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想像してみよう。何もかもが私たちの世界とそっくりで、しかし得体の知れない何者かによって観察されている世界を。われわれの世界の生態系が自然選択によって一から築き上げられたのとは反対に、この世界は、選ばれた一部の生き物たちが地球から持ち込まれることによってその幕を開けたのである__「観察者」の手によって。ここにたどり着いた生き物たちは、外界から隔絶されたまったく自由な環境の中で、数千年、数万年・・・・・・いや、数億年にわたる、予想もつかない進化の軌跡を歩むこととなる

さぁ、想像してみよう。ある一種の生き物が、他者との競争にさらされることなく繁栄を謳歌する世界を。

想像してみよう。小さな小さな鳥たちが、やがて地上の主人公となる世界を。

この世界には、爬虫類も、両生類も、哺乳類も存在しない。

これから始まる実験は、過去に類を見ない素晴らしい規模のものとなるだろう・・・・・・。


これが、セリナ__鳥の世界の物語である。


セリナSerinaは、現在進行中の世界構築実験兼空想生物学プロジェクトだ。物語の舞台となるのは、地球の3分の2ほどの大きさの、テラフォーミング(地球化、天体を地球に似せて改造することが完了したばかりの架空の衛星である。遠い恒星系のハビタブル・ゾーン(生命居住可能領域、恒星の周囲において水が液体として存在できる範囲を指すに位置する巨大ガス惑星の周りを公転するこの衛星に、草本類、ヒマワリ、アリ、コオロギ、グッピー・・・・・・そして、ただ1種の陸生脊椎動物たるカナリアが送り込まれるところからこの物語は始まる。この数奇な世界への旅は、原初の入植者たちが奇妙で新しく、そして絶えず変わり続ける世界に適応し着実に進化していく、途方もなく永い年月をたどるものになる。


ここに至って、悠然にして遼遠たる創造主による巨大な実験がその全貌を露わにする。どこまでも広がる新天地で、生き物たちは数えられないほどの歳月をかけて、思いもよらない姿へと変わっていくことだろう


セリナは、真の意味での「鳥の世界」となる。


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※以後、訳者注は()内に下線部を引いて表すこととする。

例:セリナ(イラストレーターのDylan Bajda氏による、現在進行中の空想生物学プロジェクトのこと。地球に似た環境の衛星に送り込まれたカナリアをはじめとする生物たちが、数億年の歳月をかけて進化していく様を流麗な筆致で描く。

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