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現地調査(2025. 8)
CREST CP-Xの一環として、JAMSTECの長谷川さんと共同で奄美大島住用川マングローブ林にて調査を行いました。調査ではクリークでの多点採水に加えて、湿地にて1m越えの3本の土壌コアを採取しました。
今後は土壌有機物や間隙水、クリーク水に含まれる炭素の年代と共に、そこに含まれている細菌叢の解析が進むことで、有機物の再分解過程における細菌の役割が明らかになることが期待されます。横山研D1のJessさんに調査に協力いただきました。ありがとうございました。
現地調査(2025. 7)
今年度ですがCREST Y-X(若手向けの個人研究)とCREST CP-X(さきがけとの共同研究。JAMSTECの長谷川さんと申請)に採択頂きました。CREST Y-Xではマングローブ水域における短寿命ラジウム同位体(224Raと223Ra)と放射性炭素同位体(14C)の同期観測を目指し、CP-Xでは土壌有機物の再分解過程における細菌叢の役割を追います。
これに先立ち石垣島名蔵アンパルマングローブ林にて調査を行いました。調査では名蔵大橋への係留系の設置と24時間の連続採水、堆積物と間隙水の採取、河川水の採取を行いました。
大海研PDの中島さん、東大地惑の南館さん、横山研D1のCatherineさんに調査に参加して頂きました。ご協力いただきありがとうございました。
論文出版(2025. 5)
博士研究の成果がLimnology and Oceanography誌に掲載されました。石垣島の吹通川マングローブ林を対象に、放射性炭素同位体をトレーサとして用いることで、マングローブが光合成により大気CO2を吸収してから土壌内部での分解により海洋にDICとして再び流出するまでの時間を検証しました。近年、マングローブから海洋へのDIC輸送が注目を浴びていますが、本研究では海洋に輸送されるDICが平均で数百年前に堆積した有機物を起源とすることを明らかにしました。
Nakamura, W., et al. (2025), Radiocarbon analysis reveals decomposition of old soil organic carbon into dissolved inorganic carbon in a subtropical mangrove ecosystem. Limnology and Oceanogrphy. https://doi.org/10.1002/lno.70060
日本国際賞受賞式への参加(2025. 4)
港湾空港技術研究所の桑江さんからご推薦をいただき、2025年度の日本国際賞(Japan Prize)を受賞されたCarlos M. Duarte博士と若手研究者との学術懇談会に参加しました。Duarte博士は世界的に著名な海洋学者であり、特にブルーカーボン研究における顕著な成果が評価され、本賞を受賞されました。
Duarte博士の受賞講演は以下から視聴可能です。Tomorrow is today: Ocean-positive economies are essential for a sustainable future
新規マングローブ調査2件(2025. 4)
2025年度より、新たにマングローブ水域における放射性炭素動態に関するプロジェクトが始まりました。それに先立ち、4月9日〜11日には種子島大浦川マングローブ林にて中島さん(大海研PD)と、また4月23日〜25日には奄美大島住用川マングローブ林にて横山先生、本田さん(横山研特任専門員)、Shishさん(横山研B4)と予備調査を実施しました。
マングローブ湿地から流出する炭素年代の季節変化を追う予定です。
2024年度の振り返り(2025. 3. 31.)
2024年4月にCREST「微量高速14C分析による水圏炭素動態解明手法の開発」の特任研究員として、琵琶湖環境科学研究センターと東京大学大気海洋研究所に就職して1年経ちました。有機地球化学に関する知識不足を痛感しながら、湖水DIC、沈降粒子、プランクトン、堆積物等の14Cを測りまくった一年間でした。拠点を滋賀に移したことで色々と心配でしたが、山口さんをはじめ周りの研究者の皆様に恵まれ、日々充実した研究生活でした。
面白い結果も出つつあり、来年度以降の研究の発展が楽しみです。
月刊海洋2025年4月号への寄稿(2025. 3. 28.)
日本地球惑星科学連合大会の「沿岸海洋生態系―サンゴ礁・藻場・マングローブ―」セッションで発表していたご縁から、同セッションでの関連発表をまとめた月刊海洋2025年4月号に「石垣島吹通川河口におけるマングローブ湿地を介した無機炭素動態」という題で原稿を寄稿させていただきました。2024年1月にGeochemical Journalから出版した論文「Changes in DIC/TA ratio by tidal asymmetry control pCO2 over a spring-neap tidal cycle in a subtropical mangrove forest in Japan」の内容を中心に、石垣島吹通川マングローブ水域での無機炭素動態を日本語で論じたものです。
原稿のpdfはresearchmapからダウンロード可能です。
ミクロネシア連邦ポンペイ島でのマングローブ調査
2024年9月1日から11日にかけて南山大学の藤本潔教授が主宰するミクロネシア連邦ポンペイ島(ポナペ)でのマングローブ調査に参加しました。藤本先生らは過去30年間ポナペで調査を続けており、私は3度目の参加でした。台風10号の襲来により渡航前に色々とバタつきましたが、現地では天候に恵まれ無事に調査を終了しました。今回の調査でも現地の森林局(Forestry)の方々に大変よくしていただき、温かな気持ちになりました。森林局の皆さんには感謝しかありません。
プロジェクトが50年の節目を迎えられるように、微力ではありますが研究者として貢献できるようにこれからも精進していければと思います。
2024. 3. 21. 大学院博士課程の修了
東京大学大学院新領域創成科学研究科を修了し,博士号(環境学)を取得しました.また,大変光栄なことに新領域創成科学研究科の研究科長賞を頂きました.博士研究にご協力いただきました全ても皆様に感謝申し上げます.特に,指導教員である佐々木先生には大変お世話になりました.今後とも引き続き研究でご一緒できればと思います.
決して楽ではありませんでしたが,とても充実した3年間でした.
2024. 3. 4 国際ワークショップでの研究発表
JIRCAS(国際農林水産業研究センター)で開催された国際ワークショップ「Mangrove Management and Monitoring ―Long-term mangrove monitoring considering the climate change risks-」へ研究室の留学生2名と共に参加しました.フィリピンやマレーシア,インドネシアなどの東南アジアを中心とした,各国のマングローブ研究の現状について勉強することができました.私はマングローブ生態系内の無機炭素循環に関する研究について発表しました.
ご企画頂きましたJIRCASの皆様,講演の機会を与えていただきました諏訪様,大変貴重な経験をさせていただきましてありがとうございました.
Geochemical Journalへの論文掲載
博士論文の成果が「Geochemical Journal」へと掲載されました.論文タイトルは「Changes in DIC/TA ratio by tidal asymmetry control pCO2 over a spring-neap tidal cycle in a subtropical mangrove forest in Japan」です.
マングローブ水域では土壌内部からの蓄積したDICの流出により下げ潮時に極めて高いpCO2 となることが知られています.このマングローブ水域のpCO2には干満の差に起因する半日周期の変動と,潮位振幅(大潮小潮間)に起因する半月周期の変動があります.これまでの研究では,半月周期のpCO2の変動は,潮汐とマングローブ沼地の物理的な相互作用により起因すると考えられていました.本研究では,石垣島吹通川マングローブ水域での約2週pCO2の連続観測と,空間的なDICとTAの測定結果から,半月周期のpCO2は潮汐とマングローブ沼地の物理的な相互作用に加えて,沼地の冠水時間の増加に起因するDIC/TA比の上昇が支配要因であることを明らかにしました.
詳細は以下の通りです. https://doi.org/10.2343/geochemj.GJ24003
水圏環境グループのHydrosphere Science Seminarでの発表
12月21日に東京大学水圏環境グループの主催するHydrosphere Science Seminarで「Stock and Flow. Inorganic Carbon Cycle in a Mangrove Ecosystem」という題で1時間程度の講演を行います.
Hydrosphere Science Seminarは生産技術研究所の山崎大先生が企画している水圏を対象とする研究セミナーになります.今回縁があり,博士論文の内容を発表する機会を頂きました.誰でも参加可能ですので興味のある方は以下のURLからご登録下さい.
Journal of Marine Science and Engineeringへの論文掲載
博士論文の成果が「Journal of Marine Science and Engineering」へと掲載されました.論文タイトルは「A Tidal Flat Adjacent to a Fringe Mangrove Forest Mitigates pCO2 Increases and Enhances Lateral Export of Dissolved Carbon」です.
前浜干潟に形成するFringe型マングローブ前面にて大潮小潮間のpCO2変動要因を明らかにし,海洋へのTA,DIC,DOCの輸送量を推定しました.マングローブ水域では通常潮位に対応して下げ潮時から干潮時にかけてpCO2が高濃度に達します.今回調査を行った西表島由布島対岸のマングローブ林では前面の干潟で一次生産によりpCO2の増加が抑制され,流出したDICがより海洋に留まる可能性が示唆されました.
詳細は以下の通りです. https://doi.org/10.3390/jmse11122356
第29回マングローブ学会年次大会での招待講演
12月2日に東京農業大学で開催された第29回マングローブ学会年次大会での公開シンポジウム「マングローブ研究の最前線:Part 2」にて招待講演を行いました.
講演題目は「マングローブ生態系内の土壌ー水ー大気間の無機炭素循環」です.博士研究を通じて明らかになった我が国の8つのマングローブ水域での無機炭素動態について紹介しました.マングローブ生態系は土壌内部への炭素の隔離・貯留量が注目を浴びていますが,土壌から海洋への無機炭素輸送はマングローブ生態系内の最大の炭素貯留機能になる可能性を秘めており,今後更なる詳細が解明されることが期待されます.
第70回海岸工学講演会と第11回Asia and Pacific Coasts(APAC)への参加
11月15日から17日にかけて京都で開催された第70回海岸工学講演会とthe 11th International Conference on Asian and Pacific Coasts (APAC)へと参加しました.私は前浜干潟に形成するマングローブ林と感潮河川沿いに形成するマングローブ林での大潮から小潮にかけるpCO2の変動の違いについて発表しました.
Marine Environmental Researchへの論文掲載
修士時代から続けていた日本製鉄株式会社との共同研究成果が国際誌「Marine Environmental Reseach」に採択されました.Ocean based carbon dioxide removalの一環として製鋼スラグを用いたアルカリ活性化について検討した論文です.
東京湾から直接導水可能な干潟と浅場を模擬したメソコスム水槽において,製鋼スラグと浚渫土砂を敷設した実験区と浚渫土砂のみを敷設した対照区を準備し,1年間の対照実験を実施しました.その結果,メソコスム水槽内では製鋼スラグの利用が水中のpCO2分圧の低下に寄与すること,製鋼スラグによる土壌の固化により浚渫土砂のみを用いた場合よりも一次生産者の増加へ寄与することを明らかにしました.
論文の詳細は以下の通りです.https:// doi.org/10.1016/j.marenvres.2023.106223.
東京湾での船上観測の実施
2023年9月22日に修士1年のGuoさんと共に,千葉県水産総合研究センターが主催する定期観測船に乗船し東京湾での調査を行いました.天候にも恵まれ,湾内20か所にて空間的な採水と水質測定を実施できました.次回は2月の調査を予定しています.
千葉県水産総合研究センターの皆様大変お世話になりました.
地球惑星環境学国際研修Ⅱへの参加
2023年9月6日から9月16日にかけて全学の学生向けに開講されている地球惑星環境学国際研修Ⅱに参加してきました.オーストラリア国立大学の学生と共に,東北,富士山,浜名湖周辺でのフィールドワークを行いました.
大気海洋研究所の横山研の皆様,大変お世話になりました.
ミクロネシア連邦ポンペイ島でのマングローブ調査
2023年8月29日から9月6日にかけて南山大学の藤本先生が主宰するミクロネシア連邦ポンペイ島でのマングローブ調査に参加しました.今回の調査では,プロット(P)K,PCに加えて前回訪れることのできなかったPRとPEにて作業を実施しました.
PK:内陸部のBruguiera林で浸食が顕著なプロット.PC:海岸沿いのFringe林.樹高の高いRhizophoraが優先.PR:海岸沿いのFringe林.樹齢の若いRhizophoraが優先.PE:河口沿いに発達した最も林齢が進行したクライマックス林.PS:Soneratia種が優先した海岸沿いのFringe林.発達した筍根が特徴
博論最後の現地調査 in 石垣島,西表島
2023年6月27日から7月13日にかけて石垣島と西表島で博士研究としては最後の調査を実施しました.今回の調査では,石垣島と西表島の8つのマングローブ林を巡り,潮位変動に伴うマングローブ林からのDIC,TA,DOC,CH4の流出量を測定しました.また,堆積年代を調べるための土壌コアの採取も行いました.
調査に同行してくださったWang Kangnianさん,お世話になりました.
JpGU2023への参加
2023年5月21日から26日にかけて幕張メッセで開催されたJapan Geoscience Union (JpGU) Meeting へと参加しました.昨年度に引き続き沿岸海洋生態系-2.サンゴ礁・藻場・マングローブセッションで発表を行いました.発表タイトルは「 Inorganic carbon cycle in mangrove soils and possibility for assimilation of outwelled mangrove carbon in seagrass and coral ecosystems」で,Δ14Cをトレーサにしてマングローブ林内の無機炭素循環を解析した内容となっています.また,光栄なことに大気水圏科学セッションの学生優秀発表賞を受賞しました.
詳しくはこちら.日本地球惑星科学連合2023年大会 学生優秀発表賞受賞者 | 日本地球惑星科学連合 (jpgu.org)
福浦漁港のワカメ養殖調査
2023年3月27日から28日にかけて福浦漁港にあるワカメの養殖場での調査を実施しました.ブルーカーボンを目的としたワカメの養殖による炭素貯留に関する研究が進行中で,今回はワカメが放出する溶存有機物に関して主に調査しました.
第70回日本生態学会大会への参加
2023年3月17日から21日にかけて第70回日本生態学会大会へとオンラインで参加しました.物質循環分野に「吹通川マングローブ,海草,サンゴ礁生態系間の炭素・栄養塩循環」という題でポスターを掲載しました.2022年度の調査の成果で,ラジウム同位体を用いて沿岸海域を循環する炭素と栄養塩へのマングローブの寄与を推定しました.大変光栄なことに,物質循環分野のポスター賞最優秀賞に選ばれました.
詳しくはこちら.70回大会ポスター賞 (esj.ne.jp)
ミクロネシア連邦でのマングローブ調査
2023年3月4日から12日にかけて,南山大学藤本潔先生が主宰するミクロネシア連邦ポンペイ島でのマングローブ調査に参加してきました.
熱帯域に位置するミクロネシア連邦には世界でも樹高が最大規模のマングローブが生育しています.藤本先生の研究チームは,これまで四半世紀にわたり調査を実施しているそうです.第二次世界大戦頃まで日本領だったこともあり,至る所に日本の面影を感じる島でした.
吹通川マングローブ林での現地調査
2022年7月23日から9月5日にかけて,博士研究の調査で石垣島に滞在し吹通川マングローブ林で調査を実施しました.昨年度に引き続き修士2年のPhyo thet Naingさんに全日程調査に同行して頂きました.
港湾空港技術研究所や福井県立大学の皆さん,東京大学大気海洋研究所の土屋考人さんの協力もあり,何とか無事に調査を終えることができました.