尿路結石症は、腎臓や尿管などの尿の通り道に結石ができる病気です。強い痛みを伴うことが多く、泌尿器科領域では日常的に遭遇する代表的な疾患の一つです。また、尿路結石は再発しやすいことも大きな問題であり、再発予防の重要性が示されています。
尿路結石は、尿中のシュウ酸やカルシウムなどの成分が結晶化し、それが腎臓内に沈着・成長することで形成されます。近年、この過程には単なる「尿成分の濃縮」だけでなく、腎臓内の酸化ストレス、炎症反応、細胞間シグナルが関与する可能性が注目されています。
当教室では、炎症性サイトカインの一つであるオンコスタチンM(Oncostatin M:OSM)に着目し、尿路結石形成におけるOSM/OSMRβシグナルの役割を研究しています。これまでに、尿路結石モデルマウスを用いた研究から、OSM/OSMRβシグナルは、腎臓内の炎症反応や結晶形成に関わる分子を増加させることで、尿路結石形成を促進する可能性があると考えられます(Publications 30)。
この研究を通じて、尿路結石ができる仕組みを「炎症」と「腎臓内の細胞応答」という視点から理解し、将来的には結石形成や再発を抑える新しい予防・治療法の開発につなげることを目指しています。
尿路結石モデルマウスでは、腎臓内でOSMおよびその受容体であるOSMRβの発現が増加します。OSMがOSMRβを介して細胞にシグナルを伝えると、TNF-αなどの炎症性サイトカインや、オステオポンチン、アネキシンA1などの結晶形成に関わる分子の発現が高まり、結晶形成が促進されると考えられます。一方、OSMRβシグナルを抑制すると、これらの分子の発現や結晶形成が抑制されます。
代謝機能異常(肥満、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、など)を原因とする脂肪肝はmetabolic dysfunction-associated steatotic liver disease(MASLD)と呼ばれ、我が国でも約25%と高い有病率を示しています。MASLDのうち、肝の脂肪蓄積に肝細胞障害と炎症が加わった病態はmetabolic dysfunction-associated steatohepatitis(MASH)と呼ばれ、MASHのうち15〜25%が肝硬変に移行し、MASHによる肝硬変患者の約7%に肝細胞癌が発生することが報告されています。MASLD/MASHを基盤とした肝癌の発症率は年々増加しているのが現状ですが、現在のところ有効な治療法がないのが現状です。当教室では、これまで、OSMが肥満や2型糖尿病、及びMASLDを抑制することを報告してきました(Publications 26-28)。現在は、MASLDからMASHへの進展やその後の肝癌発症メカニズムに焦点を当て検討を行っています。その中でも、一つの細胞が障害を受けた時に細胞死を起こすのか、老化細胞に変化するのかという細胞の運命に着目し、新規の運命制御の方法を発見することで、病態の解明・治療へと繋げていきたいと考えています。