第四分科会

写真:銀閣寺 from 京都フリー写真素材

「生体高分子の一分子蛍光計測」

  • 講師:石井 邦彦 先生 (理化学研究所 専任研究員 : 研究室HP)
  • 担当:宮田 大輔 (東北大学 中林研究室 D2)
  • 担当連絡先:sec4_at_ymsa.jp (※担当連絡先はお手数ですが「_at_」を@に変えて頂きますよう、よろしくお願い致します。 )

紹介文

1990年代頃から、蛍光標識した単一の生体分子を水溶液中や細胞中で観察する実験が行われるようになってきました。分子科学における典型的な応用として、一分子蛍光計測と蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法を組み合わせた一分子FRET実験が挙げられます。現在、一分子FRETを用いて生体高分子の構造多様性やダイナミクスを調べる研究が盛んに行われています。本分科会では、一分子FRETを利用した研究を完全に理解できるようになることを目標として、研究の背景や原理、実験技術、データ解析法を解説します。基礎的な事柄から始め、時間が許せば最近の論文の紹介まで行いたいと思います。後半は講師が専門とする蛍光相関分光法の原理を応用した手法を重点的に取り上げる予定です。内容の概要は以下の通りです。

1. イントロダクション:生体高分子の分子科学における一分子計測の意義

2. 蛍光分光法の基礎:蛍光放出の原理/FRETと蛍光寿命

3. 一分子FRETの実験技術:顕微蛍光分光法/光の回折限界と空間分解能/蛍光色素と標識法

4. 一分子FRETデータの解析:確率論の復習/最尤法/隠れマルコフモデルによる一分子FRETデータの解析

5. 蛍光相関分光法(FCS):FCSの歴史と装置/反応拡散方程式を用いた定式化/確率による解釈/FRETとFCS

6. 講師の研究紹介:二次元蛍光寿命相関分光法の開発と生体高分子のダイナミクス計測への応用

講義ではなるべく平易に説明するよう心がけますが、重要な事項については数式の導出まで踏み込んで進めるつもりです。参加者のバックグラウンドとしては主に生体関連分子の実験研究を想定していますが、他分野の人も歓迎します。特にこんな人におすすめしたいと思います:一分子分光実験に興味がある人、確率・統計を使ったデータ解析に興味がある人、別の研究分野を覗いてみたい人。


担当者コメント

第四分科会では、理化学研究所の石井邦彦先生をお招きし、一分子蛍光法の基礎から応用まで、幅広く講義して頂きます。石井先生は二次元蛍光寿命相関分光法という、自身の開発した新しい解析手法により、誰もが見たことのない生命現象を明らかにしようとされています。

一分子蛍光法は、通常の蛍光測定では埋もれてしまう、分子一個の蛍光を測定できる手法です。この測定手法を、蛍光分子をラベルしたタンパク質の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法と組み合わせることで、タンパク質の構造の違いを、一つ一つ区別して観測することができます。溶液中での生体分子は揺らいでいるため、統計学的な手法を用いて、結果を確率的に解釈します。

一分子蛍光法について、実験から解析まで一貫して理解するためには短期間で集中して勉強する必要があり、本分科会はその絶好の機会と言えます。本分科会は様々な分野の人に参加して頂き、得られた考え方や解析手法を、自身のテーマに活かしてもらえればと思っています。皆様のご参加をお待ちしています。