驚きの目撃情報、三戸郡めんつゆ事件簿
「エーッ!!!」
「ふがふが。」
「そうなんですか?!大変じゃないですか!!」
「そうなんよー。ふがふが。」
老婆は自分の手の中の入れ歯を磨きながら話す。
「じゃあ、綿露町(めんつゆちょう)が危ない!!!」
「そうなんよー。ふがッ。」
「うわァッ!!!苦しい!!」
老婆は苦しみだした。自分のつばで誤嚥したようだ。
「じゃあ、ババア!!ありがとう。情報!!!」
「おい、待て、助けろ!!!死ぬ・・・!!」
波禍紋(バカモン)は無情にも、その歩みを止めない。
波禍紋には父の教えが刻み込まれていた。
記者とは、時間を有効活用するものだという教え。
男は、それを拡大解釈し、誰かを助けることを、やめた。
―――――老婆は気絶したが、後日無事息を引き取った。
老婆の孫が復讐を誓い、アラブの石油王を日本の首相にしてSDGsを破壊するのは、また別のお話。
「目撃情報無いかなぁ。」
波禍紋の目線の先に、老爺が写った。
「ねぇ!!ちょっとそこのジジイ!!」
「エェ?怖い人ぉ?」
「綿露町が危ないんですけど。」
波禍紋は説明無しに老爺に問う。
「アアァ・・・そうなのぉ?ふがふが。」
老爺は入れ歯が外れかけている。
「ジジイ。お前は立場わかって言ってんのか?綿露町についてなにか知らない?ぶちころすぞ。」
「エエェ・・・怖い・・・」
「綿露町のなにか知ってる?ねぇ。」
「綿露町でェ、汚職警官がクマを使役しててェ、その警官が地下の研究所でェ、総理大臣を1秒に3人増やしてるんだよねェ。」
「はァッ?!」
「・・・何いってんの爺さん。フザケてんのォ?」
「いやーそれが本当なんですなァこれがw」
「いや急によく喋るな。」
―――――波禍紋は三戸郡綿露町に向かった。
「ここが綿露町かァ。」
「クマがァ!!!助けてェそこの人ォ!!!」
「なんだァ・・・?なんかこっちくるなァ・・・」
最初は人間がなにかに追われていることしか分からなかったが、近づいてくるにつれてその異変に気づいた。
「うーん、この坂の上の方に警官がいるなァ・・・」
「あれ汚職警官じゃね?」
「おいおい、あれクマじゃね?」
「クマァ!!!」
クマがクマァと、人間を追い立てている。
「しかし、クマ一匹ぐらいなら大丈夫だろ。」
ドドドドドドドド。
広い一本道の脇の道から、何十体かわからないほどのクマが整列して走ってきた。
二足歩行で、何匹かは機械部分が露出している。
「えーー???」
波禍紋は逃げ出した!
―――――
「確かに汚職警官がクマを使役しているなァ・・・」
「よし!」
男は右手に巻いていた包帯をシュルシュルと外していく。
右手には、砲台のようなものが現れた。
「エネルギー充填!!!固定ロック解除!!!」
ドゥゥゥゥ・・・。
周囲は明るくなり、高温になる。
少しずつ草花は溶けている。
「最大出力!!!目標、三戸郡綿露町!!!!」
ウィンウィンウィンウィィィィィ・・・。
「発射ァ!!!!」
ボッ!!!!
光る超高温の物体が発射された。
シュゥゥゥゥゥゥゥ!!!!
球体は三戸町めがけて飛んでいく。
・・・・・・
ドガァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!!!!!!!!
・・・・・・
―――――その日をさかいに、三戸町綿露町は、地図上から姿を消した。
2023年9月29日、初版発行
South出版
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