数百,数千の自律移動ロボット群をシンプルにかつ巧みに操る制御則とは一体なんでしょうか? 少数の牧羊犬が,多数のヒツジの群れを間接的に誘導する現象を牧羊犬のヒツジ追い現象(Shepherding)と呼びます.本研究ではこの現象に着想を得て,少数のコントローラエージェント(牧羊犬ロボット)が,自身の機動性を最大限活用して,大規模な群ロボット(ヒツジ群ロボット)を高スケーラビリティかつシンプルに目的地までナビゲーション可能な誘導制御システムについて研究しています.
生物の群れは,ロボットと相対した時,どのような反応を示すのでしょうか?生物を理解する際,自然界に生息する生物群に対して,人工物(ロボット)が行動介入を行うことで生物とロボットとの相互作用(Animal-Robot Interaction)の解明を行う新奇な研究に取り組んでいます.本研究では牧羊犬のヒツジ追い現象に着想を得て,実際の生物群の行動に外部から介入することで未知なる反応や適応性を引き出したり,我々の意のままに巧みに誘導を行う牧羊犬着想型ロボット “Shepherd- logbot”を開発しています.
災害現場や月面と言った屋外環境は,物理法則に従い時事刻々と予測不可能に変化する環境であり,我々はそれを無限定環境と呼びます.このような環境では,リアルタイムに正確な環境のモデルを構築することは原理的に不可能であり,即ち「ロボットが行ってみなければわからない」環境です.角田研究室では,無限定環境下ではロボットは立ち往生(スタック)してしまうことを許容して,むしろ犠牲になるロボットを最大限活用する群ロボットシステム(スワームロボットシステム)の制御アルゴリズムについて研究しています.
土砂災害現場や月面と言った軟弱地盤で建機やロボットが何かしらの作業するためには,泥地や砂地といった軟弱地盤上に安定して固定する必要があります.通常ならボルト・アンカーがよく用いられますが,柔らかい地盤に固定可能なアンカーは例がありません.本研究では,自然界の植物の根に着想を得て,土中で自動変形をすることで固定力を変化させる抜き差し可能な軽量小型アンカー“Root-Anchor”を開発しています.
土砂災害現場や月面等で活躍する従来のロボット・建機は非常に大きくて重たいため,輸送時間やコストが大幅にかかります.それに対して,ロボットが小型で軽量であれば現場に早急にかつ大量に輸送することができます.しかし,ロボットの身体が小さく軽すぎると達成できるタスクが限定されてしまうジレンマに陥ります.この問題に対して角田研究室では,輸送時は小型かつ軽量で,現場に到着したのち,現場にある環境物(土砂,レゴリス砂,水,木など)を体に取り込むことで成長し機能を発現するロボットを開発しています.このロボットを機に,ロボットにとって環境とは何か,改めて考えてみましょう.
自然界に生息するムカデやヤスデといった多足類の生物は,多数の脚・体節を有し,自然環境にうまく適応しながら移動することができます.そのような生物たちに着想を得て,身体の機構的な柔軟性と身体特性を活用してなるべくシンプルな脚間制御で複雑な環境になじみながら移動することができる超多脚ロボットを開発しています.
Innovative Robot for River Channel Blockage: 河道閉塞に対応する土工を革新するロボット建機 (ムーンショットプロジェクト PI 大阪工業大学 大須賀公一 教授との共同研究)
国内の代表的な土砂災害の一つとして,地滑りにより河川が堰き止められる河道閉塞があります.この災害では,堰き止め湖が決壊して土石流が発生するのを防ぐために,早急に河川の水や土砂を除去する必要があります.現状の対応では,バックホウなどの土木作業用の建機を使用していますが,大型かつ大重量であるため,現場に輸送するまでに大幅な時間を要し早急な対応ができないといった問題があります.それに対して本プロジェクトでは,2~3トンクラスの小型建機群ロボットシステムによる復旧作業の実現を目指しています.大須賀グループでは,今までの土工作業を革新する全く新しい河道閉塞特化型ロボット建機の開発を行っています.