高強度のコヒーレント光源を用い、極めて非線形な電子ダイナミクスを誘起するサイエンスがこの四半世紀に渡って発展してきた。 こうしたサイエンスの対象は当初気相であったが、近年固体を対象にした現象群も盛んに調べられるようになった。 本分科会では、高強度光電場に駆動される固体電子ダイナミクスの実時間シミュレーションを行うための理論群(Blochの定理、バンド計算、Bloch波動関数の時間発展を扱うための理論等)について講義を行う。 また、これらの理論の実装された数値計算コードを使って、高強度光電場に駆動される固体電子ダイナミクスの実時間シミュレーションの実習に取り組む。
水素原子における量子力学は、標準的なカリキュラムでは手で解ける練習問題としての位置付けにあることが多いと思われます。一方で、水素原子は数理物理分野において長らく研究されている対象でもあり、他の系における量子現象を考察する上でも重要となる概念・手法を多く生み出してきたという側面があります。本講義では、そのような研究の中で見出された水素原子に潜む数理構造として①共形幾何学と②超対称性代数を取り上げて数学的基礎から解説したいと思います。さらに、これらの数理構造の分子科学への応用動向についてご紹介します。
高分解能分光法の一つとして知られるマイクロ波分光法は、精密な分子構造の決定手法として確立されており、ラジカルなどの開殻分子の回転スペクトル中に電子スピンに由来した微細構造や核スピンの影響による超微細構造を分離して観測できる事が特徴である。これらの分光データ中には、分子構造や電子構造の情報が豊富に含まれている。本分科会では、マイクロ波分光の基礎となる閉殻および開殻分子の回転エネルギー準位構造の解説から始め、マイクロ波分光で得られる情報からどのようにして分子間相互作用ポテンシャルの決定を行うかについて学ぶ。
孤立した原子および分子の間にはたらく相互作用について学んだ後に,化学反応を低エネルギー原子・分子衝突と定義した上で,その素過程を記述する衝突理論の基礎を概説する。量子化学は学んでいるが量子力学における散乱理論を全く知らない学生を想定して,講師が行っている太陽風電荷交換反応および極低温イオン移動度の実験的研究の内容が理解できる程度にまで到達することを目標とする。