人と出会い、地域と関わる。福島に通い続ける理由
キウイ再生プロジェクトやツアー企画に取り組む東北大学生の想い
キウイ再生プロジェクトやツアー企画に取り組む東北大学生の想い
Introduction 紹介文
福島県大熊町でのキウイ再生や放射線教育など、多角的なアプローチで復興に携わる土明良さん。
現地での活動を重ねる中で見えてきた地域の課題や、学生ならではの視点、活動先への想いについて詳しくお伺いしました。
大熊町のキウイ再生をはじめ、多面的に福島と関わる
——現在福島県で様々な活動を行っているとのことですが、福島県に関心をもったきっかけはなんでしょうか。
もともとは僕は東京出身で、東北に来たからには震災のことを学んでおきたいと思っていました。川内キャンパスで一限が始まる前、避難訓練の放送が流れますよね。それを聞いたとき、東京にいた頃よりもずっと災害が生活のそばにあることを実感して、関心が強まりました。
そこから1年生の夏に気仙沼市(宮城県)や陸前高田市(岩手県)を訪れ、さらに詳しく知りたいと思って復興に関する授業を取りました。その関連で南相馬市(福島県)の小高でのフィールドワークに参加した時、同じ南相馬市という括りでも、原発からの距離や避難の形態によって、住民の方々の過ごし方も、抱えている悩みも、街の雰囲気も違うという話を聞いて、他の街も見てみたいと思うようになりました。
春休み中、自分一人で、自費で浪江町(福島県)や富岡町(福島県)を巡りました。いろいろな街を見て回る中で、もっと深く、継続的に関わりたいという思いが強くなり、福興youthというサークルに入ることを決めました。
——取り組んでいる活動について教えてください。
福興youthで僕がメインで取り組んでいるのは、大熊町(福島県)の「おおくまキウイ再生クラブ」でのお手伝いです。大熊町は、原発事故で全町避難になった場所で、かつてはキウイの大きな産地でしたが、震災で木も土も失われてしまいました。2019年に町へ戻れるようになってから、また土を入れ替え、苗木を植えて、特産品を復活させようという活動が続いています。僕たちはそこで定期的に作業会に参加して、参加者と交流したり、SNSの運営のお手伝いをしたりしています。
福興youthでは他にも、自分が企画を持ち込んでツアーを運営することも多いです。大熊町内を巡ったり、農業をテーマにしたり、あとは現地で活動している語り部の方のお話を伺いに行くツアーも企画してますね。同時に、帰還困難区域について解説している資料館にも寄って、ツアー参加者にしっかりと学んでもらう場を作っています
福興youth以外の活動だと、「浜通り研修」という授業のチューターを務めています。これは大阪大学がもともと行っていたプログラムに東北大学も参画したもので、放射線についての科学的なデータや数値をどう捉え、どう判断するかという判断力を鍛える内容です。僕はそこで講義の内容を考えたり、現地研修の運営の補助をしたりしています。
他にも、大熊町での農業インターンに参加するなど、幅広く福島にかかわっています。
キウイ収穫祭(大熊キウイプロジェクト)にて参加者にキウイクイズを出している様子
現場で見えた、子どもの居場所と学びの課題
——活動の中で楽しかったこと、難しかったことはありますか。
活動の中で一番楽しいのは、やっぱり自分たちで決めて形にできることですね。 ただの自己満足じゃなくて、地域に求められていることを自分たちなりに考えて実行し、「次はこうすればもっと良くなるんじゃないか」と試行錯誤するのはやりがいもあって楽しいです。
一方で、難しかったことは放射線の伝え方です。放射線の話は突き詰めると量子力学のような専門的な話になってしまいます。それを専門外の人、一般の人にどう伝えるか。これは、今もずっと考え続けている課題です。
——活動先で見聞きした課題はありますか?
現場に入って一番強く感じたのは、子どもたちの居場所と教育環境が不足していることです。大熊町には「ゆめの森」という学校ができましたが、放課後に学べる塾や、友達と集まれるような遊び場が足りません。中学生の中には、わざわざ隣町の南相馬市まで塾に通っている子もいます。学童の先生ともお話ししたんですが、大学生が来てくれるだけで本当に嬉しいと言っていただけて。大人が毎日全力で走り回る子どもたちの遊び相手をするのは体力的にかなりハードです。鬼ごっこを全力でやるのは、大人にはキツいですよね(笑)。そこに僕ら大学生が入っていく余地は間違いなくあるなと感じました。
もう一つは、先ほどの放射線の話とも重なりますが、住民の方々の「放射線について知りたい」というニーズに応える機会が不足していることです。大熊町にはゆめの森という学校に魅力を感じて移住してきた家庭も多いです。その中で放射線について正しく、かつ身近に知りたいと思っている方々は意外と多いのですが、それを気軽に学べる場がまだ十分に整備されていないと感じました。
——このような課題に対して、学生からアプローチできることはありますか?
子どもたちの居場所づくりに対しては、今後もっと本格的に関わっていきたいと考えています。僕たち大学生は学期中は忙しいですが、夏休みや春休みなど特定の期間なら集中的に関わることができるので、そこで学習支援を行ったり、放課後の新しい遊び場を作ったりできると思います。
また、放射線に対しては、自分たちで身のまわりの放射線を測ってみるなど町の人を巻き込んで、楽しんで学べるような企画ができればと考えています。
活動の先にある、新しい出会いと広がる世界
——難しいこと、課題感などを聞いてきましたが、それでも活動を続けられる理由はなんでしょうか。
やはり楽しいからですね。通い続けるうちに、現地に面白い人たちがたくさんいることを知りましたし、お世話になった人たちもたくさんいます。そういった方たちになにかお返しができないかなというところもありますし、他の大学の人や町の人とつながることができるのはとても楽しい。ボランティアをしに行くというよりはそういう人たちに会いに行っているという感覚の方が近くて、これが続けられている理由だと思います。
——活動の魅力はなんですか?
魅力はやはり大学の中にいたら絶対に出会えないような人たちと、フラットに繋がれることです。利益を求めていないからこそ、年齢や肩書きに関係なく対等に話せる。福島だけではなく、能登半島地震の災害復旧ボランティアにも行きましたが、そこで出会った人たちとつながりができ、夏には能登の伝統的な「あばれ祭り」に関わらせてもらいました。新しい人、自分とは違う考え方を持つ人と出会うことで、新たに色々なことが知れて、そこから自分と違う世界が見えてきたり、自分の世界がどんどん広がっていったりするのは、とても魅力的です。
浜通り研修のチューターとして、放射線測定のサポートをしている様子
みなさんへメッセージ
——最後に、まだボランティアへ一歩を踏み出せていない学生へメッセージをお願いします。
ボランティアってそんなに気負わずできることなんじゃないかなと思っています。崇高な目的がなくてもできますし、少し興味を持った活動に一回行ってみるといいと思います。意味を無理に見出す必要もなく、楽しめれば全然いいと思います。それが継続すると、自分のため、はたまた他の人のためになるのがボランティアですので、気になるものがあったらポチっと応募して行ってみたらいいと思います。