OTOTEN 2023 出展情報
今年も OTOTEN 2023 を無事終えることができました。ご来場の皆様ありがとうございました。
なお、今年の展示では、以下の3点について改善致しました。
①.プリアンプを止め、パッシブ・アッテネーターを採用。
⇒全体域で安定感が増し、解像度・低域の締まり等が大幅に改善されました。
②.アナログ信号ケーブル6ヶ所12本を短い(最短15cm)ものに変更。
⇒短くする度に付帯音が減少し透明感が増してゆきました。
③.ウーファーのコイル径をΦ160μmよりΦ600μmに変更。
⇒振動板の厚さがΦ160μmよりΦ600μmになったため、背面の音に対する遮音性能が高まり、
低域の切れが良くなって中域とのつながりがスムーズになりました。
ご来場の皆様の音質に対するご意見は、私がこれまでイメージして来たものとほぼ同じという印象でした。ブース内での限られた試聴時間でもそれだけの内容が伝わっていると思うと、展示会における調整の大切さについて改めて考えさせられました。
会場で配布しましたパンフレットと演奏で使用した14曲を、その時のコメントと共に以下に掲載します。採用した曲は、再生システムの音質・音場の進化をチェックするために使用してきた曲で、ご参考になれば幸いです。なお、ハイレゾ音源につきましては、全て e-onkyo music で購入できます。
●パンフレット
●アーティスト: ビリー・ジョエル
●曲 名 : 孤独のマンハッタン(I Don't Want to Be Alone)
●使用アルバム : グラス・ハウス(Glass Houses)
● アルバム・リリース : 1980年 3月
● 音 源 : CD
【 コメント】ビリージョエルは、CDで発売された楽曲が世界第1号というタイトルを持つアーティスト。
この曲は1980年という年代を考えるとかなりの音質で、ヴォーカル再生音の質や全体のバランス等、様々なチェックで利用しています。
音源はCDですがリッピングは不可欠で、CDプレイヤーを使用した演奏では音質・音場共にかなり質が低下してしまいます。
ハイレゾ音源もありますが、音質が良いと感じたCD音源の方を採用しています。所有しているハイレゾの約1/3については、このようにCDクオリティの方が良いと感じています。
●アーティスト: 松任谷由実
●曲 名 : 輪舞曲 (ロンド)
●楽曲リリース : グラス・ハウス(Glass Houses)
● アルバム・リリース : 1995年11月13日 シングル盤(CDシングル)
● 音 源 : CD
【 コメント】この曲には、左右に広く奥行きのある音場が収録されており空間の雰囲気が音楽性に大きく貢献しています。
そのような音場が再現されるためには、パーカッションによる高音域は、空気に溶け込んだ感じで再生される必要があります。
また今回、ウーファーの振動板には新たに太い(φ0.6mm)アルミ線を採用しましたが、それによって背面の音に対する遮音性能が高まり、低域の切れが良くなって中域とのつながりがスムーズになりました。これらは、低域を自然に表現するためにも役立っています。
ハイレゾ音源もありますが、リッピングしたCD音源を採用しています。
● 作 曲: ヴィヴァルディ
● 曲 名: 作品10 協奏曲第3番『ごしきひわ』 第3楽章
● 演 奏: 有田正広(フラウト・トラヴェルソ)東京バッハ・モーツァルト・アンサンブル
● 録 音:1990年
●アルバム名:ヴィヴァルディ:フルート協奏曲集
● 音 源 : CD
【 コメント】フルートの前身となる古楽器のフラウト・トラヴェルソという木管楽器が使用されています。各楽器の音は澄み切った感じで、さらに立体感のある録音が臨場感を高めているようです。
【44.1kHz、16bit】のオリジナルマスター音源を、【96kHz、24bit】でリマスタリング(日本コロムビアORTマスタリング)したというハイレゾ音源もありますが、ここでは音質が良いと感じたCD音源の方を採用しています。
●アーティスト : 沖 仁
● 曲 名 : フエゴ ~炎~ (ブレリア)
●アルバム名 : Concierto [コンシエルト] ~魂祭~
● 録 音 : 2011年
● 音 源 : ハイレゾ(DSD、2.8MHz)
【 コメント】アンプやスピーカーユニット等、再生装置の解像度の差が明確に出てしまう曲です。
CDクオリティと比較したときにハイレゾ効果も良く分かります。
スピーカーユニットの解像度が優れていても、ユニットの周囲に空間がなかったり音響パネルを利用したりすると、音の反射の影響でこの曲の繊細な感じは出せなくなってしまいます。そのような音の変化が良く分かる曲でもあります。
曲のイメージや音楽性に対する評価が音源や再生装置によって大きく変わってしまう曲と言えます。
●アーティスト: 矢沢 永吉
●曲 名 : 時間よ止まれ (セルフカバー)
●使用アルバム : ALL TIME BEST ALBUM
(Remastered 2022)2002年発のセルフカバーアルバム
● 音 源 : ハイレゾ(48 KHz、24 ビット)
【 コメント】音質が改善されると先ず付帯音が減少します。さらに改善が進むとヴォーカルの周囲に空間を感じるようになって立体感が出てきます。演奏空間が試聴している空間と一体化したように感じられれば理想的です。
この曲は、そのような状態をチェックするためにも利用しています。
音質や音場が音楽性や説得力に強く影響していることを感じる曲でもあります。
因みに、スーパーウーファーには口径20cmのコーン型ユニットを採用しています。この演奏を聴くと、超低域の再生に口径の大きなスピーカーユニットは必要ないということを実感します。
●アーティスト: 宇多田ヒカル
●曲 名 : SAKURAドロップス
●楽曲リリース :2002年 5月 9日 シングル盤(CDシングル)
● 音 源 : ハイレゾ(96 KHz、24 ビット)
【 コメント】高域は繊細な感じですが低域はぼやけた感じになりがちなため音全体のバランスを取ることがかなり難しい曲だと感じています。
演奏では、音が空気に溶け込んでゆくように表現され、音場が大きく広がることによって音楽性が高まります。
この曲の音楽性は、特にそれらの影響を大きく受けるようです。
振動板内で振動の伝搬が多くなったり、スピーカーユニットの周囲で音の反射が多くなったりすると、この空気に溶け込んだ感じはなくなってしまいます。同様に、LCネットワークを採用しただけでも、これらの効果は得られなくなってしまいます。
●作 曲: アルビノーニ
●指 揮: ニコル・マット
●曲 名: 五声の協奏曲(2つのオーボエのための協奏曲)
(ニ長調 作品9の12)Ⅱ.Adagio
●演 奏:ヨーロピアン・チェンバー・ソロイスツ
●録 音: 2005年
●アルバム名: オーボエ協奏曲全集
● 音 源 : CD
【 コメント】今回より、アナログ信号ケーブル6本を最短15cmまで短くしました。高域はさらに繊細になり、演奏空間が試聴している空間と一体化したような表現に大きく貢献しています。
また、プリ・アンプを止めてパッシブ・アッテネーター(単なるボリューム)に変更しました。全体の安定感が大きく増し、低域も引き締まった感じとなりました。
なお、これらの効果を得るためにはシステム全体を理想的な状態としておく必要があります。例えば、音響パネルや広いバッフル板等、反射を利用した音の調整方法を採用していると、これらの改善効果は得られなくなってしいます。
●アーティスト: 大瀧詠一
●曲 名 : 空飛ぶくじら
●使用アルバム: 大瀧詠一
●楽曲リリース :1972年5月25日
収録のシングル : 空飛ぶくじら
● 音 源 : CD
【 コメント】音質・音場共に優れた録音ですが、収録は1972年と古く、しかも音源はCDクォリティ(44.1kHz/16bit)ということで色々と参考になる曲でもあります。
ハイレゾ音源もありますが、CD音源の方を採用しています。
所有しているハイレゾの約1/3については、CDクオリティに比べ音質が劣っているように感じられます。このようなハイレゾは、低域寄りのバランスで切れが悪いという印象ですが、リマスタリングの影響が大きいようです。
●曲 名 : 千鳥
●演 奏 : 小一堂宣伝社社中
●アルバム名 :日本の大道芸 チンドン屋
発 売 : 2001年
● 音 源 : CD
【 コメント】当り鉦(あたりがね)、ラッパや太鼓等、単純に音として楽しむこともできます。
VCDスピーカー・ユニットは構造により「振動板内での振動の伝搬」を大きく減少させています。
この構造の採用によって、次のような音を実現しています。
●コーン型、ドーム型、平面磁界駆動型に比べ、切れのある音。
●描写の単位が空気に溶け込むように細かい音。
●描写は細かいが静電型のようなパンチ力不足にならない音。
他の方式とこのような点で比較した試聴も面白いと思います。
●アーティスト: イーグルス
●曲 名 : ホテル・カルフォルニア
●使用アルバム: Hell Freezes Over
アルバム・リリース :1994年11月 8日
● 音 源 : CD
【 コメント】演奏ではライブの雰囲気がよく伝わってきます。
後方でパーカッションによる重低音の響きがホールいっぱいに広がり、作り出される独特の雰囲気がとても魅力的です。
重低音部は周波数が40Hz前後ですが、このスピーカーシステムでは口径が小さな20cmのコーン型ユニットで再生しています。
ユニットは大口径でなくても、低い周波数を出力できれば重低音を再生することができます。むしろ忠実な音の再生という点では、大口径にしない方が好ましいと考えています。
●アーティスト :テレサ・テン Duet With 夏川りみ
● 曲 名 :別れの予感
●使用アルバム :テレサ・テン生誕60年ダイヤモンド・ベスト
発 売 : 2012年
●楽曲リリース : 1987年 6月21日(シングル盤)
● 音 源 : CD
【 コメント】この曲は後から 夏川りみ の声を合成しているようですが、違和感は感じられません。
とても切れのある澄み切ったボーカルで、CDクォリティ(44.1kHz/16bit)の潜在能力の高さを感じます。
再生される音の切れが良くなると、音楽性だけでなく テレサ・テン の歌唱力もアップしたように感じられます。
良い音で再生するということの大切さを再認識させられます。
●アーティスト: マイケル・ジャクソン
● 曲 名 : スムーズ・クリミナル
● 楽曲リリース : 1988年10月8日 シングル盤(CDシングル)
●音 源 : ハイレゾ(96 KHz、24 ビット)
【 コメント】この曲は、バックコーラスによってその魅力が倍増しています。
ただ、その効果を得るためには音の切れと広がりが必要で、さらに、広がった空間に音像が分離して配置されることも大切です。
これらを妨げる要因の一つが、キャビネットやバックチャンバー内から振動板を通過して前方に漏れ出る音です。振動板はキャビネット機能としてその一部を構成していますが、キャビネットに比べると極端に薄いため、振動板を通過してくる音も多くなってしまいます。
その対策を行うことがとても大事になってきます。
●作 曲: アルビノーニ
●指 揮: ニコル・マット
●曲 名: 五声の協奏曲(2つのオーボエのための協奏曲)
(ト長調 作品9の6)Ⅱ.Adagio
●演 奏:ヨーロピアン・チェンバー・ソロイスツ
●録 音: 2005年
●アルバム名: オーボエ協奏曲全集
● 音 源 : CD
【 コメント】各楽器は音が繊細で広い空間に分離して配置され、演奏空間が試聴している空間と一体化したように感じられます。
立体音響に関する様々な技術が紹介されていますが、この曲のようにCD音源を使用した2chステレオでも、音質や音場に対する潜在能力の高さが感じられます。
録音次第ということなのでしょう。
音響パネルや広いバッフル板等、反射を利用した音の調整方法を採用すると、この曲の繊細な感じや試聴空間と一体化したように感じられる音場は再現できなくなってしまいます。
●アーティスト: 井上 陽水
● 曲 名 : リバーサイド ホテル
●使用アルバム : LION & PELICAN
●楽曲リリース : 1982年 7月 5日
●音 源 : ハイレゾ(192 KHz、24 ビット)
【 コメント】この曲の魅力は、音場の広さと高域の繊細さに依るところが大きく、再生装置によって音楽性がかなり変わってしまうようです。
このスピーカーシステムでユニット周囲の空間をなくしたり、LCネットワークを採用したりすると、曲の粋な感じも消失してしまいます。
空間をなくすと反射音が多くなり、LCネットワークを採用するとそのインピーダンスが制動に大きく影響するからです。
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