Seminars in 2021

Past seminars

2021年度


2021/01/05 (Wed) 15:00-16:00

Mayuko Yamashita(山下真由子)氏(京都大学,Kyoto university)

Title: On the absense of all heterotic global anomalies

Abstract: 本講演では, 立川裕二氏(IPMU, 物理)との共著 ([TY], https://arxiv.org/abs/2108.13542) の数学的側面について解説する. [TY]の主結果は, 「ヘテロティック弦理論にはアノマリー(量子異常)がない」という, 物理の主張である. しかしこの結果を示すために用いたのは数学の議論である. 「ヘテロティック弦理論にアノマリーがあるか?」という物理学的問いを, あるコホモロジー理論の変換TMF \to \Sigma^{-20} IOmega^{string}がゼロか?という数学的問いに言い換えた上で, 後者の問を数学的に証明した. ここで現れるコホモロジー理論, TMF (Topological Modular Forms)と, StringボルディズムのAnderson双対は, それぞれStoltz-Teichnerの予想とFreed-Hopkinsの予想を通じて, 場の理論の分類と深く関連している. 講演では, これらの背景を説明し, どのようにして物理の問題をコホモロジーの問題に言い換えたのか, そしてどのように証明したのかについて解説する. 


12/7(Tue) 15:00-16:00 (Notice that we have an irregular schedule)

Greg McShane 氏(Institut Fourier)

Title : Geometry of Sums of Squares


11/17 (Wed) 15:00-16:00

Shin-ichi Oguni尾國 新一)氏 (愛媛大学, Ehime University)

Title: 無限型のアルティン群の非シリンダー的双曲性について

Abstract: 

アルティン群は、ラベル付きグラフから定められる生成系と関係子によって与えられる群である。各生成元がインボリューションであるという関係子を追加することでアルティン群からコクセター群が得られる。アルティン群が無限型であるとは、この操作によって商として得られるコクセター群が無限群であるときを言う。無限型のアルティン群は、適当な意味で非正曲率性を持つことが期待されている。非正曲率性の代表的なものとして、CAT(0)性が有名であるが、本講演では、非正曲率性の一例である非シリンダー的双曲性について取り扱う。具体的には、無限型アルティン群に対して、「非シリンダー的双曲性を有することとアルティン群としての既約性は同値である」という予想の部分的解決について報告する。本講演は、現在進行中の加藤本子氏(愛媛大学)との共同研究に基づきます。


10/6 (Wed) 15:00-16:00

Inhyeok Choi氏(KAIST)


Title: Random walks on Gromov hyperbolic spaces and Teichmüller spaces (English + Japanese is ok for Q&A)


Abstract:

In this talk, I will discuss random walks on the isometry group of a Gromov hyperbolic space. There has been considerable efforts to compare these with the classical (Euclidean) random walks and establish analogous versions of laws of large numbers (LLN), central limit theorems (CLT) and laws of the iterated logarithm (LIL). At least two dynamical quantities can be investigated under this perspective, namely, the displacements of a point by isometries and the translation lengths of isometries. I will explain one approach to LLN, CLT and LIL for these quantities, which is a culmination of Gouëzel's and Baik-Choi-Kim's method. If time permits, I will explain some Teichmüller geometry that allows to bring these results to Teichmüller spaces.


題目:Gromov双曲空間及びTeichmüller空間上のランダムウォーク


要約:

本講義ではGromov双曲空間に等長写像として作用するランダムウォークを論ずる。このようなランダムウォークを古典的なEuclideanランダムウォークに比べ、大数の法則(LLN)、中心極限定理(CLT)、重複対数の法則(LIL)に対応する結果を得ようとする努力が続いてきた。この観点で調べられる動力学的な量を二つ並べば、等長写像によってある点が移られる距離(displacement)と、等長写像の移動長さ(translation length)などがある。この二つの量に関してLLN、CLT及びLILを導き出す方法について説明する。これは最近Gouëzel及びBaik-Choi-Kimが開発した技法を融和したことである。あと時間が許す限り、Teichmüller幾何を活用してこれら結果をTeichmüller空間にて論ずる方法を説明する。


7/21 (Wed) 15:00-16:00

Takefumi Nosaka野坂武史)氏 (東工大, ToKoDai)

Title: メタ冪零的むすび目不変量と、自由冪零群の自己同型群

Abstract: ファイバー結び目やhomology cylinderというクラスは興味深い幾何・代数的な議論が幾つか展開されてきた。逆に本研究では、ホモロジー3-球面内の任意の結び目をそれらのクラスの様に扱えるように、結び目群のメタ冪零的$p$-局所化を考察する。そのモノドロミーは自由冪零群のシンプレクティック自己同型群の元と見れ、特にその外部自己同型群の共役類からの写像は結び目の不変量を与える。本講演ではそのモノドロミーの構成と、ジョンソン準同型の研究を用いその自己同型群を調べ得られた不変量を幾つか紹介する。

6/16(Wed)15:00-16:00

Yasuhiko Asao浅尾泰彦)氏 (福岡大学,  Fukuoka University)


Title:グラフのGirthとマグニチュードホモロジーについて


Abstract:00年代にLeinsterは圏のnerveのEuler標数の類似として、距離空間のマグニチュードという概念を定式化した。その後Hepworth-Willerton, Leinster-Shulmanによって、マグニチュードの圏化としてマグニチュードホモロジーが定式化された。本講演ではグラフのマグニチュードホモロジーが、ある程度そのGirthによって決定されることを説明する。系として例えば、マグニチュードホモロジーが対角的であればグラフは木であるか、もしくはGirthが4以下であることがわかる。ここでグラフのGirthとは最小閉路の長さのことを指す。証明には代数的モース理論を用いる。本研究は平岡裕章氏、金澤秀氏(京都大学)との共同研究を含む。


5/28(Fri)15:00-16:00

Erika Kuno久野恵理香)氏 (大阪大学, Osaka University)

Title: 向き付け不可能曲面の写像類群から向き付け可能曲面の写像類群への擬等長埋め込みについて

Abstract: 群を擬等長同型により分類することは幾何学的群論における主要な問題意識である.向き付け不可能曲面 N の写像類群 Mod(N)は,その二重被覆である向き付け可能曲面 S の写像類群 Mod(S) の部分群になることが知られている.この単射準同型Mod(N)-->Mod(S)が,写像類群の準双曲性(semihyperbolicity)を用いることで,擬等長埋め込みであることがわかったので,本講演で説明する.本研究は学習院大学の片山拓弥氏との共同研究である.


4/14 (Wed) 15:00-16:00

Keita Nakagane中兼啓太 )氏 (東工大, ToKoDai)

Title: Khovanov--Rozansky HOMFLY homology and general diagrams

Abstract: KhovanovとRozanskyは、三次元球面内の結び目の不変量であるHOMFLY多項式を圏化し、HOMFLYホモロジーを定義した。しかしながら、任意の結び目図式から計算できるHOMFLY多項式に対し、HOMFLYホモロジーの計算は結び目のブレイド表示を要求する等、これらの不変量の間の幾何学的関係はよく知られていない。本講演ではRasmussenによるHOMFLYホモロジーの定義を概観したのち、その定義を任意の結び目図式へ適用しても不変量にならないことを再確認する。その手段として、任意の結び目図式から得られるホモロジーのq次数が最も低い部分のオイラー標数を計算すると、図式のザイフェルトグラフのTutte多項式(の変形)が得られることを示す。