インタビュー vol.2
Cello 大森 朔光
現役の音楽大学生や一般大学生、そして高校生、大学を卒業した社会人まで幅広い人が所属するVari Orchestra。異なる環境で学んできた団員たちは、それぞれどんなことを考えながらVari Orchestraで演奏をしているのだろうか。そんな音楽に関する“おしゃべり”に近いような形でお届けしていく企画です。
第2弾は、今週末の定期演奏会で演奏する、ハイドンのチェロ協奏曲でソリストを務めるチェロの大森 朔光さん。前回に引き続いて、ソリストへのインタビューです。彼もVari Orchestraの初回公演から参加するメンバーの1人で、今回の演奏会ではソリストとしてだけではなく、チェロの首席奏者も務めています。
Vari Orchestraで演奏してきて感じること、tuttiとsoloでの演奏の違いについて、お届けしていきます。
取材・文:神谷 咲妃
──大森さんはVari Orchestraに初回から参加して下さっていて、今回の演奏会で2回目の定期演奏会、弦楽合奏の演奏会を含めると4回目の演奏会となりますが、「指揮者なしのオーケストラ」で演奏してきて、何か感じることに変化はありましたか?
「いろいろなパートの人から意見を聞ける面白さがあると思っています。バリオケでは、一人ひとりがどうしたら良くなるかを考えて意見を交わし、しかもそれらを楽器の違いを越えて話し合うので、とても貴重な体験でした」
──今回の演奏会では協奏曲を演奏しますが、最終練習までを終えていかがでしたか?
「やはり1番感じたのは、普段演奏するオーケストラとの人数の差でした。何か要求があった時に、ピアノの場合は1人に伝えればいいわけですが、オーケストラの場合はそうはいきません。奏者が大勢いる上に、色々な楽器の特性や位置、そしてバランスなどに気をつける必要があり、こういったことを考えながら演奏するのは勉強になりました」
──前回のインタビューで上畠さんもそのことは仰っていました…!やはり人数が増えること、そしてオーケストラという様々な楽器がある環境での演奏ということで、ソリストの考えなければいけないことは格段に増えるのですね。大森さんは今回の演奏会で、他の2曲では首席奏者を務めますが、合奏での演奏とソリストとしての演奏で何か変化をつけていますか?
「そうですね、違いとしては主にビブラートのかけ方と、右手の扱いを気をつけました。合奏での演奏では、かなり音量を抑えることもあります。でもソロの場合では、例えば “p” の指示があったとしても、全体に聞かせる必要があるので、芯のある音を心掛けたりします」
──なるほど、1人なのか、大勢なのかによって、同じ “p” や “f ”と言っても実際に出る音量や音色には変化をつけているのですね。今のお話の中で、気になったのが「右手の扱いを気をつけた」ってところなのですが、詳しく聞いてもいいですか?私は管楽器奏者なので、どういう変化をつけたのか全然想像つかなくて…!
「そうですね…。右手の扱いは感覚的なことなので言語化するのは難しいですが、弦をつかむ感覚の違いと言えば良いでしょうか。響かせるために力まず、それでいてしっかり弦を捉えるような弾き方です。もちろん、オーケストラでもそのように弾く部分もありますが、ソロではより意識するようにしています」
──難しいところを分かりやすく説明してくださってありがとうございます。弦楽器は弓の扱いや弦のことなど、考えることが多くて奥深い楽器だと常々思っていますが、私の想像の範囲を超えていて、今回さらに弦楽器の魅力に触れた気がします。大森くんのコンチェルト、楽しみにしています。