研究内容

研究キーワード

生体医工学,生体信号計測(脳波,筋電,心電,皮膚電気活動),バイオフィードバック,感覚,音刺激,重心動揺,めまい・ふらつき,てんかん,凍結治療,ミスマッチ陰性電位,事象関連脳電位,Raspberry Pi,IoT,リハビリテーション

主な研究内容

網膜投影方式の視域を広げる新たな光学素子の提案

 視力に依存せず、鮮明な像を網膜に直接投影できる光学系に網膜投影方式があります.網膜投影方式において,光を瞳孔の一点に収束させ,網膜に直接像を投影する手法(マクスウェル視)があり,これにより水晶体調節に依存せず、鮮明な像を見ることができます.水晶体調節に依存しないということは,弱視の人でも眼鏡なしで像を見ることができることを意味します.しかし,従来のマクスウェル視は,視域が狭く,我々が眼球回転させると像を網膜に投影できないという課題がありました.そこで,本研究では,マクスウェル視の視域を広げる新たな光学素子「球面型マルチピンホール」を提案しました.(特願2024-195084)

コード進行に着目した新たな楽曲推薦システム

  音楽ストリーミングサービスの普及に伴い、世の中の音楽の数が莫大に増加したことで、大規模な楽曲データベースからユーザの好みに合わせた楽曲を推薦する音楽推薦技術注目が集まっています.ユーザが好む楽曲要素の一つに「コード進行」があります.コード進行は簡単に表現するとピアノで演奏するときの左手の要素です.コード進行は音楽の基本的な構成要素であり、楽曲の雰囲気を作る重要な役割を担っています.つまり、楽曲の印象はコード進行によって大きく変化します。そこで、本研究では「コード進行の遷移」に着目した音楽推薦システムを提案しました。

マルチモーダル感覚呈示によるバイオフィードバックVR瞑想システム

 瞑想にはストレス軽減,幸福感の促進,感情の調整,注意力の制御,認知能力に対する肯定的な効果があります.一方で,瞑想状態を維持することは初心者には難しく,瞑想状態を正しく判断することも困難と言われています.従来研究にて,視覚、聴覚、触覚などの感覚の呈示やバイオフィードバックによるマインドフルネス体験の向上を目的とした研究は多く実施されていますが、マルチモーダル*でのバイオフィードバックによるマインドフルネスへのアプローチは皆無です.

 そこで, 本研究では,マルチモーダルなバイオフィードバックによる瞑想システムを提案しました.具体的には,自身の生体信号(心拍,呼吸,脳波)をヘッドバンド型簡易脳波計を使用して計測し,生体信号(状態)に応じてリアルタイムVR空間や感覚刺激(光, 音,振動,浮遊感,香り)が動的に変容していく没入感のあるバイオフィードバックVR瞑想システムをデザインしました.本システムはゲームエンジンのUnreal Engine 5で開発を行い,VRヘッドセットとしてMeta Quest3を使用しています.

*マルチモーダル:複数の形式や手段を組み合わせて情報を処理・伝達すること

音刺激が重心動揺軽減に及ぼす効果に関する研究

 高齢者に顕著である「めまい」「ふらつき」を軽減させることは超高齢化社会の現在において,健康寿命を延ばす上で大きな社会問題になっています.本研究では,「めまい」「ふらつき」を評価する重心動揺計測システムを製作し,音刺激が立位姿勢制御に及ぼす効果を重心動揺の軌跡や脳活動計測を通して検証しています.

 これまでの研究で,ホワイトノイズや指向性スピーカ,骨伝導や軟骨伝導イヤホンから呈示された音が重心動揺軽減に効果があることが示されました.将来的には,「めまい」「ふらつき」を軽減させる新たなリハビリテーション手法の提案や新たな機能を付加した補聴器の開発を目指しています.

振動を用いたナビゲーションシステムの開発

 近年の歩行者ナビゲーションシステムの多くは、デバイスの画面に情報を提示するシステムです.しかし,この仕様では、視線が画面に奪われるので、歩行時の安全に課題が生じます.そこで本研究では、デバイスの画面に頼らず複数の振動素子を用いて,振動知覚のみで目的地まで誘導する腕時計型ナビゲーションシステム「リスナッチ」を開発しました.

 このシステムを活用することで,例えば,「リスナッチ」をお互いが付けることで,迷子の子供を探したり,視覚障碍者のためのナビゲーションシステムの開発に繋がる可能性があります.

脳外科治療への応用を見据えた凍結治療機器の開発

 薬物治療が難しい「難治性てんかん」患者に対する1つの治療法として,てんかんの発生源(病巣,原性域)を切り取る脳外科手術(切除術)が有効とされています.一方で切除術では,例えば病巣が深部にある場合,術中に健常部位を傷付ける恐れがあります.

 そこで,より低侵襲に深部の脳領域を壊死させることが可能な凍結プローブ(探針)という機器を新たに開発し動物実験にて有効性を検証しました.「てんかん外科手術としての凍結治療」は未だ確立されていない治療法なのでハードルが高い研究ですが,他分野への応用も視野に入れながら研究を推進しています.

学術論文1 学術論文2

脳波(てんかん波)の解析

 大学などの講義で学ぶ時間周波数解析などの手法を駆使して,脳波(てんかん波)解析を行い,「てんかん」の予知や上記の「凍結治療」の術中評価の可能性を検証しています.

 左図は,より確実な「凍結治療」を実現するための1手法を示した概略図です.凍結プローブの有効性を検証するため,薬物にて「てんかん」を誘発したラットに対して凍結プローブを施した実験を実施したところ,凍結後に「てんかん」が再発(凍結失敗)する場合と消失(凍結成功)する場合がありました.てんかん外科治療としての凍結治療を確立するためには,凍結後に「てんかん」が再発しない施術法を確立する必要があります.

 そこで,凍結中の脳波を計測し,その周波数を解析しました.すると,「てんかん」が再発する場合と消失する場合では,凍結中脳波のδ波成分に顕著な違いが認められました.この結果は,凍結中に脳波を観測し,δ波成分の大きさに着目することで,より確実な「てんかん外科手術としての凍結治療」が実現できる可能性を示唆しています.

学術論文

設計性に優れたCPGの設計

 ヒトの歩行や鳥の飛翔など,一定のリズム運動には,脊椎に存在すると考えられている中枢パターン発生器(Central Pattern Generator: CPG)が関与していると考えられています.本研究では,従来モデルよりも設計性,制御性に優れたCOGモデル(数理モデル)を提案し,本研究を通して設計製作した脚式ロボットにその数理モデルを搭載し,その有効性を検証ました.

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