住所などの明記)

 7.国際用語の使用

 8.原稿の不備(書式・体裁・誤字など)

学会要旨の作り方

1 . 研究意義を明確にする 

・研究および課題を選んだ理由は何か。

・どのように研究を行ったか。

・どのような結果が得られたか。

・この研究や結果はなぜ重要か。

・なぜこの論文全体を読むべきか。

2. 問題とした点を説明する 

 要旨において、この研究が問題として取り上げている点を説明します。その研究を行った動機と問題を結び付けて書くこともできますが、できれば区別して書く方が良いでしょう。

・この研究が解決または解明しようとしている問題は何か。

・この研究の範囲は何か。一般的な問題か、それとも、特定の問題か。

・この研究における主張は何か。

3 研究方法を説明する 

 動機、問題が書けたら、次は研究方法を説明しましょう。研究をどのように行ったかの概要を書きます。

・研究における変数やアプローチも含まれます。

4 研究結果を述べる

・この研究で見つかった答えは何か。

・それは仮定や主張を証拠立てるものであったか。

・この研究における一般的な結果は何か。

5 結論を述べる 

 まとめおよび要旨の最後に結論を書きます。結論において、研究結果の意味や重要性を述べます。

・この研究から示唆されることは何か。

・この研究で得られた結果は一般化できるか、それとも特定の条件に限られるか

参考資料

岡 希太郎 シリーズ「病院薬剤師のための論文の書き方(第1回〜第3回)」日本病院薬剤師会雑誌第43巻10〜12号(2007) 

山村 喜一「学術論文作成上の留意点」 発表資料 

松原 和夫「病院薬剤師会会員の皆さんの研究発表の参考のために、以下の点を中心に述べる」 スライド資料

芳賀 敏郎 シリーズ「データ解析の進め方(第1回〜第6回)」 日本病院薬剤師会雑誌第46巻9号〜第47巻2号(2010〜2011)

山本 康次郎 総説「論文執筆時における研究者のモラルについて」日本病院薬剤師会雑誌第49巻12号(2013) 

奥田 千恵子 シリーズ「医療従事者に求められる統計リテラシー」日本病院薬剤師会雑誌第50巻5号〜8号(2014)

Megan Morgan 「論文の要旨を書く方法」共著者:Megan Morgan,PhD