飢餓時の生体防御機構における視床下部の役割の解明
視床下部の機能(摂食・睡眠などの行動や代謝・体温調節などの自律神経機能)は、外界からの刺激や末梢臓器からのシグナルにより制御されており、当教室ではこれまでに、摂食や代謝と関連した視床下部機能を中心に研究を行なってきました(Publications 7, 8, 21)。現在は、「飢餓」時における視床下部の生体防御機構の解明を目指し、torporと呼ばれる飢餓時の体温低下メカニズムを解明するとともに、飢餓時の末梢臓器における遺伝子変化を検討することで視床下部とのクロストークの可能性を探索しています。
老化における視床下部の役割の解明
視床下部機能の低下は、「老化」を惹起することが報告されていますが、そのメカニズムは不明な点が多いのが現状です。老齢マウスの視床下部における新規の組織学的・分子生物学的変化を検討することで、視床下部機能が低下するメカニズムの解明を目指しています。
意欲の脳内メカニズムの解明
「意欲」の低下は、うつ病や神経性無食欲症など様々な疾患と関連しています。当教室ではこれまでに、転写調節因子であるAFF4が、飢餓時の視床下部において、胃より産生・分泌されるグレリンにより誘導されることを見出しています(Publications 23)。グレリンは、様々な意欲と関連することが報告されており、新規の意欲関連分子としてAFF4を検討していきたいと考えています。
自閉スペクトラム症(ASD)/注意欠如・多動症(ADHD)の発症機序の解明
・中枢神経系における発症機序の解明
ASDやADHDなどの神経発達障害では、脳の発達過程における神経回路の形成やシナプス機能の異常が関与すると考えられています。しかし、どのような分子が神経回路の発達に関わり、どのように行動異常につながるのかについては、まだ不明な点が多く残されています。当教室では、胎児期から神経系に発現する分子であるKirrel3に着目し、遺伝子改変マウスを用いた機能解析を行っています。これまでに、Kirrel3遺伝子欠損マウスは、自閉症様行動とADHD様行動の両方を示すことを明らかにし、ADHDを合併する自閉スペクトラム症の病態を理解するためのモデル動物として有用である可能性を示してきました(Publications 29)。このモデルマウスにおいて、神経回路がどのように形成され、どのような分子異常が神経発達障害の病態につながるのかを明らかにすることで、新規の疾患治療法の解明を目指しています。
Kirrel3は、神経細胞同士のつながりであるシナプスの形成や機能に関わる分子です。Kirrel3遺伝子を欠損したマウスでは、自閉症様行動に加えてADHD様行動も認められます。このことから、Kirrel3遺伝子欠損マウスは、ADHDを合併する自閉スペクトラム症の病態を解析するためのモデル動物として有用であると考えられます。
・腸管神経系を介したASD/ADHD発症機序の解明
当教室では、Kirrel3が腸管神経系にも発現することを見出しており、腸管神経系におけるシナプス異常が精神疾患の発症原因であるという新たな仮説のもと、このマウスの腸管神経系や腸内細菌叢を解析することで、ASDやADHDの新規発症メカニズムを解明し、治療法の開発に繋げたいと考えています。