私たちの研究内容のほとんどが、1人でできるものではありません。
そこで、ゼミ生が協力し合って、それぞれのテーマの調査や実験に取り組みます。協働作業の中で得られる信頼関係、友情は代えがたいものです。学生には、物事を成し遂げるために必要な「チームワーク」の大切さを実感してもらえると思います。
研究を”受け身”で行っていても、楽しくありません。
教員は方針を示して、サポート・助言・協働していきますが、学生には、「自ら考え、行動する」ことを習慣化して欲しいと思っています。
こうした自主性を重んじた研究活動の継続が、問題解決能力を高め、社会人になった際に大きく役立つと考えているからです。
大学って、何のために行くのでしょうか?
「就職のため」「有効な資格が取れるから」「将来を考える場として有効だから」・・・人ぞれぞれの目的があると思います。
私は、大学に入学された方に、そうした目的の達成に加えて「物事を探求する”おもしろさ”」を知って欲しいと思っています。これは、大学生だからこそ味わえる醍醐味です。弘前という良き土地で、良き仲間と研究に打ち込む時間が持てる。もちろん忙しくて辛いこともありますが、すごく贅沢なことだと思います。
We Love Rivers! 初代大学院生!
主に3年生までに修学する基礎的な学問に加え、社会実践的なスキルを獲得することも大切だと考えています。
研究テーマに直接関わること以外でも、以下の中で「学んでみたいな」と思うスキルがあれば、トレーニングできる環境を用意しています。大学院生には積極的に取り組んでもらいたいと思っています。
1)CADのオペレート
フィールド調査対象の魚道の図化や、実験模型の作図にCADを用います。当研究室では、AutoCADを導入しており、3DCADの操作にも取り組みます。
アイスハーバー型魚道の3D図面(卒業生 成田さん作)
2)3Dプリンター・3Dスキャナーのオペレート
樹脂材料を用いた3Dプリンターによって、CADで製図したパーツを造形します。
当研究室では、魚道の模型を用いた遡上実験を行っており、実験装置作成に、3Dプリンターを導入しています。自分でデザインしたものを実物にする面白さを感じることができます。
また、3Dスキャナーを用いて対象物をデータ(点群)化して表面性状を評価することや、プリンターで再現出力(リバースエンジニアリング)することも行っています。
3)GISのオペレート
GISとは、「地理情報システム」のことです。必要な情報のみを記載したオリジナルの地図を作ったり、地図を使った分析・計測ができます。
当研究室では、オープンソースで無償利用可能なQGISを用いて、現地調査地点や調査情報をまとめています。無償とは思えないハイスペックなGISですので、将来、有償ソフト(ArcGISやSIS)を使う場合でも経験が役に立つと思います。
4)プログラミング
当研究室では、Pythonを用いています。主に、流速データ等の大量の数値データの処理、データの可視化(ベクトル図作成等)にプログラムを使っています。
また、大学院の講義では、長方形断面における不等流の標準逐次計算のコーディングに取り組みます(少しずつ学びますので心配いりません)。
はじめての方には、とっつきにくい物ですが、覚えると強力な武器になります。私は複雑な数値解析をコード化するほどの力はありませんが、ボチボチやっています。
5)水理解析(数値シミュレーション)
当研究室は「魚の挙動と水理諸量の関係」に着目した、フィールド調査・模型実験を主な活動としていますが、河川や魚道内の流況把握・魚道の改良効果を検討するツールとして水理解析を用いています。
実務や研究でも活用されている無料かつ強力な数値シミュレーションプラットフォームであるiRICソフトウェア等を使用させていただいています。
プールタイプ魚道の流れの計算(iRIC NaysCUBEを使用)
iRIC(International River Interface Cooperative)は、清水康行教授(北海道大学)とJon Nelson博士(USGS)の提唱によりはじまった活動で、河川をはじめ水や土砂など水工学に係る数値シミュレーションのプラットフォーム(iRICソフトウェア)の開発やそれに係る情報発信、講習会開催などを行っている団体です。 NaysCubeは、木村一郎教授(富山大学)が開発された3次元解析用のソルバーです。なお、上記アニメーションの例は、段落ちの流れがうまく再現できず、要検討です。
6)モノづくり(DIY!?)
「魚を採るための網」や「魚道模型の隔壁(パーツ)」など、どんどん自分たちで作ります。
モノづくりは、頭を使いますし、多くのアイディアを必要とします。私は「モノづくりが得意な人は、生きる力が強い人」と尊敬しており、大切なスキルだと思っています。私自身も日々勉強ですが、やってみるとおもしろいですよ。
学生みんなで協力して採捕網を作成中!!
実験用の魚道隔壁も作っちゃいました!!
現場で水中カメラ撮影用の架台/支柱を組み立て中(学生が設計&施工)