Alexandros Konstantinou 氏 (IMI-BAS, Sofia)
日時:7月28日 (月) 午後2:45〜3:45 (通常と時間が異なります)
場所:Zoom 講演を数学棟201のスライドに映す予定です.Zoom リンクはメーリングリストで共有いたします.
タイトル:The order of the Tate--Shafarevich group modulo squares
アブストラクト:We present a method for decomposing abelian varieties up to isogeny using group actions. As an application, we show that given a square-free natural number n, there exists an abelian variety with Tate--Shafarevich group of order n times a square.
横溝 真紘 氏 (東北大学)
日時:7月7日 (月) 午後1:30~2:30
場所:数学棟201
タイトル:Single-valued multiple polylogarithms and multiple zeta values
アブストラクト:多重ゼータ値は、反復積分や多重対数関数の特殊値として現れ、数論・幾何・物理における基本的な周期の例を与える。これらの背景にある多重対数関数は、一般には多価関数であるため、その取り扱いには困難を極める。
本発表では、Francis Brown による2つの論文に基づき、多重対数関数の single-valued 化 と、それに対応する single-valued multiple zeta values の構成について解説する。まず、2004年の論文では、複素共役を用いた明示的な構成によって多重対数関数を単値関数に変換する方法が与えられる。次に、2014年の論文では、こうして得られる特殊値を motivic period の枠組みで捉え直し、single-valued multiple zeta values がshuffle代数として自由であり、de Rham型のmotivic Galois群の作用に安定であることを特徴づける構造定理が与えられる。本講演ではこれらを紹介する。
柳原 亮祐 氏 (東北大学)
日時:6月30日 (月) 午後1:30~2:30
場所:数学棟201
タイトル:捻じれFermat商曲線の数論幾何とFleck数について
アブストラクト:代数体上の非特異射影的代数曲線CのルートナンバーwとはCの完備L函数Λ(s,C)の函数等式に現れる符号w=\pm 1の事でParity conjecture(CのJacobi多様体のMordell-Weil rankの偶奇とwが対応する)に代表されるように数論的に意義深いデータを持っており重要な研究対象とされている。
Nを正の整数、\delta\neq 0を\ord_{\ell}(\delta)=0 or \ell\nmid\ord_{\ell}(\delta)を満たす\ell^N th power freeな整数とする。
この講演ではX^{\ell^N}+Y^{\ell^N}=\deltaの商曲線の場合にルートナンバーを計算することが出来たのでその結果について述べる。この結果はStoll (2002), Shu (2021)の拡張にあたる。
またその過程でHilbert記号の特殊値として組み合わせ論で長い歴史を持つFleck数が現れる事を見出したのでそれについても述べる。
久富 一輝 氏 (東北大学)
日時:6月23日 (月) 午後1:30~2:30
場所:数学棟201
タイトル:不確定特異点を持つD-加群とその特性サイクルについて
アブストラクト:複素多様体X上のホロノミックD-加群に対しては、特性サイクルと呼ばれる、ある錐的なLagrangianサイクルを余接束T*X上に対応させることができます。指数定理により、このサイクルは D-加群の正則解からなる層のEuler標数を計算することが知られています。この講演では、一般化されたRiemann-Hilbert対応を用いて、不確定特異点を持つD-加群の特性サイクルがどのように記述されるのかを議論します。
本発表の内容は、竹内潔氏(東北大学)との共同研究(arXiv:2503.10090)に基づきます。
大塚 瑛介 氏 (東北大学)
日時:6月16日 (月) 午後1:30~2:30
場所:数学棟201
タイトル:楕円曲線のLegendre族上の反復積分に対する比較同型定理
アブストラクト:
反復積分は、K.-T. Chen によって導入された多様体上の特別な多重積分であり、多様体のパス空間や基本群を調べる手段として用いられる。Chen 自身によって、多様体の基本群に関連する比較同型定理が反復積分を通じて与えられることが示されており、多重ゼータ値をはじめとする反復積分によって与えられる特殊値は、この視点からコホモロジー論的に理解されるようになった。本講演では、前半に Chen の理論を概説し、後半では講演者の現在の研究として、楕円曲線の Legendre 族上の反復積分を通じた比較同型定理の構成について紹介する。
志賀 明日香 氏 (東北大学)
日時:6月9日 (月) 午後1:30~2:30
場所:数学棟201
タイトル:BSD不変量を共有する同型でない楕円曲線の組の無限族について
アブストラクト:
アーベル多様体のBSD予想は$L$関数を$s=1$で展開したときの先頭項係数がBSD不変量( Mordell—Weil群, Regulator, 実周期, Tamagawa数, Tate—Shafarevich群)で書けると予想する. 2つのアーベル多様体のBSD不変量が全て一致することは強い制約であり, $\Bbb{Q}$上のアーベル多様体の同型類を復元しても不思議ではない. しかしJamie Bellは22次元の同型でないアーベル多様体の組であって(任意の代数体上で)周期を除くBSD不変量と$L$関数, Selmer群, Tate加群が一致する例を構成した. 本講演ではBellの例を紹介した後に, 同型でない楕円曲線の組であって, BSD不変量と小平記号が一致する例の無限族に関する講演者の結果について述べる.
石田 哲也 氏 (東北大学)
日時:6月2日 (月) 午後1:30~2:30
場所:数学棟201
タイトル:局所イプシロン予想とPerrin-Riou射について
アブストラクト:
(p進)局所イプシロン予想は加藤和也氏によって定式化された予想で、Qpのすべてのp進表現に対し、そのガロアコホモロジーから定義される一次元空間に、標準的な基底が整合的に存在することを主張する。一方で、Perrin-Riou射はBernadette Perrin-Riou氏によってクリスタリン表現に対し定義された写像で、その表現の適切な指標捻りから得られる表現の族を考えたとき、この族のBloch-加藤射たちを補完するという著しい性質を持つ。
本講演では、局所イプシロン予想の枠組みでPerrin-Riou射を再定式化し、その補完性質についてお話しする。これは従来の補完性質の精密化とみなせる。上述の二つの理論について、中村健太郎氏は既にRobba環上のドラームなファイガンマ加群に対する一般化を示しており、これらを組み合わせて証明を行う。
九州大学の中村健太郎氏との共同研究に基づく。
鶴田 有斗 氏 (東北大学)
日時:5月19日 (月) 午後1:30~2:30
場所:数学棟201
タイトル:有限代数的数の理論に関するサーベイ
アブストラクト:
本講演では、J. Rosenによる代数的数の有限類似についてのサーベイを行う。ここで、``有限類似''というのは、環$\mathcal{A}=\prod_{p}\mathbb{F}_{p}/\oplus_{p}\mathbb{F}_{p}$における代数的数の理論を指す。$\mathcal{A}$は整域でないなど、古典的な超越数論と舞台が大きく異なるが、Rosenは線形回帰数列ごとに適切な有限ガロア拡大$L/\mathbb{Q}$を考えることによって$\overline{\mathbb{Q}}$の類似物を構成した。後続研究には、Rosen--Takeyama--Tasaka--Yamamoto (2024)やHori--Kida (2024)、Anzawa--Funakura (2024)などがあるが、本講演では、Rosenの原論文と$\mathcal{A}$上超越的な数を初めて考察したAnzawa--Funakuraの研究について紹介する。
菅野 隼 氏 (東北大学)
日時:5月12日 (月) 午後1:30~2:30
場所:数学棟201
タイトル:Nils Matthes, "Decomposition of elliptic multiple zeta values and iterated Eisenstein integrals" の紹介
アブストラクト:
楕円多重ゼータ値は,Enriquezが2016年に導入した多重ゼータ値の楕円類似の一つであり,一点抜き複素楕円曲線上の反復積分として定義される.従来の多重ゼータ値の性質と類似する性質をいくつか備えており,それらのなす空間の構造を理解することが主要な課題の一つとなっている.本講演では,楕円多重ゼータ値が反復Eisenstein積分の空間(これは非可換自由代数と同型)に自然に埋め込めることを明らかにしたMatthesの論文「Decomposition of elliptic multiple zeta values and iterated Eisenstein integrals, RIMS講究録, No. 2015, 170-183 (2017)」を紹介する.