Research
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土壌・堆積物への有機物の埋没は、大気・水圏を中心とした生物圏から地圏へと再び炭素を隔離するための主要な輸送過程です。潮間帯の土壌から大陸斜面までの堆積物を主な対象とし、各場所での埋没速度や長期的に保存される有機物の起源(陸 vs. 海)、安定化に必要な環境(酸化vs.還元)やその条件(化学的vs.物理的安定性)に関心を持っています。特に、鉱物との相互作用(粘土鉱物や鉄・アルミニウム酸化物との結合)や有機物組成に着目し、脂質・リグニンなどのバイオマーカー、δ13C・Δ14Cなどの同位体分析を組み合わせて、有機物の安定化メカニズムの解明を目指しています。
現在は、北極海に面した北米最大のMackenzie川河口からBeaufort海大陸斜面を対象に、永久凍土の融解によって流出した陸起源有機物の海洋での安定性に関して、鉄・アルミニウム酸化物と有機物の結合(Rusty-carbon sink)に注目し研究を行っています。
土壌・堆積物に埋没した有機物のうち、長期的な地圏への隔離に繋がる割合は極一部であり、多くが再び生物圏(Biosphere)を循環しています。埋没した有機物は微生物によって分解・無機化されますが、近年固定された現代の有機物だけではなく、数百~数万年前に固定された「古い有機物」も再び分解されることが報告されています。古い有機物は、長期間分解から免れてきたことを意味しますが、なぜ再分解するのか、どんな環境変化が古い有機物の分解を促進するのかはよく分かっていません。
古い有機物は人為的な気候変動が始まる以前のCO2を取り込んでおり、その分解は生物圏を循環する炭素量の増加させるため、気候変動を加速させる正のフィードバックとして作用します。貧酸素水塊やマングローブ近傍水等のCO2が蓄積する天然環境での調査や、土壌・堆積物の培養実験を通じて、現代の炭素循環の中に混在する「古い炭素」の挙動とその役割の解明を目指しています。
研究成果:
・湖の水温上昇が陸域由来の古い有機物の分解を選択的に促進することを世界で初めて実験的に示しました。
・マングローブ土壌で分解され海洋に流出するDICが数百年前にマングローブが固定したCO2に由来する可能性を示しました。
有機物が分解されるとCO2やCH4が生成されますが、そのすべてが大気へ放出されるわけではありません。生成した無機炭素の一部は、海洋中では炭酸水素イオンを主体とする溶存無機炭素(DIC)として保持され、長期的な炭素隔離につながります。一方で、どの程度の炭素がDICとして海洋に留まり、どの程度が温室効果ガスとして大気へ放出されるかは、分解・無機化に伴うアルカリ度の変化によって大きく左右されます。
堆積物内の酸化還元反応、特に炭酸塩溶解、鉄還元、硫酸還元、嫌気的メタン酸化、パイライト形成を通じて変動するCO2、CH4、DIC動態に注目し、分解・無機化後の炭素の運命を明らかにすることを目指しています。
研究成果:
・マングローブ生態系において、有機物分解で生成したCO2の多くが海洋へDICとして隔離される可能性を示しました。
・半月周期の潮汐変動において、マングローブ湿地の浸水時間が近傍水域のpCO2を制御することを示しました。
・マングローブに隣接する干潟での光合成により、マングローブ近傍水のpCO2の増加が抑制されることを示しました。
・製鋼スラグを敷設した人工藻場でのメソコスム実験において、アルカリ化に伴う海水pCO2の低下を示しました。