インタビュー vol.1
Flute 上畠 由梨乃
現役の音楽大学生や一般大学生、そして高校生、大学を卒業した社会人まで幅広い人が所属するVari Orchestra。異なる環境で学んできた団員たちは、それぞれどんなことを考えながらVari Orchestraで演奏をしているのだろうか。そんな音楽に関する“おしゃべり”に近いような形でお届けしていく企画です。
インタビュー第1弾は、第2回定期演奏会でソリストを務めるフルートの上畠由梨乃さん。彼女は先月開催された第25回びわ湖国際フルートコンクール一般部門にて第1位に輝いたばかりの実力者。彼女はVari Orchestraの初回公演から参加し、今回の演奏会ではオーケストラ演奏者としても参加します。
今回みなさんには、彼女がどのように演奏会やコンクールに備えているのか、どんなことを考えながら演奏しているのかについて、お届けします。
取材・文:神谷 咲妃
──今回、上畠さんに協奏曲のソリストをってことを提案させてもらった時に、作曲家は全体のプログラムの年代の流れから事務局が決めていたのだけど、モーツァルトの協奏曲の第1番と第2番のどちらをやるかは上畠さんに選んでもらいましたよね。何か今回の演奏会で第1番を選んだ理由はありますか?
「そうですね。第1番はやっぱりコンクールや試験での演奏機会が多くて、ピアノ伴奏ではやったことが多かったけれども、オーケストラの伴奏ではやったことがなかったので、今回こちらを選びました。第2番の方は以前にオーケストラとやらせていただいたことがあったので、ぜひやったことのない方をやりたいなと」
──モーツァルトの協奏曲第1番は、コンクールや入学試験などの課題曲によく登場しますよね。こういった試験やコンクールでよく演奏する曲を、演奏会で演奏することで何か心持ちや準備に違いはありましたか?
「コンクールの準備の時に『コンクール』を意識しないから、大きな意識の隔たりはありません。けれども緊張の種類が違うから、練習での意識は変えるかな。私はすっごくあがり症で、コンクールなどの大きな舞台ではもちろんだけど、学内の小さな演奏会や、試験であっても緊張します。でもそれぞれの本番で緊張の種類が少しずつ違うので、練習の時に自分にかけるプレッシャーの種類を変えています。例えば、コンクールでは自分を追い込むようなプレッシャーをかけるけど、演奏会ではそういう緊張はないから、圧をかける練習はしないですね」
──なるほど、練習で本番と同じ緊張状態を作るっていうのは、本番の練習ではとっても大事ですよね。今のお話で演奏会ということでメンタル面での準備の違いのお話があったけれども、今回オーケストラ伴奏での演奏ということで、何か特別に準備しましたか?
「今回はオケとやるということで特別に意識したことといえば、自分の中の拍感、拍子感を考え直したくらいです。ピアノとやるときは2人で合わせれば良いし、特にこの曲は4拍子でテンポ変化もあまりない曲だから、こちらが意識しなくてもピアニストが合わせてくれることが多いと思うんです。でも大勢のオケ奏者と合わせるとなると、何となくの拍感ではできないと思いました」
──確かに、ピアノと比べると何倍もの人とテンポ感共有しないといけませんもんね。しかもこのVari Orchestraは指揮者がいないから、指揮者が示すテンポに乗ればいいという訳にもいかないし…。何かそういう指揮者がいないことでの難しさや、普段と違う準備を行いましたか?
「指揮なしのための準備はしなかったと思います。ピアノとやる時に、オケだったら何の楽器が演奏しているのかを楽譜に書いていたから、どこでどんな音が鳴るのかはある程度頭に入っていたので。だから今回指揮なしのオケだからということでは、すごく特別な意識はないかもしれません」
──指揮者がいようがいまいが、基本的な部分は変わらないのですね。上畠さんは今回の演奏会ではソリストとして以外に、オーケストラ奏者としても演奏するけれども、ポジションが変わることで演奏にはどんな変化をつけていますか?
「大きく変えてるのは、ビブラートです。ソロの時はまず音量が必要だから、上の響きを多めにして、ビブラートを深くかつ細かくかける。逆にオケ中でそういう演奏をしてしまうと浮いてしまうから、ビブラートをかけすぎないことや、周りに馴染ませることを意識しています」
──オーケストラの一員として演奏するのか、そのオーケストラを率いて演奏するのか。今回の演奏会では、上畠さんの両方の側面を見ることができるので、とっても楽しみにしています。今日はありがとうございました!
【Profile】
滋賀県出身。第71回全日本学生音楽コンクールフルート部門高校の部全国大会第1位。第23回びわ湖国際フルートコンクールジュニア部門第1位。第16回仙台フルートコンクール一般部門第3位。第25回びわ湖国際フルートコンクール一般部門第1位。平成29年度 一般財団法人 東京私立中学高等学校協会賞受賞。令和元年度 大津市文化奨励賞受賞。その他、国内コンクールにて入賞多数。これまでに、フルートを大友太郎、高橋聖純、菅井春恵、神田寛明、下払桐子、野原千代の各氏に師事。G・マシャエキ=ベア、M・ラリュー、R・グライス=アルミン各氏等のマスタークラスを受講し研鑽を積む。国立音楽大学附属高等学校を首席で卒業。同時に「東京都知事賞」を受賞。現在、特別給費奨学生として同大学4年次に在学中。
Vari Orchestra 第2回定期演奏会「指揮なし」
2022年7月1日(金)19:00 宮地楽器ホール大ホール
プログラム
ハイドン:チェロ協奏曲第1番〔独奏:大森 朔光〕
モーツァルト:フルート協奏曲第1番〔独奏:上畠 由梨乃〕
シューベルト:交響曲第5番