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2024. 3. 21. 大学院博士課程の修了

東京大学大学院新領域創成科学研究科を修了し,博士号(環境学)を取得しました.また,大変光栄なことに新領域創成科学研究科の研究科長賞を頂きました.博士研究にご協力いただきました全ても皆様に感謝申し上げます.特に,指導教員である佐々木先生には大変お世話になりました.今後とも引き続き研究でご一緒できればと思います.

決して楽ではありませんでしたが,とても充実した3年間でした.

2024. 3. 4 国際ワークショップでの研究発表 

JIRCAS(国際農林水産業研究センター)で開催された国際ワークショップ「Mangrove Management and Monitoring ―Long-term mangrove monitoring considering the climate change risks-」へ研究室の留学生2名と共に参加しました.フィリピンやマレーシア,インドネシアなどの東南アジアを中心とした,各国のマングローブ研究の現状について勉強することができました.私はマングローブ生態系内の無機炭素循環に関する研究について発表しました.

ご企画頂きましたJIRCASの皆様,講演の機会を与えていただきました諏訪様,大変貴重な経験をさせていただきましてありがとうございました.

Geochemical Journalへの論文掲載

博士論文の成果が「Geochemical Journal」へと掲載されました.論文タイトルは「Changes in DIC/TA ratio by tidal asymmetry control pCO2 over a spring-neap tidal cycle in a subtropical mangrove forest in Japan」です.

マングローブ水域では土壌内部からの蓄積したDICの流出により下げ潮時に極めて高いpCO2 となることが知られています.このマングローブ水域のpCO2には干満の差に起因する半日周期の変動と,潮位振幅(大潮小潮間)に起因する半月周期の変動があります.これまでの研究では,半月周期のpCO2の変動は,潮汐とマングローブ沼地の物理的な相互作用により起因すると考えられていました.本研究では,石垣島吹通川マングローブ水域での約2週pCO2の連続観測と,空間的なDICとTAの測定結果から,半月周期のpCO2は潮汐とマングローブ沼地の物理的な相互作用に加えて,沼地の冠水時間の増加に起因するDIC/TA比の上昇が支配要因であることを明らかにしました.

詳細は以下の通りです. https://doi.org/10.2343/geochemj.GJ24003 

水圏環境グループのHydrosphere Science Seminarでの発表

12月21日に東京大学水圏環境グループの主催するHydrosphere Science Seminarで「Stock and Flow. Inorganic Carbon Cycle in a Mangrove Ecosystem」という題で1時間程度の講演を行います.

Hydrosphere Science Seminarは生産技術研究所の山崎大先生が企画している水圏を対象とする研究セミナーになります.今回縁があり,博士論文の内容を発表する機会を頂きました.誰でも参加可能ですので興味のある方は以下のURLからご登録下さい.

Hydrosphere Science Seminar Registration (google.com) 

Journal of Marine Science and Engineeringへの論文掲載

博士論文の成果が「Journal of Marine Science and Engineering」へと掲載されました.論文タイトルは「A Tidal Flat Adjacent to a Fringe Mangrove Forest Mitigates pCO2 Increases and Enhances Lateral Export of Dissolved Carbon」です.

前浜干潟に形成するFringe型マングローブ前面にて大潮小潮間のpCO2変動要因を明らかにし,海洋へのTA,DIC,DOCの輸送量を推定しました.マングローブ水域では通常潮位に対応して下げ潮時から干潮時にかけてpCO2が高濃度に達します.今回調査を行った西表島由布島対岸のマングローブ林では前面の干潟で一次生産によりpCO2の増加が抑制され,流出したDICがより海洋に留まる可能性が示唆されました.

詳細は以下の通りです. https://doi.org/10.3390/jmse11122356 


第29回マングローブ学会年次大会での招待講演

12月2日に東京農業大学で開催された第29回マングローブ学会年次大会での公開シンポジウム「マングローブ研究の最前線:Part 2」にて招待講演を行いました.

講演題目は「マングローブ生態系内の土壌ー水ー大気間の無機炭素循環」です.博士研究を通じて明らかになった我が国の8つのマングローブ水域での無機炭素動態について紹介しました.マングローブ生態系は土壌内部への炭素の隔離・貯留量が注目を浴びていますが,土壌から海洋への無機炭素輸送はマングローブ生態系内の最大の炭素貯留機能になる可能性を秘めており,今後更なる詳細が解明されることが期待されます.

第70回海岸工学講演会と第11回Asia and Pacific Coasts(APAC)への参加

11月15日から17日にかけて京都で開催された第70回海岸工学講演会とthe 11th International Conference on Asian and Pacific Coasts (APAC)へと参加しました.私は前浜干潟に形成するマングローブ林と感潮河川沿いに形成するマングローブ林での大潮から小潮にかけるpCO2の変動の違いについて発表しました.


Marine Environmental Researchへの論文掲載

修士時代から続けていた日本製鉄株式会社との共同研究成果が国際誌「Marine Environmental Reseach」に採択されました.Ocean based carbon dioxide removalの一環として製鋼スラグを用いたアルカリ活性化について検討した論文です.

東京湾から直接導水可能な干潟と浅場を模擬したメソコスム水槽において,製鋼スラグと浚渫土砂を敷設した実験区と浚渫土砂のみを敷設した対照区を準備し,1年間の対照実験を実施しました.その結果,メソコスム水槽内では製鋼スラグの利用が水中のpCO2分圧の低下に寄与すること,製鋼スラグによる土壌の固化により浚渫土砂のみを用いた場合よりも一次生産者の増加へ寄与することを明らかにしました.

論文の詳細は以下の通りです.https:// doi.org/10.1016/j.marenvres.2023.106223. 


東京湾での船上観測の実施

2023年922に修士1年のGuoさんと共に,千葉県水産総合研究センターが主催する定期観測船に乗船し東京湾での調査を行いました.天候にも恵まれ,湾内20か所にて空間的な採水と水質測定を実施できました.次回は2月の調査を予定しています.

千葉県水産総合研究センターの皆様大変お世話になりました.

地球惑星環境学国際研修Ⅱへの参加

2023年9月6日から9月16日にかけて全学の学生向けに開講されている地球惑星環境学国際研修Ⅱに参加してきました.オーストラリア国立大学の学生と共に,東北,富士山,浜名湖周辺でのフィールドワークを行いました.

大気海洋研究所の横山研の皆様,大変お世話になりました.

ミクロネシア連邦ポンペイ島でのマングローブ調査

2023年8月29日から9月6日にかけて南山大学の藤本先生が主宰するミクロネシア連邦ポンペイ島でのマングローブ調査に参加しました.今回の調査では,プロット(P)K,PCに加えて前回訪れることのできなかったPRとPEにて作業を実施しました.

PK:内陸部のBruguiera林で浸食が顕著なプロット.PC:海岸沿いのFringe林.樹高の高いRhizophoraが優先.PR:海岸沿いのFringe林.樹齢の若いRhizophoraが優先.PE:河口沿いに発達した最も林齢が進行したクライマックス林.PS:Soneratia種が優先した海岸沿いのFringe林.発達した筍根が特徴

博論最後の現地調査 in 石垣島,西表島

2023年6月27日から7月13日にかけて石垣島と西表島で博士研究としては最後の調査を実施しました.今回の調査では,石垣島と西表島の8つのマングローブ林を巡り,潮位変動に伴うマングローブ林からのDIC,TA,DOC,CH4の流出量を測定しました.また,堆積年代を調べるための土壌コアの採取も行いました.

調査に同行してくださったWang Kangnianさん,お世話になりました.

JpGU2023への参加

2023年5月21日から26日にかけて幕張メッセで開催されたJapan Geoscience Union (JpGU) Meeting へと参加しました.昨年度に引き続き沿岸海洋生態系-2.サンゴ礁・藻場・マングローブセッションで発表を行いました.発表タイトルは「 Inorganic carbon cycle in mangrove soils and possibility for assimilation of outwelled mangrove carbon in seagrass and coral ecosystems」で,Δ14Cをトレーサにしてマングローブ林内の無機炭素循環を解析した内容となっています.また,光栄なことに大気水圏科学セッションの学生優秀発表賞を受賞しました.

詳しくはこちら.日本地球惑星科学連合2023年大会 学生優秀発表賞受賞者 | 日本地球惑星科学連合 (jpgu.org) 

福浦漁港のワカメ養殖調査

2023年327日から28日にかけて福浦漁港にあるワカメの養殖場での調査を実施しました.ブルーカーボンを目的としたワカメの養殖による炭素貯留に関する研究が進行中で,今回はワカメが放出する溶存有機物に関して主に調査しました.


第70回日本生態学会大会への参加

2023年317日から21日にかけて第70回日本生態学会大会へとオンラインで参加しました.物質循環分野に「吹通川マングローブ,海草,サンゴ礁生態系間の炭素・栄養塩循環」という題でポスターを掲載しました.2022年度の調査の成果で,ラジウム同位体を用いて沿岸海域を循環する炭素と栄養塩へのマングローブの寄与を推定しました.大変光栄なことに,物質循環分野のポスター賞最優秀賞に選ばれました.

詳しくはこちら.70回大会ポスター賞 (esj.ne.jp) 

ミクロネシア連邦でのマングローブ調査

2023年3月4日から12日にかけて,南山大学藤本潔先生が主宰するミクロネシア連邦ポンペイ島でのマングローブ調査に参加してきました.

熱帯域に位置するミクロネシア連邦には世界でも樹高が最大規模のマングローブが生育しています.藤本先生の研究チームは,これまで四半世紀にわたり調査を実施しているそうです.第二次世界大戦頃まで日本領だったこともあり,至る所に日本の面影を感じる島でした.

吹通川マングローブ林での現地調査

2022年7月23日から9月5日にかけて,博士研究の調査で石垣島に滞在し吹通川マングローブ林で調査を実施しました.昨年度に引き続き修士2年のPhyo thet Naingさんに全日程調査に同行して頂きました.

港湾空港技術研究所や福井県立大学の皆さん,東京大学大気海洋研究所の土屋考人さんの協力もあり,何とか無事に調査を終えることができました.