そもそも魚道とは?

まずは河川横断構造物について

下の写真のように、河川を横断して設けられ、上下流に水位差が生じるような構造物を「河川横断構造物(工作物)」といいます。

こうした構造物は、どういった目的で造られているのでしょうか?

目的1)河川から取水するため

1点目の理由は、河川から農業用水や工業用水、生活用水を取水するためです。こうした目的で設けられる施設を「取水堰(ぜき)」といいます。このうち、農業用水用の取水堰を「頭首工(とうしゅこう)」といいます。

目的2)河床洗堀・河岸浸食を防ぐため

2点目の理由は、流水による洗堀や浸食を防ぐために、河川勾配を緩めたり、河床を保護する目的で設けられます。こうした目的で設けられる施設を「落差工」、「床止工(とこどめこう)」、「床固工(とこがためこう)」と呼びます。

主な河川横断構造物設置の目的を2つ挙げましたが、これらの施設は人間が社会生活を営む上で、必要な施設であるといえます。

水道用水用の取水堰の例

魚道(ぎょどう)とは―

河川に横断構造物が設けられると,魚類等の河川内移動が阻害され,生息場所の分断や流程分布の制約が生じてしまいます。

こうした移動阻害を解消・改善するために設けられる施設が、「魚道(fishway)」です。下の写真のような階段状のタイプが、代表的な魚道の例です。

取水堰に設置された魚道の例

魚道の必要性

「どうして必要か?」を論じようとすると、切り口(視点)によって説明が変わってくると思います。主な考えを2つ挙げます。

1)法的な視点から考えると・・・

日本の河川法では、河川管理の目的として「治水」「利水」に加え、「河川環境(生態系等)」の整備と保全を位置付けています。より具体的な定めを記載している河川管理施設等構造令には、河川横断構造物へ魚道を設置することを明記しています。

2)本質的な視点から考えると・・・

本質的な理由を考えると「生物多様性の保全」が挙げられます。魚道は、以下の生態系サービスの保全のために必要であると考えられます。

なお、人間に対して明確な利益の享受がなくても、多様な生物が相互の存在を認め合い、共に生きること自体が重要との考え方もあります。